第63話 スタンピード part4
メタルT-REXとの決着がついたころ、海岸エリアではまだ戦いは続いているが、制圧した他エリアからの合流もあってメタルザウルスたちの上陸を阻んでいた。そんなとき、タコハチの電撃を纏った触手攻撃でメタルザウルスを葬り去ることに成功する。
「なんや急に弱くなったで。今まで動きを止める程度の攻撃やったのに」
「どうやら、ボスモンスターを倒したことで弱体化しているみたいだ」
「このまま一気に攻めますわ」
長かった戦いもようやく終わると探索者や学生たちが安心していた時、メタルザウルスたちの目がチカチカと点滅し始める。イレギュラーの行動に戦っていた探索者たちは一旦距離を取り、何が起きても大丈夫なようにする。
「なんや、自爆でもするんかいな」
道連れに自爆。十分にあり得る話だ。そう思った探索者は少なくなく、バリアを張って爆風に備えている。そして、赤黒い光に覆われると何かに吸い込まれるかのように飛び去っていく。向かった先は森林エリア。何が起こっているのか分からぬまま、探索者たちはその後を追いかけるのであった。
そして、森林エリアでもメタルザウルスたちとの戦いは続いているもの通常種の恐竜はほぼ駆逐されており、このままいけば戦闘以外の被害はほぼゼロに抑えられるところまで来ていた。そんなとき、倒されたT-REXの頭部が浮かび上がり、周りのメタルザウルスがガシャンガシャンと音を立てながら、集まりだしていく。
「エクステラ、何が起こっとるんや」
「私は全知全能の神様じゃないわよ。知らないこともあるわ」
海岸エリアから飛んできたメタルザウルスたちも集まりだし、鉄塊になっていく。そして、すべてのメタルザウルスたちを吸収した鉄塊が変形し、先ほどの倍はあるであろメタルT-REXに変形する。
「復活した!?」
「こけおどしやろ!でかい分、関節部の負担はデカくなっとるはず!」
レッドが先陣を切り、飛び上がって関節部に突き刺す。だが、今までとは異なり、炎を纏った剣が折れてしまう。
「こいつ、関節部もミスリル製か!?」
「危ない、リーダー!」
あちらこちらに増設されたCIWSがレッドに標準を向けて、火を噴く。だが、ブルーのモップがレッドの身体に絡みつき、引き寄せたことでその射線から逃れることに成功する。
「助かったで。せやけど、ウチの攻撃が効かんとなると……馬鹿弟子、さっきの燃え燃えモード、もう一回使えるか?」
「ムリ……歩くのも精一杯……」
『今のカケルお兄ちゃんには反動が大きかったみたいです。1日に1回が限度かと』
「せやな。生まれたての小鹿みたいになっとるもんな」
自衛隊や他の探索者が懸命に攻撃しているが、彼らの攻撃では足止めにすらなってない。蹂躙。まさにその二文字があっている無敵の行進。
「止まれ!」
「止まってくれ!」
祈るかのように弾幕を張り続ける自衛隊と探索者たち。だが、準備万全な状態ならともかく、連戦に次ぐ連戦で消耗しきった彼らに阻む力は残っていない。肩に増設されたキャノン砲から放たれたビームはゲートを瞬く間に溶かし、巨大なワープホールを作り出す。ずけずけとメタルT-REXがその中に入り、姿を消すのであった。
「くそおおおお!!」
失敗。敗北。
誰しもがその二文字を思い浮かび、泣き叫ぶ中、ただ一人、諦めていない者がいた。
「まだよ、メタルザウルスが居なくなったということはジャミングも消えているはず。カケル君、仲間に連絡して海岸エリアの状況確認。他の探索者も仲間から他エリアの状況を聞かせて」
「エクステラ、何を?」
「私の予想が正しければ、現存するメタルザウルスと合体したと考えられる。ならば、あれを倒せばこの騒動は全て解決するはず。その裏取りよ」
「せやかて、ウチの攻撃も通用しないレベルや。あんたのことはよう分からんけど、それ以上の火力を出せるんか」
「策はある。そのためにも自衛隊に話を通さないとね」
「私たちに?」
「ええ。これから私は虎西にある日本最大級のメガソーラー施設を襲うわ」
「………………はあ?」
「あの発電所で発生する電力はそこらの火力発電所と同等レベル。それだけの電気エネルギーを集約させ、砲撃すれば巨大化したメタルT-REXを倒せるかもしれない。もっとも、それを行えば負荷に耐えられずに発電所自体がおじゃんになるけど、背に腹は代えられないわ」
「ちょっと待って!いくら非常事態とはいえ、そんなこと許可が早々に下りるわけないでしょう!」
「だから話しておく必要があるのよ。都合のいいことに私には懸賞金が掛かっている。つまり、凶悪犯が発電所でのテロを予告すれば、貴方たち自衛隊も上の許可を取る暇も無く、発電所に向かわざるを得なくなる。凶悪犯を追っている最中に偶々モンスターがついて来てもおかしくはない話よね」
「そういうことかいな。要はウチら全員であのデカブツを引きつけながら、先行したアンタを追って発電所まで行けばええって話やな」
「満身創痍の私たちでも、デカイの1発当てて逃げるくらいなら可能ですね」
「話が早くて助かるわ。カケル君、話はついた?」
「うん。アスカに聞いたら、生き残りが全員空飛んで行ったって」
「山岳エリアには生き残りが居なかったら、何もなかったとさ」
「荒野も同じだな。生き残りが飛んで行ったらしい」
「同じく草原も」
「確証は持てたというわけね。相手は残り一体。これが最後の戦いになるわ。ギリギリまで引き付ける必要があるとはいえ、作戦前に発電所を潰されたら、すべてが終わる。一刻の猶予も無いから、防衛もかねて先に行くわ。準備が整い次第、こちらに来ること。わかったわね」
エクステラがリョウコたちの返事を聞く前に、ワープホールに入り、地上へと帰還する。帰還したエクステラの眼に最初に飛び込んできたのは瓦礫の山。ダンジョンに入る前にはあれだけにぎわっていた広場も土産物屋も見る影も無く、報道ヘリであろう残骸もその悲惨さを告げるに過ぎない。外で待機していた自衛隊員も必死に応戦できているが、彼らの装備では傷一つつけることができない。怪獣映画のように街を破壊していたメタルT-REXがこちらに振り向く。
(気づかれたか!)
ワープホールから出てきたエクステラにメタルT-REXが背中からミサイルの雨を降らしていく。それをバルカンで撃ち落とし、爆炎の華を咲かせる。
(このまま発電所に向かえば、間違いなく発電所が破壊される。そうなれば逆転は不可能!奴の目を掻い潜り、発電所に向かないといけないが、主戦力はまだダンジョンの中。中にいるメンバーが戻ってくるまで耐えるか? いや、合体前の奴にとどめを刺したのは俺だ。となれば、奴の優先事項に俺の排除が上の方に来てもおかしくない。合流しても無意味か)
ミサイル攻撃では拉致があかないと思ったのか、今度は有線式クローアームを飛ばしてくる。手の指先に増設された砲門による十字砲撃を掻い潜っていく。
(どうする? 援軍が来るのを待つ? いや、不確かなものなど賭けるにも値しない。それにジャミングの影響でこちらの状況を他地域に伝える手段も無い。却下だ)
瓦礫の陰に隠れて弾をリロード。その隙を逃さんと、口からのビームで瓦礫ごとエクステラを吹き飛ばそうとする。短距離転移で難を逃れたものの、最後の一撃のために余力を残さないといけないとなると、あまり余裕はない。ならば、アイテムの力に頼ろうと発煙筒を投げつける。
(姿は違えど燃費最悪のカケルの覚醒モードに魔力供給したのも地味に響いている。逃げるだけでは解決しないが……)
だが、煙幕を撒いても、正確にエクステラに向かって砲撃が飛んでくる。周りには燃え盛る炎、熱源センサーはごまかせるはず。
(となれば、聴力。もしくは蝙蝠のような超音波によるソナー。あるいは俺たちがやっているような魔力探査系のサーチの併用か。だが、散発的になっているとはいえ、自衛隊の攻撃の中、前者2つは考えにくいが……サーチ魔法関連ではないことを祈る)
スタングレネードをメタルT-REXの目の前に転移させ、さく裂させる。まばゆいばかりの閃光と耳をふさぎたくなるような爆音が鳴り響く中、戦場を抜けようとするも、背中に増設されたミサイルポッドから放たれたミサイルがエクステラを追いかけていく。
(ちっ、向こうは誘導系の武器は使い放題か!目くらましに成功しても、これでは足を取られてしまう)
解決策が思い浮かばない。じりじりと魔力が削られていったとき、メタルT-REXの意識外から飛来物が接近するも、CIWSによって迎撃される。だが、撃ち落とされたソレが爆ぜると同時に、飛び出てきたクナイがカメラアイに突き刺さる。
「拙者の朧手裏剣の味はどうでござるか?」
「シャドウ、なぜ、ここに!?」
「もともと人型EXギアは来るべき人類の脅威への対抗策として生み出されたもの。義によって助太刀申した。と言っても、これは拙僧の独断である故、主の癇癪が起こらぬよう適当なところで撤退するでござるよ」
「ちょうどいいところで来たわ。貴方の能力で、発電所まで潜伏できないかしら」
「拙者の影の能力でござるな。中の人たちが戻ってくるまでの足止め程度ならばと思っていたでござるが、それならば容易いこと」
メタルT-REXのカメラアイが治るのと同時に、シャドウの能力で一緒に影の中へと飛び込み、発電所まで向かっていく。その一方で、EX-06には劣る探査能力ではシャドウの潜伏能力を見破ることができず、突如として消えたエクステラに驚きながらも、ただ単に逃げたと思ったメタルT-REXは破壊の限りを尽くしていくのであった。




