表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゲーム世界へ転生したモブ♂、死ぬ未来を回避するために美少女(偽)になる  作者: ゼクスユイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
61/98

第60話 スタンピード part1

 信二が目を覚ます数時間ほど前、スタンピード対策本部に届けられた1本の動画。そこには、学生たちが命がけで撮ってきた2階層の戦闘データがあった。調査隊の全滅から始まり、ティラノザウルスの尻尾を容易に切断できる斬撃やAランククラスの爆撃を跳ね返す強靭な装甲、獲物を着実に追い詰める高い知性と連携攻撃は彼らの想像をはるかに超えていた。


「もし、この情報が無かったら我々は調査隊の二の舞になっていたかもしれんな」


「それどころか手遅れになっていたかもしれません」


 もし、学生たちの決死行が無ければ、今頃になって調査隊の異変に気付き、自衛隊の派遣どころか民間人の避難指示すら行われていなかったかもしれない。一人の犠牲(MIA)を出しながらも彼らが稼いだ1日の猶予と値千金の情報。これらを生かさない理由は全くない。


「だが、問題は近接戦が得意かつ電気属性の攻撃を放てる探索者があまりにも少ないということだ」


「記録映像だけでも向こうは最低でも24機、それに対してこちらは……」


「女生徒の異能の都合上、サーチできない上空戦力を考えるとさらに増えるか」


「大変です。1階層のモンスターの数が規定値を超えました」


「そうか……行政府に通達。スタンピード発生、緊急事態条項に従い、我々自衛隊は探索者と共にダンジョン内でスタンピードの解決に動く。だが、N兵器の使用は許可はしない。ジャミングで無力化される恐れがあるからな」


「りょ、了解です」


(N兵器ですら時代遅れになる時代か……)


 過去にスタンピードを解決してきた人類最後の切り札。それすらもメタルザウルスの前では役に立たない。人類を守る最後の砦は大量殺戮兵器ではなく人間なのだと痛感する。スタンピードの犠牲を最小限に抑えるためにも、対策本部長は部下に指示を下していくのであった。



「あれ、通信が途切れちゃった」


 草原エリアで1階層のモンスターを狩っていたとある社会人ギルドの一人が、別の場所にいるギルドメンバーとの会話中にプツンと通信が途切れる。それはつまり、事前情報を貰っていたジャミングを行うメタルザウルスが近くにいるということ。

 これはマズイと思ったリーダーが撤退をし始めるが、少し遅かった。上空にいる1mにも満たない蝙蝠のような翼をもつ翼竜、メタルイーが猛毒の紫色のガスを既に散布していたからだ。ガスに囲まれ、身動きが取れなくなったギルドメンバーはせめてのあがきとして、上空に向けて撤退を示す信号弾を打ち上げるのであった。


「撤退の合図……ってことは、あの辺にメタルザウルスがおるちゅうことやな」


「せや。まずはウチらで足止めや」


 偶々近くにいた色とりどりのメイド服を着た【日本橋冥土隊】が信号弾を見て、すぐさま応援に駆け付ける。そこには原型を見出すのが困難なほどにジュクジュクに溶けた遺体と空を悠然と飛ぶイーの大群がこちらに気づき、毒ガスを撒き始める。


「この惨状、あれが原因やな。グリーン!」


「分かっとるで。風よ纏え、【旋風】」


 鉄扇を扇ぐと竜巻が発生し、イーの毒ガスを霧散させる。そこにブルーが手にした水で濡れたモップの毛が伸びて絡みつき、拘束させる。そこにイエローが電撃を流し込んで感電させる。


「私も負けるわけにはいきませんね。THUNDER BULLET!」


 ブラックの電撃を纏った弾丸が転移し、イーの眼前に飛び出す。突如現れた弾丸に反応できずに感電し、撃墜される。瞬く間に制圧した【日本橋冥土隊】だったが、周りからSOSを示す信号弾が次々に打ち上げられていく。


「人気者は辛いで。ブラック、いざというときの転移分の魔力は残しといてな。緊急脱出装置が使えん以上、ブラックの長距離転移がウチらの生命線なんやから」


「分かっています。ですが、この程度の相手ならあと数戦は問題ありません」


 甘ったるいポーションを飲み干し、信号弾が打ち上げられた地点へと向かっていくのであった。



 また、開いた森林エリアではカケルたちがサキのエリアサーチを頼りに、ゲート前の安全の確保と奇襲を狙う小型恐竜たちを狩っていた。


「今は普通の恐竜だけど、メタルザウルスがいつ飛び出してくるか分からないから怖いよね」


「ほんと。今日に限ってここにゲートに開いてほしくなかったわよ」


 アスカがヴェロキラプトルを絞め殺しながら、愚痴っているとき、EXギアに通信が入る。そこには【日本橋冥土隊】が草原エリアにワープホールを発見。そこからメタルザウルスが侵入し、地上に向かおうとしている旨が書かれていた。


「アスカ、どうする?」


「行くに決まっているでしょう。電撃使いは来てほしいって書いてあるし」



 彼女たちが着いたころには2階層から移動してきたメタルザウルスらの進軍によって、荒野エリアまで押されていた探索者たちの姿があった。


「冥土二刀流奥義、紅朱雀!」


 冥土隊のリーダー、レッドがティラノサウルスを切り付けると切り口から炎が噴出し、焼き尽くしていく。だが、奥にいるメタルザウルスたちを倒そうにも、肉壁となっているティラノサウルスやトリケラトプスの群れが邪魔でたどり着くことさえできない。


「あのワープホールから出てくるの深層クラスやから、ウチらで対処せんとアカンけど、いくらなんでも数多すぎるんちゃうか」


「珍しくリーダー弱気やな」


「アホ抜かせ。もう実力の無い探索者は逃げたやろうし、雑魚をちゃちゃっと片付けるで。グリーン、合体奥義や」


「あいよ!」


「冥土二刀流奥義!」


「「桜花爛漫 炎獄の舞!」」


 風にあおられた炎が桜吹雪のように舞い、辺り一面に広がり、恐竜たちを覆いつくしていく。メタルザウルスには効かずとも、取り巻きの雑魚恐竜にとっては一瞬にして黒焦げにしてしまうほどの熱量。燃え広がった炎が鎮火すると、そこにいるのはメタルザウルス10体と2階層本来のボス、T-REXの姿のみとなった。


「マズイで。肉壁で分からんかったけど、報告よりも数が少ない」


「それまでに何体か倒したやろ」


「それを含めてもや。あと最低10匹はどこかにおるはず」


「どこかはどこや!」


「分かるかいな。早いこと報告しないと他のエリアが手薄になってしまう。もし、森林エリアに送り込まれてみい。味方が撤退することもできへんし、犠牲にしない限り、N兵器も使えへん。一巻の終わりや」


「では、長距離転移しましょう」


「アホか。ウチらが抜けたら、こいつらを素通しさせることになるわ」


 となれば、目の前にいるメタルザウルスの混成部隊をいち早く倒して戻ろうと思った矢先、カケルたちが合流する。


「ちょうどええところに人手が来たやん。おい、馬鹿弟子(カケル)。ちょっくら本部に戻って、別エリアにメタルザウルスが隠れ潜んでいる。本命はそいつらやと伝えてくれへんか」


「来たところなのに!?」


「脚の速さは買っとるんや。つーわけで、行ってこい」


「……分かりました。【加速】!」


「残りはT-REX、ウチらがメタルザウルスをやっつける。いくで!」


 カケルが猛スピードで森林エリアに引き返し、アスカたちはT-REXと向き合う。信二もカケルも不在だが、T-REXに勝つためにこの1週間特訓してきたのだ。負けるわけにはいかないと気合を入れる。


「プランCで行くわよ」


 T-REXに向けて、みみみが匂い玉を投げつける。ティラノザウルスには嗅覚を奪う効果があったが、上位種であるT-REXではヘイトを買うだけである。だが、多少距離のあるみみみがヘイトをとったことで、T-REXは口に炎をためて、攻撃を仕掛けようとする。


「今ね、スカイアッパー!」


 T-REXの下あごに向けて、アスカの鉄拳がさく裂する。大きくよろけ、溜めていた炎もまき散らしてしまい、ブレス攻撃ができなくなる。そして、足元にいたアスカを見たT-REXが巨大な尻尾を振りまわしたが、鋼鉄ボディのリョウが必死になって受け止める。


「いってぇ……スパイクなかったら吹き飛ばされていたぜ」


「次は私が射程外まで引っ張ります。その間にリカさんはリョウくんの回復を」


「おっけ~」


 みみみが再度匂い玉を投げつけると、再びT-REXはブレス攻撃の構えをとる。それを見ながら、アスカはブリーフィングでの信二の言葉を思い出す。


『ブレス攻撃は溜めが発生する。その間、奴は無防備。そして、弱点部位であるアゴに攻撃すればブレス攻撃は中断する。中断後は味方の位置関係上、必ずと言っていいほど尻尾攻撃がやってくる。これを躱すなり、受け止めるなり、なんらかの対象が必要になる以上、ハイリスクではあるが、相手の攻撃パターンを誘導しやすい。尻尾を切断できなかった場合のプランCとして覚えるように』


(あんたの作戦、深層クラスのボスに通じているわよ。だから戻ってきなさい、信二!)


 何度目かの下あごアッパーを決めたとき、それは起こった。みみみが匂い玉を投げつけても、ヘイトを奪うことができず、アスカに向かって巨大なクローが襲い掛かる。


(やばっ、逃げ切れ――)


 単純な作業で油断していたかもしれない。そのわずかな気のゆるみで、避けられたはずの攻撃が避けられない。自分の死が迫る中、黒い弾丸がT-REXの手を貫く。


「信二? それとも――」


 アスカが思わず弾丸が来た方を見ても、そこには誰も無い。恐らく、視認できないほどの長距離からの狙撃なのだろう。だが、意図していない狙撃で手をやられたT-REXはその痛みで混乱している。叩くなら今だろう。気持ちを切り替え、拳に力を込めて、T-REXに殴りかかるのであった。



「間に合ったみたいね」


 1kmほど離れた地点から、T-REXを撃ち抜いたエクステラ。その手には黒光りする長い銃身のスナイパーライフルが握られていた。


【EX-02の疑似再現モデル、うまくいったみたいですね】


(ああ、思った以上になじむ。やはり、剣より銃だな)


【いや~データ上は知っているとはいえ、EX-02そのものを使ったことは無かったので、再現するのに苦労しました】


 スコープをのぞき込む限り、T-REXの方は大丈夫そうに見える。となれば、メタルザウルスたちを倒したほうが良いだろうと、メタルステゴザウルスに標準を合わせて、引き金を引く。だが強固な装甲に弾かれ、ダメージは受けない。


「どんな装甲だろうと撃ち抜かせてもらうわ。【接続】発動、加速する弾丸(イグナイト・ショット)!」


 通常、銃から放たれた弾丸は空気抵抗を受けて失速する。だが、【接続】により引っ張られた弾丸は失速するどころか、加速していき、その速度を増していく。E=mc^2、速度が2倍になれば威力は4倍になる。つまり、遠ければ遠いほど加速できる期間は伸び、その威力は大幅に増幅する。そして、終点にいるステゴザウルスが狙撃に気づき、逃げようとも【接続】されている以上、回避は不可能。絶対命中の弾丸が【浸食】で脆弱になった複合装甲で覆われた頭部に食い込む。

 さらに追撃の銃弾が襲い掛かり、逃げようとしても、【接続】された弾丸は寸分たがわず全く同じ位置に着弾し、銃弾を押し込んでいく。3発、4発と押し込まれた弾丸が頭部を貫くのはそう遅くはなかった。


「まずはひとつ」


【山頂にワープホールがあったときは驚きましたね】


(それがメタルザウルスが山岳エリアを根城にした理由だろうな。発生原因を調べるつもりだったが、こちらも逆利用させてもらったおかげで挟撃できたのは幸いか)


「ふたつ。みっつ……」


 こちらの攻撃が通用するのであれば、ウスノロなメタルザウルスを対処するのは容易い。半日前までの苦労は何だったのかと思うほどにあっけなく、メタルザウルスをせん滅したエクステラだったが、他エリアの情報はまだ上がってこない。事情を聞くため、【日本橋冥土隊】との合流に急ぐのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ