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ゲーム世界へ転生したモブ♂、死ぬ未来を回避するために美少女(偽)になる  作者: ゼクスユイ


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第75話 オペレーション インディペンデンス・デイ

 茨のバリケード前、ひかりちゃんとピーちゃんがモンスターたちを倒していくも、2回目の増援モンスターは彼女たちを無視してバリケードの破壊を優先して攻撃を仕掛けてくる。それらを倒そうにしても、最初にいたモンスターたちすら倒し切れていないこの状況、手が回らない。


「ピーちゃん、先にあっちを倒しにいきます」


「待てい。この数、いくら妾でも仮初の身体では無理があるわ!」


 ピーちゃんがぶつくさ言うも、バリケードが破られるのは時間の問題。少しでも、その時間を引き延ばそうとひかりちゃんが巨体である敵の隙間を縫って、ぶちぶちと茨を引きちぎっているオーガの頭を切り落とす。とはいえ、1体倒した程度では収まらないほどに十数体のモンスターがバリケードの半ばまで破壊していた。

 もはや間に合わないかもしれないと不安に思うも、邪念を追い払うかのように頭を横に振り、次のモンスターに攻撃を仕掛ける。そんな最中、メイド服を着た奇妙な智天使級が接近してくる。


「停戦を結んでいたはずじゃあ……」


「いや、何か変かじゃ……」


 智天使級が通り過ぎていく際、近くにいたモンスターたちが突然、殴り合いをし始める。まるで隣にいる仲間が敵にでも見えているかのような激しい仲間割れに二人が混乱していると、智天使級が身動きの取れないアスカたちをぽいぽいとバリケードの内側に投げ捨てる。たまたま、カレンの傍に転がって来たので、打撲を黄色い炎で治していく。


「いたたた……何するのよ、このポニ子!」


「ポニ子?」


「私たちの後頭部のパーツがポニーテールに見えるせいかと、お姉さま」


「では、貴方は三つ編み、みつ子と名乗りなさい」


「喋った!?」


「ってか、セラフィム以外の天使って喋れたの!?」


「「私たちは賢いので」」


 エッヘンと胸を張る智天使級のメイドたち。表情は一切変わらず、お面でもつけているかのような不気味さはあるが、所作は人間気味ていた。超然としているセラフィムよりかは好感を持てそうだと思っていると、ポニ子があの仲間割れについて説明する。


「あなた方人間に分かりやすく説明すると、あれはみつ子の異能で無臭かつ目に見えない鱗粉で幻覚を引き起こしています」


「み~つみつみつ。味方同士で殴り合う光景は楽しいみつね~」


「なんでエアプ敵キャラみたいな喋り方をしているのよ!」


「この国ではこういう風に喋るのでは?」


「なんで、そこだけネット文化拾ってくるのよ……周りを見なさいよ、そんな風に喋る人間なんていないわよ!」


「なんと……!?」


「では、自宅だけではなく学校とやらでもメイドさんがお手伝いしたり、忍者になったり……」


「おもちゃでブラックホールを作り出したり、宝を求める大海賊だとか世界征服をたくらむ悪の組織も嘘だと……!?」


「このアニオタ天使があああ!!現実でそんなのあるわけないでしょう!」


「あっ、でも、この学院ってお嬢様が多いからメイドさんはたまに見かけるよ」


「みみみ、余計なこと言わない。そんなこと言ったら――」


「やはり、セラフィム様の目は正しい」


「ええ、私たちでは真偽を見抜けなかったですもの」


「この作品はフィクションです。って書いてあるでしょうがああああああ!!」


 アスカがツッコミを入れてもセラフィムのことを慕う気持ちに変化は無いようだ。天然な智天使級2人にツッコミ疲れているとエクステラまでやってくる始末だ。


「ずいぶんと愉快なことになっているわね」


「アンタほどじゃあないわよ」


「そうかしら。カケルくん、ティアマトが現れてから私たちが居ない間のこと教えてくれないかしら」


「うん、わかったよ。実は――」


 ひかりちゃんが孤軍奮闘したこと、サキが戦隊ヒーローに変身したこと、敵対していたはずのシャドウたちがやってきて人命救助していることを伝える。その間、智天使級たちの参戦で少し押し戻しているが、まだまだ油断ならない状況だ。


「なんというか……混沌としているわね。でも、戦況は分かったわ」


「今の僕にはこれくらいしかできなくてごめん」


「謝る必要は無いわ。こっちも別の神を呼び起こされたせいで事前の準備が全部パーよ」


 と言い残して飛び去ろうとしたとき、遠方からきらりと光り輝くながら迫ってくる何かが見える。それは、恐竜ダンジョンで戦ったことのあるメタルザウルスの1種、メタルラプトルの群れであった。しかし、その時とは違い、メタルラプトルの頭部にはとってつけたような禍々しい光を放つ黒いヘイローが浮かんでいる。


「堕天使に操られているって感じかしら。幻覚は効かないし、放っておくわけには――」


「ここは私にお任せを」


 ポニ子が手をかざした瞬間、メタルラプトルの前に黒い壁が現れ、ぶつかるのを避けた彼らの足が一時的に止まる。その隙を逃さんとばかりに手を振り下ろすと、メタルラプトルたちが突如光り輝いてゴブリンに変貌する。ゴブリンになったメタルラプトルたちが互いを敵だと思ったのか、自分たちの口を大きく開けてその身体を食い尽くしていく。


「ジャスト1分。いい夢、見れたでしょうか」


 ポニ子が指パッチンすると、ゴブリンになっていたメタルラプトルたちが元に戻る。ただ、味方同士で傷つけあった傷は癒えず、ピクリピクリとひん死の状態。天から降り注いだレーザー光で介錯するのであった。


「魔眼の系列かしら?」


「いいえ、違います」


「お姉さまの能力は光を操る能力。機械の身体であっても視るためには光が必要。光を操れば、彼らの前に存在しない壁を作り出すことも、別の生物に変貌させたかのように見せることも自由自在なんです」


「みつ子とは違い、嗅覚や音などを誤魔化せるわけではありませんが、自我の無い相手なら支障はありません。ここは私たちにお任せを」


「「さて、貴方たちが見ているものは『真実』でしょうか?」」


「「「「うわぁ……」」」」


 茨の隙間でしか見えないとはいえ、目の前に迫ってきた絶望の象徴たるモンスターたちがたった二人の智天使級に文字通り手も足も出ないでいる光景にドン引きするカケルやリョウたち。


「俺たち、下手したらこんなんと闘わないといけなかったとかマジ?」


「うん。味方で良かったね、ホント……」


「みつ子さまの幻覚は気づけば、いえ、事前の情報があれば私の炎で対処できますが、そもそもポニ子さまの異能で炎を出していないのに炎を出しているかのように認識そのものを歪められていれば、対処そのものが困難ですわね」


「普通は戦っている内に魔力消費で気づくんだろうけど、そこは幻覚でカバーしてくるってわけね。手組んで来て良いコンビじゃないわ、コレ……」


「チート!チートですわ!」


「コンビ殿堂ですわ~」


「でも味方だと?」


「「「「助かりましたわ~!」」」」


 現金な女生徒たちである。そんなやり取りしている間にアスカ戦で負ったダメージで不調だったEX-04が黄色い炎の修復効果で再起動し始め、人型形態、鎧武者のような年配の爺さんになる。


「話は聞こえておったわい。老体にもできることはあるようじゃな」


「ええ。とりあえずはここ一帯の守りを」


 EX-04の手によって茨のバリケードが強化され、救助者の安全は確保されていることを確認したエクステラは振り向き、セラフィムとティアマトたちの戦いを見る。彼女たちの攻撃を隙を伺いつつ、一発一発が致命傷となる大技を決めているあたり、さすがはラスボスと言ったところ。だが、それらの技を受けても驚異的な再生能力の前では形無し。意味を為さないでいる。


(ステラ、話を聞いている間にさっきの件、どうなった?)


【SNSの投稿等から、エナジードレインの被害範囲は37km、なおも拡大。被害を受けているのは人間だけでなく犬や猫、鳥、ペットの爬虫類なんかも含まれています】


(思ったより被害範囲が広いな……最後の一つ、その拡大速度はセラフィムの攻撃を受けた際、どうなっている?)


【どうしても投稿だと一手遅れるので、はっきりと断言はできませんが、ティアマトが再生しようとすると被害範囲が急激に広がる傾向があります】


(やはりな、エナジードレインこそがティアマトの不死性を支える能力ということだ)


【ならば、エナジードレインを封じることができれば】


(勝ち目がある。だが……)


 問題はその方法。エナジードレインの対象になっていないのは、機械であるEXナンバーたちや異星人である天使とその彼女たちと魂レベルで融合している自分やサキだけ。つまり、エナジードレインの対象は地球生まれのすべての動物を対象としている可能性が高い。もし、このままエナジードレインが出来なくなるまで持久戦を行い、仮に勝利を収めたとしても、地球上の生物にどれだけの悪影響を及ぼすのかその二次被害は計り知れないものとなる。


【すでに交通事故や火災なんかの二次被害が出ていますからね。しかも、救助できないおまけつきです】


(そうなると持久戦はナンセンスだ。だからと言ってエナジードレインが届かない場所、仮に何らかの方法でティアマトを月まで転移させたとしても、拡大し続けている以上、奴のエナジードレインが地球まで届かないという保証はない)


【それで古代の人はティアマトを何らかの方法で封印していたと】


(今となってはその方法を知る術はない。となれば、俺たちに残された道は倒すしかない)


 盤面は出そろった。相手の手札にこれ以上のカードが無いと信じて、いや信じ込むしかない。相手が隠しの一手があるなら、そもそも負けしかない。考えるだけ無駄だというもの。エクステラの脳内で現状の手札を確認する。


(民間人の保護を考えるなら、智天使級以下の天使たちは防衛につかざるを得ない。つまり、俺が持てる手札はそれ以外のカード。そして、それらを総動員したとしてもティアマトを正面から倒すことは不可能。つまり、何らかの搦め手が必要)


【でも、どうやって? 封印できるくらいにはティアマトを知り尽くしていたであろう古代人も倒せていないんでしょう】


(ああ。仮に倒す方法があるとすれば、古代の地球には存在しなくて、今の地球に存在するものが攻略のカギになるはずだ)


 例えば技術力。元居た世界における核兵器、この世界ではN兵器呼ばれている文字通り最終兵器では、救助者ですら巻き込んでしまう。もしかすると、この瞬間にもその承認に向けて国防軍が動いているのかもしれないが、エクステラにとっては事実上のタイムリミットに等しい。

 そうやって一つ、一つ、昔よりも発展しているものを思い浮かべては消していき、何か方法が無いかと考えていく。その間にも、多勢に圧されている座天使級が学院の外への進行を許しそうになったり、余力の少なくなってきたのか、セラフィムの反撃も減ってきたりと、残された時間はあまりない。


(待てよ、昔には存在しなくて近年存在したものがあるじゃないか。となれば……)


 脳裏に浮かんだ一筋の光明をもとに策略を組み立てていく。これまで見てきた光景、その全てを総動員しての逆転の一手。


(俺たちが120%以上の力を発揮すること前提だが、ティアマトを倒す方法はある!)


【どれどれ…………えっ、行けます? この作戦が上手くいったとしても、下手すればスタンピード起こりません?】


(ティアマトを相手するよりかは断然マシだ。あらゆる立場を乗り越え、この日を神からの独立を果たす……作戦名:オペレーション・インディペンデンス・デイを発動する)


 ステラが先ほど伝えた作戦内容を関係者全員のEXギアに送付し、それを見た者たちが無茶な作戦だと思いながらも、作戦開始に向けて移動し始めるのであった。

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