表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/23

教師陣 飲み会②

グラスが当たって、軽い音が弾ける。


「とりあえず今年もよろしくってことでいい?」


あすかが笑いながらジョッキを持ち上げる。


ゆうきが頷き、ビールの泡が縁で揺れて少しこぼれる。


「かたいって、もっと適当でいいだろ」


ぽぽが枝豆をつまみながら言う。


「適当って言い方やめなよ」


さわらがグラスを持ち上げる。



「お待たせしましたー!」


店員の声と同時に皿が置かれ、揚げ物の湯気がふわっと広がる。


あすかがすぐに手を伸ばす。


「ねえ、こういう場だしさ、たまには恋バナとかしない?」


「急だな、それ」


ぽぽが一口飲む。


「いいじゃん、教師だって人間なんだからさ」


あすかが笑う。


ゆうきが少し迷って、グラスを指でなぞる。


「そういう話、あんまりしたことないかもです」


「じゃあ今しよ、はい順番どうする?」


食い気味に来る。


さわらが唐揚げを割る。


「別に話すことないけど」


「その言い方はある人のやつなんだよ」


あすかが即返す。


ぽぽが短く言う。


「ないやつはそもそも反応しない」



氷がカランと鳴る。


ゆうきが少し笑って、グラスを持ち上げる。


「いやでもさ、距離感って結構むずいよね普通に」


「急に真面目だな」


あすかが笑う。


「近づきすぎると重いし、引きすぎると何も始まらないしさ」


少しだけ言葉が崩れる。


「そのちょうどいい位置探してる間に終わるやつ、あれ嫌いなんだよね」


(もう入ってるな)



串が追加で置かれて、皿が少し鳴る。


ぽぽが箸を持つ。


「踏み込む時に踏み込めないと、そのまま終わる」


「うわ出た、ぽぽの正論」


あすかが笑う。


さわらがグラスを回す。


「でもリズムはあるよね、ずっと同じ距離じゃ動かない」


ゆうきが頷いて、そのまま言う。


「それな、様子見しすぎて何も起きないまま終わるの一番もったいない」


「経験者?」


あすかがニヤつく。


「いやそういうのじゃないって、なんとなくだよ」


完全にタメ口になる。



皿の油が光る。


ぽぽが枝豆を口に放り込む。


「で、その流れで転校生だな」


(来た)


あすかがすぐに乗る。


「アビィさ、あの子ちょっと気になるタイプじゃない?」


さわらが焼き鳥に手を伸ばす。


「静かだけど、ちゃんと周りの動き拾ってる感じはあるね」


ゆうきがグラスを傾けながら言う。


「てかさ、ああいう子って最初から距離の取り方うまくない?」


「自分から行かないけど、外さない位置にずっといる感じ」


ぽぽが短く言う。


「外さないやつは、外した経験がある」


(それだな)



唐揚げに箸が刺さる。


あすかが笑う。


「でもさ、あれって普通にやろうとして出来るもんじゃないよね」


さわらが軽く頷く。


「慣れてる動きだね、踏み込まれると止まるのも含めて」


ゆうきが少しだけ視線を落とす。


「近づき方より、引き方を先に覚えてる感じする」


ぽぽがグラスを置く。


「防御が先に出るやつだ」



氷が揺れて、カランと鳴る。


あすかが笑う。


「まあでもアムネいるし、あそこ勝手に動くでしょ」


ゆうきが頷く。


「いやあの子ほんと速いよね、距離詰めるの」


さわらが串を持つ。


「速いというか勢いで行くタイプだから、たまに行き過ぎるけどね」


あすかがポテトをつまむ。


「でもスイがちゃんと見てるから、崩れきらないのがいいんだよ」


ぽぽが短く言う。


「押すやつと引くやつが揃ってるなら崩れない」


(いい配置)



グラスがまた当たる。


さわらがゆっくり持ち上げる。


「今年の3年、思ったよりちゃんと動きそうだね」


あすかがすぐ笑う。


「でしょ?もうこれ絶対なんか起きる流れじゃん」


ゆうきが頷く。


「ここまで揃ってたら、何も起きない方が変だって」


ぽぽが言う。


「もう動いてる、表に出てないだけだ」


(……そうだね)



ぽぽがふと箸を止める。


「押すやつがいるなら、逃げ場も用意しとけ」


一瞬、音が遠のく。


「前に出され続けるやつは、そのうち折れる」



さわらがグラスに目を落とす。


氷が静かに揺れる。


「それならもう、うちのクラスにはちゃんとあるよ」


少しだけ間。


「無理に前に出なくても、そのままでいられる場所がある」



あすかが笑って空気を戻す。


「でさ、結局誰が恋する流れなのそれ」


ゆうきが笑う。


「いやもう全員ありそうじゃない?あの感じ」


ぽぽが少しだけ間を置く。


「時にはリズムも大事だぞ」



笑い声が重なる。


グラスがまた当たる。


ざわめきの中で。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ