第61話 スタンピードpart2
「エクステラ、来てくれたんだ」
「なんで、メイド服? 流行っているの?」
「遠距離形態よ。メイド服なのは……製作者の趣味ね」
「その製作者誰や!ウチらとデザインダダ被りやんけ!パチモンやパチモン!金とるで!!」
「色被りもどうかと」
ブラックが指摘するように黒を基調にしたものにデザインを多少いじっているとはいえ、そもそもが冥土隊のおさがりなのだから、似通っていて当然である。
「そんなことよりも、今の状況を聞かせてくれないかしら。ある程度のことは彼から聞いているけど、最新の情報が欲しいわ」
「彼って……まさか信二!?」
「ええ。スタンピードの可能性があるから応援に来てほしいと言われてやってきたら、どんぶらこどんぶらこと流されていた彼を見た時は肝が冷えたわよ。意識は失っていたけど、命に別状はなかったし、今は安全なところで寝てもらっているわ」
「よかった」
アスカたちが一安心したところで、冥土隊からメタルザウルスがまだ全機倒していないことや残りの数機による奇襲があるのではないかという推測を聞く。包囲網を瞬く間に敷く相手なら、電撃攻撃はあり得る話だと思っていた時、全員のEXギアに自衛隊からの緊急メールが届くと同時に1階層全域にジャミングが広がるのであった。
その頃、はるか上空にいるメタルザウルスは人間たちの無駄な努力を見下ろしていた。確かに地上に残してきた戦力では押し返され、駆逐されようとしている。だが、それは1割にも満たない戦力。それでようやく押し返せる程度の戦力しかない。本命の部隊は信二たちが山に登る前日の夜間に海にあるもう一つのワープホールから上空へと移動していた。
「……………………?」
肌を撫でられるかのような感覚。どうやらこの高度まで届くレーダーが人間たちにもあったようだ。バレてしまったのであればステルス状態で待機する必要はない。海中の部隊と連絡を取り、海と空。二方向から人間たちが出てくるゲートへと波状攻撃を仕掛けるのであった。
「EX-06、それは本当なの!?」
「はい。上空と海中にそれぞれ100機以上の機体を確認。こちらに向かっています」
スタンピードが確認されたことで、恐竜ダンジョンに突入したリョウコがしたのは敵の位置確認であった。カケルからの情報をもとに、本命の部隊をEX-06の探知能力ならあぶりだせるはずだと考えたからだ。
その結果、メタルザウルスの大部隊の感知とダンジョン全域のジャミングによる通信妨害が発生。これでは、探索者たちと連携取ることすらままならない。
「知らせることができたのは救いだけど……」
「僕、皆のところに戻ります。【加……」
カケルが走ろうとしたとき、上空から無数のメタルザウルスたちが降下してくる。自分たちの後ろには現実世界に繋がるゲート。退くことは出来ない。こうなれば、メタルザウルスを倒すしかないと、剣を強く握りしめる。そんなとき、ブラックの転移で冥土隊の5人が戻ってくる。
「よし、間に合ったみたいやな」
「師匠!」
「ウチが手本みせたるさかい、よお見とき。冥土一刀流、灼烈衝!」
自衛隊の人が弾幕を張る中をレッドが駆け抜け、足を止めたメタルアロザウルスの関節を突き、膝をつかせる。いかに強靭な顎をもつ肉食恐竜でも、動けなければ無用の長物。あとは自衛隊の飽和攻撃に任せて、別のメタルザウルスに攻撃を仕掛けるのであった。
「分かりました。行くよ、ヒカリちゃん」
「はい!」
カケルも負けじとレッドの見様見真似で関節部を狙い、切り落としていき、ゲートを死守しようとするのであった。
そんな危機的状況の中、エクステラたちは海岸エリアへと向かっていた。そこには海岸からメタルノトザウルスがノシノシと上陸し始めていた。そんな中、氷堂を背負った森野が戦場を駆け抜けていく。
「時よ、凍れ!」
「【権能】発動!これより、1分間、俺の拳に雷が纏う!」
止まった時の中を上陸したノトザウルスを殴りつけて、倒していく二人。見た目こそシュールだが、メタルザウルスにとっていつの間にかやられているのだから、死神にしか見えないだろう。そして、時は動き出す。
「濫用しすぎたか。時止めの時間が短くなっている」
スタンピード発生からすでに半日以上経過している。魔力はポーションでまかなえても、体力や疲労感はそう簡単にはぬぐいきれるものではない。ましてや、この海岸エリアは身体がまだできていない学生が主体となって守っている。相手の主力がやってきての長期戦など誰も考えていなかったのだ。
「雑魚は焼き払いましたが、この機械仕掛けは厄介ですわね」
「さしものお嬢様も溶かすことは出来ないのかい?」
「電気技をストックしてからやってくる卑怯者とは違いますわ。それに、関節部を溶かせば動けないでしょう」
「確かに。動けない人形を壊すくらいなら、俺でなくてもいける」
「それ、ウチらを雑魚扱いしとらん?」
関節部をどろどろに溶かされ、動きを封じられたノトザウルスにビリビリと電撃を流しこんでいくタコハチとツトム特製の電気銃でメタルドリグナトゥスを撃ち落としていく虎西生たち。ギリギリのところで持ちこたえているところに海中から浮上してきた何かに放たれた青いビームに生徒たちが吹き飛ばされる。
「メタルクロノザウルスってところか」
その大きさは通常の3倍、40m近くある。モビル〇ーツやスーパーなロボットでも連れてきてほしくなるサイズだが、あいにくそんな異能を持つ者はこの場にはいない。先ほどの攻撃を受けて撤退する学生たちが多数。もはや前線維持が困難になってきたところに、黒い弾丸が横切り、メタルクロノザウルスにぶつかる。その後、数発撃ち込んで銃弾が食い込むも中々貫通しない。
「ちょっと遅かったみたいね」
「アスカか。さっきの攻撃、エクステラだな」
「ええ、攻撃の都合上、離れたところにいるけど」
「狙撃か。リカ、周りの連中の回復をしてくれねえか」
「おっけー」
リカが軽いノリで、だが、テキパキと学生たちを治していく様子を見て、感心した様子で息を漏らす。
「亀北にいた時よりも、仕事が早いな」
「レベルアップしているからね~」
そして、崩壊した前線をきり抜けたノトザウルスたちを射抜くエクステラの狙撃。クロノザウルスに攻撃してほしいところだが、激戦を繰り広げているであろう森林エリアのメタルザウルスと合流するのもマズイ。それならば、彼女には抜けたノトザウルスたちの対処をしてもらった方が理にかなっている。
「この調子なら、後ろは任せられそうだ。俺たちであの親玉を倒して、森林エリアに戻るぞ」
「と言っても、こちらも体力が限界だ。時止めもあと1回か2回しか使えん」
「しかも効果時間も短いと来た。できるだけひきつけてから使うぞ」
「なら、私たちは動きを封じればいいってわけね」
「それならば、他の絡繰りと同様、私の炎で!」
カレンが操る火の鳥がクロノザウルスを包み込み、燃やしていく。装甲の薄い関節部なら間違いなく溶解する温度。だが、クロノザウルスが尻尾を海面にたたきつけて、巻き上げられた水しぶきで鎮火すると、何事もなかったかのように歩き始める。
「どうやら炎耐性はノトザウルスと比較にならないほどに高いようだ。ならば!」
【浮遊】で空中を飛んだタツヤが【放電】による電撃を浴びさせるも、巨体ゆえに意に介さない。まさに難攻不落の要塞だ。
「自信満々のわりには効かなかったみたいですわね」
「ふん、それはお前も同じだろ」
「なんですって!」
「事実だ!」
「はい、喧嘩しない!今度は私たちがやるから見ておきなさい。リョウ、みみみ、周りにいるノトザウルスは任せるわ。サキ、私が近づいたらあのときみたいに一瞬だけ動きを封じて」
「はい!」
爆撃で砂が舞う中、アスカが一直線にクロノザウルスに向かい、跳ぶ!それと同時に海から海藻が伸びてきてクロノザウルスを拘束する。力を入れればすぐに切れるような拘束だが、1,2秒は時間が稼げる。アスカの振りかざした拳の先にあるのはエクステラの弾痕。
「あのエクステラが無駄な攻撃するわけないでしょうが!」
アスカの電撃を纏った拳がメタルコートされた銃弾を通じてクロノザウルスの内部に通電、発火と爆発を引き起こし、内部から硬い装甲を吹き飛ばす。爆発に巻き込まれて、吹き飛ばされるも空を飛んでいたタツヤがアスカをキャッチする。
「今だ!時よ、凍れ!」
ここが絶好の好機。仕掛けるなら今しかないと氷堂が時を止めて、森野が仕掛ける。当然、狙うはむき出しになった鼻っ面。自身の渾身のストレートが入り、内部をぐちゃぐちゃにしながら侵入していく二人。
「オラオラオラオラオラオラッ!」
「凍てつけ!」
さらに叩きこまれる連打のラッシュと冷気による漏水と漏電。機械にとって致命的な一撃を与えた後、二人は脱出すると同時に時止めが解除される。顔面から吹き出た大きな炎を煽るかのように、カレンの火の鳥がその炎を身体中に延焼させていく。
「グガガガガガガ………」
もはや身動きをとることすらままならないクロノザウルスは倒れこみ、その生涯を終えるのであった。それを見届けたタツヤがアスカを地上に降ろすも、彼女はその場で倒れこむ。
「なんとか勝ったけど……もう魔力も体力も残ってない」
「後は僕たちに任せてください」
リカに疲労感も回復させてもらった学生たちが前に出て、残ったメタルザウルスたちに攻撃を仕掛けていく。早く戻りたいが、今のままでは足手まといになるだけだと考えたアスカは部活メンバーに休憩をとるように指示するのであった。




