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ゲーム世界へ転生したモブ♂、死ぬ未来を回避するために美少女(偽)になる  作者: ゼクスユイ


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第67話 月下の戦い

 リョウのところに戻ると、ドラゴンボートから戻ってきたカケルたちと遅れて合流してきたみみみと清楚なお嬢様といった感じの女の子が喋っていた。もしかすると、みみみの友達かもしれないと思いながらも、信二は氷が解けない内にリョウに注文された料理を渡していく。


「信二、サンキュー」


「で、その子は誰なんだ?」


「あっ、紹介するね。この子は友達の――」


「西園寺 紫苑と言います。麻衣ちゃんが迷惑かけているみたいで」


「もうかけてないって。それにしても、サクラちゃん、来れなくて残念だったね」


「(サクラ? 聞き覚えはあるが)……そのサクラちゃんはどういった子なんだ?」


「立てば芍薬 座れば牡丹 戦う姿は彼岸花でしょうか」


「あ~見た目はおしとやかな和服美人だけど、スイッチ入ると刀振り回して容赦ないもんね。納得」


(和服に刀……サクラと言う名前を聞いたとき、もしやとは思ったが、EX-04の使い手、副生徒会長の天上院サクラか!)


【あの爺さん、今度は美少女と手を組んだんですか!? 羨ましい!】


 信二たちが内心驚きながらも、外面には出さないように努力する。今の立場上、サクラのことは他校の副生徒会長、ほぼ知らないはずの女の子。写真を見たならともかく、少しばかりの特徴を聞いて、その人と断言できる方がおかしいからだ。そんな信二の内心など知らず、みみみたちは会話を続ける。


「それにしてもここ1週間、サクラちゃんの様子がおかしいんです。急に付き合い悪くなって……」


「さっき、家まで行ったのに追い返されたもんね」


「1週間程前ってなると、虎西のスタンピードで知り合いの誰かが大怪我をしたとか?」


「学園都市の探索者総動員だったもんな。あり得るぜ」


「私もその場に居ましたが、私が見る限り、サクラちゃんもお友達もケガした様子はありませんでした」


「様子がおかしくなる前に何か無かったのか? 例えば、誰かと会う約束をしていたとか」


「どう? 思い当たる節ある?」


「そうですね。1週間前となりますと……図書室で一緒に勉強をしていた時は何もありませんでしたが、その次の日に会った時には付き合いも悪くなって。今思うと何か思いつめていたような気も……」


「別れてから帰宅途中、あるいは家の中で何かしらのトラブルに巻き込まれたというわけか」


「でも、トラブルに巻き込まれたら普通誰かに相談しないかな? 僕だったら信二君とかアスカに相談するけど」


「あとは親や警察だな。そして、その内容は友達には話せないもの……例えば親が事業や投資に失敗して莫大な借金を背負わされているとか」


「そんな話聞いたことがありません」


「あるいは誰にも言わないように脅迫されているかだ。弱みを握られ、親や警察にも言えず、誰かの言いなりになっているのかもしれん」


「さすがに刑事ドラマの見すぎじゃない?」


「サクラちゃん、強いから弱みを握られても返り討ちにしそうなんだけど……」


「……例えば、親や妹を人質にされたとかな」


 原作なら発生するEX-03による人質イベント。発生フラグであるミスコンは折れているが、世界の修正力とやらでイベントが起きているのであれば、自分らと関係ない人を拉致してもおかしくはない。

 そして、原作よりも壊滅的状況になった『評議会』が強硬手段で人型EXギアの使い手である彼女を仲間に引き入れようとするのは自然な流れだろう。


(半ば当てずっぽうに言ったとはいえ、これが本当ならマズイな……敵側に回られると、こちらには彼女たちの異能を《《まともに》》突破する方法が全くない。これではサタンを倒すどころの話じゃない)


「サクラちゃんの両親は元探索者だし、ブランクあっても腕は立つはずだから人質に取られることは無いはず。妹はいるけど、どうかなぁ……ツバキちゃんに手を出したら、あの家一家総出で犯人に襲い掛かりそうなんだけど」


「まあ、俺の言っていることはあまりに現実離れしているし、実際は冷蔵庫にあったプリンを勝手に食べて姉妹喧嘩したくらいだろうさ」


「ああ、分かる。私が美海のアイスを食べちゃったとき、1週間くらい口聞いてくれなかったもの」


「だろ。俺もそのサクラちゃんに会ってみたいが、手ぶらで行くわけにもいかん。そこで、菓子折りを選んでくれないか? その子の好みなんて知らないしな」


「良いよ、それくらい」


「というわけで、俺はみみみと一緒にサクラちゃんの家に行くが、お前たちはどうする?」


「みんなでゾロゾロ行っても威圧感与えるだけだろうし、ここで帰ってくるのを待つわ」


「分かった。すまないが、バーベキューの準備もしてくれ。帰ってくるのが遅くなるかもしれん」


「帰ってこなかったら先に食べておくぞ」


「先に食いつくされないようにしないとな」


 後はアスカたちに任せて、近くのデパートで高めの羊羹を買った信二がみみみと一緒にサクラの家まで行くのであった。



 みみみに連れて来られたのは純和風のお屋敷と呼ぶような建物。一般庶民である信二が見ているだけで気圧されそうになりそうな中、みみみがインターホンを鳴らすと左目に眼帯をした和服を着た少女が出てくる。


「サクラちゃん、これから紫苑ちゃんと一緒にバーベキューしようと思うんだけど来ない?」


「その、そういう気分じゃあ……隣にいる人は? 麻衣ちゃんの彼氏?」


「まさか~」


「初めて。中黄高校でのみみみ、いえ、麻衣ちゃんの友人代表で来ました信二と言います。気に入ってもらえると嬉しいです」


「たねやの羊羹、好きでしょう」


「……うん、ありがとう」


「もう、暗い顔しない!私の知っているサクラちゃんはもっと輝いていたよ。こう、『うひゃひゃ、次の獲物はド↑イ↓ツだぁ↑!』みたいな」


「そこまでひどくはなかったはず!?」


「そうだぞ。せいぜい『今宵の我が獲物は血に飢えておるわ。ぺろっ』程度だろ」


「ぐっ……見ず知らずの者にそこまで言わればならんのだ!?」


「まあまあ、ちょっと元気が戻って来たみたいだし。元気が無いの、どうしてか聞かせてくれる? ツバキちゃんと喧嘩したの?」


「それは、その……」


「お姉ちゃん、どうしたの~?」


「あっ、ツバキちゃん。元気にしてた~」


「さっき会ったところじゃん」


 低学年くらいの小さな女の子が出てきたので、信二が改めて自己紹介をしていると、ステラが信二の脳内で「おや?」と首を傾げたような声を上げる。


(どうした?)


【ん~、これはまずいかもしれませんね】


(何がだ?)


【EX-05、あの醜悪女、美少女(ツバキ)ちゃんに憑りついていますね。これは許せませんよ!】


(なんだと!?)


 信二が改めて、ツバキちゃんを見るが、みみみとじゃれついている年相応の女の子にしか見えない。だが、サクラちゃんの方を見ると、なにか不安げな様子な表情をしているのが分かる。


(なるほどな。異能は後で教えてもらうとして、まだEX-05が野良EXギアの可能性はあるが、評議会に繋がっているなら戦力兼人質というわけか)


 どういった経緯でツバキちゃんがEX-05に選ばれたのかは分からないが、姉であるサクラからすれば妹を傷つけるわけにもいかず、言いなりにならざるを得ない状況だ。


(相手からすればサタンの復活まで時間を稼げば良い。サクラとEX-04の異能はうってつけだろう。となると、こちらの土産、気に入ってもらえるかどうかだな)


 サクラの持っている紙袋を見て、仕掛けがうまくいくかどうか考えながらも、信二たちは浜辺へと戻るのであった。




 その夜。誰もいない海岸でサクラは一人でやってきた。その手には紙袋に入っていたレシートのようなもの。そこにはこう書かれてあった。


『今晩1:00、海の家の前で一人で来るのを待っているわ エクステラ』


「エクステラが指定した場所はこのあたりのはず……」


「今日は星がきれいね。昔の船乗りは星に導かれて航海していたけど、貴女には何が見えるのかしら?」


「エクステラ!」


「私からのメッセージ、気に入ってくれたみたいね」


 エクステラが屋根から飛び降りる。土産物の紙袋の中にレシートを入れて、【接続】でインクを移動、印刷された文字を改ざんすることでメッセージとして忍ばせておいたのだ。


「エクステラ、お前に恨みはないが、ここで倒させてもらう!」


「あらあら、こっちは話に来たのに物騒ね。仕方ない、こっちも応戦させてもらうわ。EX-04の使い手、天上院サクラ」


【どうやら儂のことまでバレておるようじゃの。それにしても、彼奴の武器EX-01に似ておるようじゃが……】


【おや~ついに耄碌してきましたかぁ~】


【その声、EX-00か!? いかん、主殿、ここは一度退――】


「我が愛刀、月を赤く染めよと言っておるわ」


【刀抜いとる!? 主殿、せめて儂を使いなされえええ!】


【ずいぶんと愉快なコンビですね】


(ああ見えても実力は折り紙つきだ。油断はできん)


 赤い甲冑を着込んだ鎧武者となったサクラが黒光り日本刀をエクステラに付きつけ、それに呼応するかのようにエクステラも構える。雲一つない月明かりの下、指し示したかのように二人は同時に動くのであった。

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