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ゲーム世界へ転生したモブ♂、死ぬ未来を回避するために美少女(偽)になる  作者: ゼクスユイ


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第96話 ウィニングショット

『艦内のコントロールを手中に収めた。艦内の監視映像を追って、堕天使の居場所を突き止める』


『相手もここを取り戻そうとするはずだから、全員で行くのは無理ね。引き続き、天使組と虎西組、あと前衛の疲労も考えて森野にも残ってもらいましょう』


「なぜ、こうもあっさりと破られる!」


 エクステラたちがこちらに向かおうとしているのを配信を通して知った堕天使は持っていたスマホを壁にたたきつける。逃げようにも、隠れ蓑にしていた未発見()()()ダンジョンは人間たちが攻略し始めている。彼女らの攻略スピードを考えれば、そう遠くない内に鉢合わせるだろう。もはや彼女に安寧の地はなく、乾坤一擲の攻勢はエクステラたちに悉く打ち破られている。


「奴らが苦戦していたモンスターを蘇らせた!勝てるはずなんだ!あのティアマトも居たんだぞ!負けるはずが無いんだ!」


 おかしいだろと子供のように喚くも、現実は変わらない。唆した諸外国も今は静観しており、助けに来てくれる味方はいない。こうなったらと目の前にあるコンソールを操作しようとしたとき、叩きつけた衝撃で画面が割れたスマホから音声のみが流れる。


『見つけたぞ。動力室にいる』


『なんでそんなところに』


『分厚い隔壁で守られているから、この艦内の中で一番安全よ。それに――』


『それに?』


『私が堕天使なら、負けた腹いせに自爆くらいするでしょうね』


 エクステラの言葉に堕天使の動きがピタリと止まる。今、彼女がやろうとしたことがまさにそれだったからだ。


『もし、この船の動力炉を暴走させれば、半径数十kmは消失。発生する高波の影響も踏まえれば周囲の沿岸地域は壊滅的な被害を受ける』


『でも、そんなことしたら堕天使も――』


『どこにでもワープできるのよ。遠隔自爆させるかカウントダウンさせて自爆させれば良いだけの話。だから、こちらのやることは一つ。セラフィム、このメインコンピューターから遠隔操作できないように妨害。今まで向こうがやってきたことを、今度はこちらからやるのよ』


『ああ、分かった。だが、妨害するとはいえ、死なばもろともの覚悟で直接操作されたら防げるかは分からんぞ』


『だから私たちが行くのよ。戦闘中に操作なんてできないでしょう』


 外からは降ろしていたはずの隔壁が解除される音が聞こえる。戦力の大半を王宮に向かわせたせいで、付近に残っているわずかなメタルザウルスや天使たちを動力室前に集合させたとしても、もはや大した足止めにはならない。そして自爆シークエンスを組み込もうとしても、門外の自分ではエクステラたちの到着には間に合わせることができない。


「エクステラ……またしても…………!」





 堕天使が呪詛のような言葉を吐いているころ、エクステラたちは彼女が待つ動力室前に来ていた。堕天使との戦闘中にメタルザウルスたちが後ろから襲ってこないようにアスカ、カナ、リカ、リョウ、ゴンゾーの5人には入り口を守ってもらうことにした。


「アスカ、後は頼んだわ」


「任せておいて。蟻んこ1匹、通させないわよ」


「カケル、俺たちの分まで頑張れよ」


「サキちゃんも頑張って!」


「応援してるしー!」


「このゴンゾー様がいるんだ。大船に乗った気で行ってこい!」


 居残り組から檄を貰ったエクステラたちが中に入ってみると、怒りの形相を隠そうともしない堕天使がこちらを睨みつけていた。


「あら、熱烈な歓迎してくれた割にはずいぶんと酷い顔をしているじゃない」


「エクステラ……!」


「私はどこぞの妖怪漫画みたいに逃げるラスボスってのは嫌いなのよ。だから、ここで倒してあげる」


「それはこっちの台詞だ!」


 堕天使が放つソードビットがエクステラたちに迫っていく中、タツヤが左手を伸ばす。


「その手は通用しない。【磁力(マグネットフォース)】!」


 北のサブコントロールルームで出てきた智天使級を無力化した異能を発動する。金属製の剣であれば、磁力の影響を受け、かつてエクステラがやったように壁や床に貼り付けることができる。だが、堕天使のソードビットは磁力の影響をものともせずに、こちらに向かってくる。


「私の剣は全てミスリル合金製!生半可な異能など通用しない!」


「さすがに対策されているか」


「情けないですわね。私の炎で――」


「溶かせないだろ」


「溶かすだけが能ではありませんわ!そこの美しい方、力を借りますわよ!」


「OK。僕の力、存分に使い給え!」


 ナルシーの茨が飛び回る剣に向かっていく中、カレンの緑の炎が茨に浸透していき、赤く染まっていく。赤い茨を断ち切ろうとしたソードビットが突き刺さるも、貫通することができずにいた。


「生命力強化の炎で強化した茨、やすやすと破れるものではありませんわ」


「そういうことでしたら、先輩方の力、お借りします!ニードルミサイル!」


 今度はサキがナルシーの茨に触れ、茨のトゲを飛ばして別の方角から飛来してくるソードビットを迎撃する。ソードビットがトゲを切り払っていくも、次第に刃こぼれが生じていく。そのわずかな刃こぼれを暗野のスナイパーライフルが狙い撃ちし、破壊していく。


「刃が無ければ、弾を切ることもできないだろう。剣の対処は我らに任せてもらおうか」


「お願いするわ。カケル、タツヤ!私たちで堕天使本体を!」


「分かった」「承知した」


 エクステラが銃弾を放つも、堕天使がソードビットの一部を防御に回して弾いていく。彼女を無敵たらしめている剣の結界を見たタツヤは自身の剣を赤く染め上げる。


「そんな子供だましなど!」


「結界破りの剣ならば!」


 タツヤの赤い剣が防御態勢を取ったソードビットに触れた瞬間、パリンパリンと割れていく。【崩御】は防御態勢を打ち崩す概念系能力。いかにミスリルが強固であったとしても、通用しない。剣の結界が破られたことで動揺している堕天使にカケルが一太刀を浴びさせる。


「っ、浅い!」


「下等生物ごときが……舐めるな!」


 異空間から剣を取り出した堕天使が機能しない結界を捨てて、カケルたちと切り結んでいく。隙を伺いながらエクステラが援護攻撃するも、急所になりそうな個所は二人を盾にし、当たっても持ち前の回復能力で致命打にはならない。


「3vs1でも攻めきれないとは!」


 拮抗状態が堕天使の頭を冷やさせたのか、背中にあるある翼が羽ばたき始め、地上戦を避けて上空へと逃げようとするのを見たエクステラはみみみに合図を送る。


「みみみ!」


「任された!」


 エクステラの号令を聞いたカケルとタツヤが跳び退くと同時に、茨の影に隠れて堕天使の上空に移動させていた爆弾を起動させると、ぬいぐるみの中に入っていたビーズがシャワーのように堕天使に降り注ぐ。剣の結界を再度展開しようにも、不意を突かれたことにより、間に合わない。爆風で加速したビーズが堕天使の羽や肉をえぐり取っていく。


「ぐええ……なじぇえ、こうも……」


「私たちは貴方のように一人で戦っているんじゃない。たとえ一人一人の力が届かなくても、合わさればどんな敵でも乗り越えることができる。かつてティアマトと戦った貴方なら分かるでしょう」


 羽を失い飛べなくなり、ズタズタになった腕で剣を振るうも、力がうまく入らず、容易に切り払われ、それどころか覚醒状態のカケルに片腕を斬り落とされてしまう。


「だが、人は容易に裏切る下等生物だ!力を合わせるなど下らぬ幻想だ」


 サキのニードルミサイルでボロボロになったソードビットでも足止めくらいはできるだろうと、二人との間の前に割り込ませる。ソードビットに対処している間に、ワープホールを作り出して逃げる手筈を整えていく。


「だから、私はお前たちを滅ぼす!いつか必ず!その日を――」


「逃がさないよ、【加速】」


 ここが決め時だと考えたカケルが自身の異能を発動させる。時間が止まったかのような世界でソードビットを無視し、切り傷を負いながらも一直線に駆けだしていくカケル。手足、背中の羽と順に斬り落とし、最後に首を斬り落とすと世界が動き出す。一瞬にして滅多切りにされた堕天使だったが、胸元から1本の黒い短剣が飛び出して、出来ていた手のひらサイズの小さなワープホールに入っていく。


「くっ、あんなに斬ったのに逃げられた!」


「大丈夫よ。ウイニングショットは放ったもの」


「えっ?」


 カケルがどういうことだろうと振り返ると、エクステラの愛用している銃から紫煙がゆっくりと立ち昇っていた。




 堕天使が逃げた先は隠れ蓑にしていたダンジョン。人間の肉体も捨て、短剣姿となった彼女は間違いなく、このダンジョンで最弱の存在。だが、手近にいるメタルザウルスはミスリル合金製。今の自分では寄生することは困難だ。一刻でも早く別の生き物を【同化】しなければと思った矢先、誰かの話し声が聞こえる。


「なんや、変なもん飛び出とったし、結局逃げられとるやんけ」


「しかし、リーダー。復帰してそうそう未発見ダンジョンの探索、しかもメタルザウルスがいるダンジョン内で配信をみるのはどうかと……」


「今は休憩中やからセーフや。それに気になって注意が散漫した方が危ないやろ」


「今回はレッドの意見に賛成!」


「すでに何度も戦っていた相手に後れを取る冥土隊ではありませんわ」


 どうやら、このダンジョンを攻略しに来た人間たちのようだ。しかも、警戒心が薄い。これ幸いだと思った堕天使が隙を見て人間を襲おうと考えていたとき、黒い弾丸が直撃し、短剣にビシビシとひびが入っていく。


「な、ぜ…………」


 ワープホールは剣1本が入れる程度の大きさしかない。しかも、つい最近発見されたとはいえ、自分がここにいることは誰にも知られていない。いかにエクステラと言えども、知らない場所にはワープはできないはず。なぜ、追撃できたのかと薄れゆく意識の中、堕天使の問いに答える者は誰もいない。だが、もしこの場に信二たちがいたらこう答えただろう。


『お前の逃走手段であるワープホールを作り出せるようになってから、Eランクダンジョン内で色々と調べさせてもらった。その結果、ワープホールは物が通過中は消えない、消すことができないことが分かった』


『でないと、胴体真っ二つなんてなりますからね~』


『そこで、お前の身体とこちらにある弾丸を【接続】することで通過中の状態を作り出すことにした。【接続】中は相手の身体の一部として認識されるのは亀北で実証済みだからな』


『時間停止の世界に入れたアレですね』


『ああ、物理的につながってなくても問題無いのは智天使級戦のときに証明した。となれば、あとは単純だ。【接続】を辿り、必中の弾丸を浴びさせる。それが俺たちのウイニングショットだ!』



 物音がしたことで日本橋冥土隊が堕天使だったものに近づいていく。そこにあるのは、刃が真っ二つに折れた短剣が転がっているだけであった。


「なんやアレ? 壊れた短剣? 先客でもおったんか?」


「いえ、ここには私たち以外、誰も居ないはず。気を付けてください」


「モンスターが擬態している可能性もあるからな。貴重なアイテムかもしれへんけど、一旦、ウチの炎で燃やしておくで」


 レッドが壊れた短剣を火葬しても、何の変化も起こらず、ただのアイテムだったのかと思いながら、探索を続ける。まさか、堕天使の亡骸だったとは誰も気づかないのであった。

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