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Avvy新聞 その2

ブブッ。


携帯が震える。


アムネがすぐ横から覗き込む。


「え、追加来てる!」


画面。


『軽音部の記事も少し考えてるんですけど』


その下。


『転校してきたばかりですよね』


『三年のこの時期に来る人、珍しいので気になってました』


(……)


視線が止まる。


「うわ、めっちゃ取材っぽい」


アムネが面白がる。


「というか普通に情報早いね」


スイも画面を見る。


さらに少し下。


『前の学校では何してたんですか?』


『部活とか、好きなこととかあれば聞きたいです』


『もちろん答えられる範囲で大丈夫です』


文章は柔らかい。


でも。


聞いてることは、かなり踏み込んでいる。


(……探ってる)


軽音部だけじゃない。


こっちを見てる。


「え、どうする?」


アムネが聞く。


「無視してもいいと思うよ」


スイは落ち着いている。


「120って無理に聞いてくるタイプじゃないし」


「でも気になる〜!」


アムネは完全に興味側だった。


「文系の人経由で聞いてるのかな」


「かもね、あの人めちゃくちゃ顔広いらしいし」


周りではまだ新聞の話題が続いている。


軽音部。

ボカロ。

カルタ部優勝。


いろんな声が飛び交う中。


スマホの画面だけが妙に静かだった。


(どう返す)


三年の五月。


普通じゃないのは、自分でもわかっている。


転校の理由。

前の学校。


思い返したくないものまで、一緒に浮く。


「120ってさ」


アムネが新聞を見ながら言う。


「結構“人”見るよね」


「話題だけじゃなくて?」


スイが返す。


「そうそう、なんかこう、“何してる人か”みたいなの書くじゃん」


確かに。


今週のゆるりの記事も。


ただ歌が上手い、では終わっていない。


“どういう人か”まで書いてある。


だから読まれる。


「まあでも、悪い感じの記事あんま見ないけどね」


スイが言う。


「そこは120のラインあるんじゃない?」


「へー……」


アムネが感心したように頷く。


そのとき。


廊下の向こう。


「あ」


誰かが小さく声を上げる。


視線が流れる。


人混みの少し外。


壁にもたれながらスマホを触っている生徒。


制服は着崩してない。

目立つ感じでもない。


でも。


周りの何人かが、ちらっと視線を向けている。


「……文系」


誰かが小さく言う。


その名前だけが、少し浮く。


本人は顔を上げない。


スマホを打ちながら、掲示板の方を一瞬だけ見る。


それだけで。


また周りが少しざわつく。


(あれが)


120じゃない。


でも、120に近い人。


そんな空気だった。


視線を戻す。


スマホの画面。


少しだけ迷ってから、文字を打つ。


『一年の頃は部活してました』


少し止まる。


『でも途中で辞めて、そこからは帰宅部でした』


送信。


既読がつく。


少し間を置いて、続きを打つ。


『最近は、新しいことに興味がいくことが多いです』


『音楽聴いたり、ネット小説読んだりもします』


送ってから、画面を閉じる。


「返したんだ」


アムネが横から言う。


「ちゃんとしてるじゃん」


「別に普通」


短く返す。


「でも軽音のあとに音楽趣味って送ると、絶対向こう食いつくよ」


スイが少しだけ笑う。


「確かに」


アムネも頷く。


その間にも、掲示板の前では人が入れ替わっていく。


笑い声。

シャッター音。

誰かが記事を読み上げる声。


金曜の朝独特の空気。


その少し離れた場所。


文系は壁にもたれたまま、スマホを耳に当てていた。


騒がしい場所なのに、不思議と周りへ溶け込んでいる。


「……うん」


短く返す。


相手の声は聞こえない。


でも会話は続いている。


「軽音だけでも記事にはなると思う」


視線が、一瞬だけ掲示板へ向く。


そのまま。


少し離れたこちら側へ。


「でも、転校生の方が動かしやすいかも」


表情は変わらない。


「三年の五月に転校って、普通に珍しいし」


廊下を人が横切る。


笑いながら通り過ぎる生徒たち。


その流れを避けるように、少しだけ場所をずらす。


「偶然かもしれないけどさ」


小さく続ける。


「カルタ部にもいたし、昨日は軽音にもいた」


少し間。


「新聞で取り上げた場所、どっちにもいるんだよね」


向こうが何か返す。


文系は小さく笑った。


「……うん、わかってる」


「まだ決めつける気はない」


スマホを持ち替える。


「でも、ちょっと気になる」


その一言だけ。


静かに落ちた。

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