放課後(怪獣)
放課後。
アムネに連れられて来たのは、駅までの道の途中にある小さなバイク屋だった。
シャッターは半分だけ開いていて、中から工具の音が響いている。
「まだやってるな」
アムネがそう言って、軽く店内を覗く。
「おーい」
声をかけた瞬間——
「来てくれたんかー!」
奥から明るい声。
少しして、つなぎ姿の男が顔を出す。
手を軽く上げて、そのまま近づいてくる。
「アム、久しぶり」
「昨日も会っただろ」
「そうやったっけ」
軽く笑う。
「今日は人多いな」
視線が後ろに向く。
「紹介」
アムネが言う。
「転校生」
アビィを軽く指す。
「アビィ」
「へえ」
少し目を細める。
「どうも、怪獣やで」
「……よろしく」
短く返す。
「スイは知ってるよな」
アムネが言う。
「あー、知ってる知ってる」
怪獣が頷く。
「この前のやつやろ?」
「そうそう」
スイが軽く手を振る。
「どうもー」
「久しぶりやな」
自然な再会。
「他は初めまして?」
「せやね」
くまちゃんが軽く頭を下げる。
「熊野です」
「グレイだ」
「よろしくな」
怪獣が笑う。
壁にもたれかかる。
「アムが人連れてくるのは珍しくないけど」
ちらっと見る。
「今回はなんか雰囲気ちゃうな」
「何が」
アムネが返す。
「なんとなくやけど」
それ以上は言わない。
でも——見てる。
「ちょい待ってな」
奥に戻る。
「もう終わるわ」
工具の音が止まる。
少しして戻ってくる。
手を拭きながら。
「お待たせ」
自然と輪に入る。
「で、今日は紹介だけなん?」
「そんなもん」
アムネが答える。
「そっか」
軽く笑う。
「ええやん」
「何が」
「増えてる感じ」
さらっと言う。
アムネが少しだけ視線を逸らす。
「……別に」
でも少しだけ嬉しそう。
(……いいな)
アビィは思う。
「帰るか」
アムネが言う。
「帰るわ」
怪獣が頷く。
「送ってこか」
さらっと言う。
一瞬の間。
「……いや、大丈夫」
アムネが軽く首を振る。
「みんないるし」
気を遣ってるのが分かる。
その横で——
「行きなよ」
スイがすぐに言う。
アムネがちらっと見る。
「え?」
「せっかくじゃん」
軽く笑う。
「久しぶりなんでしょ」
「いや、別に久しぶりでは」
「いいから」
少しだけ強め。
でも優しい。
くまちゃんも頷く。
「ウチら大丈夫ですし」
「気にせんといてください」
グレイも静かに言う。
「我らは問題ない」
逃げ道がなくなる。
アムネが少しだけ困った顔をして——
「……じゃあ」
観念したみたいに息を吐く。
「乗る」
怪獣が軽く笑う。
「素直やな」
「うるさい」
でも、どこか嬉しそう。
外に出る。
夕方の空気。
怪獣がバイクに鍵を差す。
エンジンがかかる。
「ほら」
ヘルメットを渡す。
「ありがと」
受け取る。
自然な動き。
「じゃあな」
アムネが振り返る。
「また明日」
「またねー」
「お気をつけて」
「ではな」
それぞれ手を振る。
アムネが後ろに乗る。
軽く体を預ける。
(……やっぱり)
アビィは思う。
あの距離。
あの空気。
少しだけ。
羨ましい。
「ほな、行くで」
バイクが走り出す。
エンジン音が遠ざかる。
静かになる。
「帰ろっか」
スイが言う。
「せやね」
くまちゃんが頷く。
歩き出す。
(……明日も)
少しだけ。
楽しみになっている。




