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ゲーム世界へ転生したモブ♂、死ぬ未来を回避するために美少女(偽)になる  作者: ゼクスユイ


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エピローグ

 日本近海で起こった堕天使による襲撃事件は国防軍、自衛隊並びに有志による連合軍によって解決され、その後、日本政府と天使軍の間で和平条約が締結。まだ天使たちの移民政策、天使たちによる被害者遺族への補償をどうしていくのかといった課題は残るものの、100年前から続く一連の騒動にはひとまずの決着がついたと言えよう。

 

 それから数日後の12月24日。堕天使との最終決戦があったことなどわすれたかのように、今や世間の話題はクリスマスの話題でいっぱいだ。街中からジングルベルが流れる中、アスカと信二の二人は今夜のクリスマスパーティー用の食材を買っていた。


「だいたいこんな感じかしら」


「ケーキやチキンはまだわかるが、ジュースにお菓子……少しジャンク過ぎやしないか?」


「じゃあ何が良いわけ?」


「何が良いと言われたら困るが……鍋とか?」


「却下。クリスマス感無いじゃない」


(それはそうだが、スナックにクリスマス感はあるのだろうか?)


 買っているスナック菓子はクリスマス仕様らしくサンタさんの絵柄が書かれており、中身はともかくクリスマス感はある。それにクリスマスに七面鳥ではなく、チキンを食べるようになったのも、某白いおじさんのマーケティングが結びついたもの。案外、外側さえ取り繕っていれば、中身はどうでも良いのかもしれない。


「それにしても、鮭売り切れていたわね」


「なんでだろうな(棒読み)」


「どうみてもアンタのせいでしょ。配信でクリスマスにはシャケとか言ったせいで、インフルエンサーがネタ目的で買うようになったみたいよ。ほら」


『今日はクリスマスにぴったりな彩り鮮やかシャケのカルパッチョを作りたいと思います。クリスマスにはシャケと先日、どこぞの配信者が言っていましたからね。用意するのは――』


【どこぞの配信者www】

【エクステラは配信者でええんかwww】

【チャンネル的にはみみみが本体やでwww】

【エクステラ不在時はポニ子がメインを張ります】

【ゲストに乗っ取られた配信者www】

【おいおい、カメラマンのことを配信者って言うなよ】

【カメラマン扱いwww】

【配信者ですらねえwww】


 天使との和平の立役者となったエクステラの『クリスマスにはシャケ』発言が切り取られ、インフルエンサーによって広められたようだ。ただ、チキンのような油っぽい食べ物をあまり食べられなくなった中高年にとって鮭の方が食べやすいらしく、売れ行きが上がっている。


「いっそのことサモ……いや、鮭のコスプレでもしてサケステラに1日限りで改名するか?」


【美少女っぽさが無いから却下です!】


「冗談だ」


 購入した商品を詰めたレジ袋を持ち、スーパーから出ていく信二たち。向かう先は住宅街ということもあって、人通りは次第に減っていく。


「結局、アメリカや中国が日本に攻めてくる~とか言っていた割には何もなかったわね」


「それはそうだろ。この数か月、ポニ子の配信を通じて天使は意思疎通できる種族、未知なる異星の品々を持ち、交流関係もあることをアピールしてきた」


「岩塩饅頭はしばらく根に持つわよ……」


「あれはウケとしては悪くなかったとは思うぞ」


「私は芸人じゃないの!探索者!」


「で、だ。この一連の配信を通じてセラフィムたちは『侵略者』ではなく、交渉できる相手、すなわち未知なる販路と商品を持つ『商人』に近い立場を得ようとした。しかも、その市場は日本もまだ手を付けていないブルーオーシャン。その一方で、堕天使はただ力をアピールするしかなく、いつその牙を自分たちに向けてくるかもしれない『傭兵』でしかない。商人と傭兵、どちらが自国に利益をもたらすか……考えなくともわかる」


「でも、それだと堕天使に日本を滅ぼしてもらって、その地位を乗っ取ろうとなんて邪な考えもあるんじゃない?」


「目の上の瘤とはいえ、表立っては友好国である日本を滅ぼした連中と手を組むなんて自国民が許すと思うか? しかも、手を組みたいと思っているセラフィムたちとは敵対関係をしているとなれば――」


「絶対しないわ」


「だろ。力だけの支配関係なんてのは古代では成り立っていたかもしれないが、今の時代は持ちつ持たれつ、なんらかの見返りが無いと協力なんてできないんだ。堕天使はそれが分かっていなかったから、最後はみっともない姿をさらして孤立したんだろ」


「つまり、負けて当然だったってわけね」


【堕天使とは関係ないんですが、一つ質問しても?】


「なんだ、ステラ? 改まって?」


【私にはまだ分からないことがあるんですよ】


「なんだ?」


【一応、天使との戦いも終わって『原作』の話は終わったじゃないですか。いわばゲームクリアです。でも、信二さんがこの世界に来た理由がまだわかっていないんですよ】


「人生にゲームみたいにここで終わりなんて無いからな。とはいっても、一応はいくつか仮説は立てたが、根拠はない妄言だぞ」


「私も聞きたいわ、その仮説」


「……まあ、話して減るものではないから話すが、突拍子の無いことだから笑うなよ」


【笑いませんよ】


「さっさと話しなさいよ。もうすぐ家に付いちゃうでしょう」


「……さてと、ミステリーというのはフーダニット(犯人は?)、ホワイダニット(動機は?)、ハウダニット(トリックは?)の3要素から成り立っている。だが、今の俺にこれらを証明するだけの証拠は持ち合わせていない。それゆえに、仮説でこれらの要素の一つを決めつけることで他の要素を成り立たせる推論を重ねた」


「くどい、さっさと言いなさいよ」


「まあ、慌てるな。この3要素の中で俺が注目したのはハウダニット、どうやって転移してきたかを考えた。これまで出会ってきた異能の中で最も怪しいのは、言うまでもなく【接続】だ」


「まさかだとは思うけど、元の信二とアンタが【接続】したからこっちに来たとかいうわけ?」


「概ねその通りだが、少し違う。俺はこっちの世界の住人じゃないからな。【接続】を使うには物理的接触が必要になるが、3次元と2次元の関係な上に、原作には登場しない信二モブとは何の接点もない」


【だとしたら接続できませんよ】


「ああ、俺と信二。異なる世界に住む者をつなぐ何かが無いと【接続】転移説は崩壊する。そこで、一つの仮説を立てた」


「どういう仮説?」


「元の信二は事故で亡くなっていたとする。死後、彼の魂は輪廻の果てに異世界に転生した。生前の記憶もない一般人(モブ)の彼は偶然にも生前の世界観に似たゲームと出会ってしまい、無意識下で生前のことを思い出したのだろう」


「それって、元の信二がアンタってこと?」


「そうだ。そのゲームに嵌っていたのは俺の意思だとは思いたいが、もしかすると無意識下でそういう要因があったのかもしれないな。親よりも先に死んだことによる後悔なのか、天使や『評議会』の蛮行を止めたいという正義感なのかは分からないが、彼の残滓による『元の世界に戻りたい』という願いが【接続】という異能を開花させ、死後まもない自分の身体に自分自身を【接続】した。【浸食】の力も借りたとはいえ、【接続】が魂と肉体を繋げられることは美海ちゃんで証明済みだ。不可能ではないだろう」


「そんなことできるの? 異世界間をつなぐなんて」


「ワープホール先だろうと接続出来る以上、距離は関係ないのは証明済みだ。ならば、異世界間をつなげることができても不思議じゃない。だが、元の身体に戻れたところで彼の残滓は消滅したのだろう。この身体に俺の魂しかないのはステラが証明しているからな。となれば、残されたのは理由もなく異世界転移した俺だけになる。状況証拠ばかりになってしまったが、これが俺の仮説だ」


「確かに筋は通っているけど、とんでもない説ね」


「だろ。だから話さなかったんだ」


「でも、その説が正しいとなると【接続】を使えば元の世界に戻れるってことよね?」


「さあな。使えばわかるかもしれないが、今は使う気はない」


「どうして?」


「俺がこの【異能】を使って元の世界の両親や友人に謝ったところで、もう一度この世界に戻れるか保証はないからな。なんたって、俺の世界には異能や魔法はない。本物の信二の残滓が無くなったのも、奇跡を起こす代償に魂1つと考えれば納得は行く。ならば、元の世界に戻るという奇跡を起こすのに【接続】という異能を失う代償があってもおかしくはない」


【つまり、接続による帰還は片道切符だと】


「ああ、仮に元の世界で【接続】を使えたとしても、この世界に戻ったら廃人になりましたでは駄目だろ。だから使わない。なんたって、可愛い彼女を放り出すわけにはいかないからな」


「か、可愛い……!?」


 顔を真っ赤にしたアスカをからかうかのように笑う信二。原作とは異なり、天使と和平を結んだ世界。これから先の未来を誰にもわからないが、沈みゆく夕日だけは二人の進む道を祝福するかのように明るく照らしていた。

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