第43話 100年前の因縁に決着を!
戦いの再開はカレンの炎が魔法少女に向かっていくところから始まる。巨大な拳が炎を消し飛ばし、もう片方の拳がカレンを襲おうとしたとき、神藤がそれを右手で受け止めるとその拳が消える。
「【習得】完了。その攻撃、そっくりそのまま返してやるよ」
左手から現れるのは魔法少女が放った巨大な拳。右手と左手、二つの拳が魔法少女を襲うも、デスサイズシックルで切り刻まれ、消滅する。
「そううまく行かないか」
「枠はいくつありますの?」
「救助用も含め、事前に4つ用意しておいたが、あのレベルの相手では役に立ちそうにないな。というわけで残る枠はあと3つだ。今から消そうにも丸1日かかるのが難点だな」
「ストックしても13日後には消滅。使い勝手が悪いですわね」
「そうか? 俺は結構気に入っているんだがな、この異能」
「異能は極めてこその強さですわ。我が宿命のライバル氷堂レイのように!」
「そっちが勝手にライバル視しているだけだが……」
「何を言っていますの!アリーナ戦の戦績はほぼ互角!これをライバルと言わずして何と呼ぶんですの!」
「無駄話はそこまでにしておけ。何か仕掛けてくるぞ」
「ウラヌスモードへ移行」
プルータスアーマーが分離し、リビングアーマー系のモンスターのように独立して動き始める。プルータスが砲撃を放ちながら接近してくる。死神の鎌の射程範囲に入ってしまえば、絶対必中の刃が襲い掛かる。
「そうはさせないよ!」
「ええ!」
「「十字翔!」」
赤と青、原作では無し得ない二振りの剣から放たれる十字の斬撃がプルータスに襲い掛かる。それに反撃するかのように死神の鎌が振りかざすも、弾き飛ばされてしまう。だが、プルータスの稼いだ時間で魔法少女の手には凝集した魔力が練られている。
「アースブレイカー」
「【習得】!」
神藤が右手を付き出し、魔法少女が放った広範囲消滅魔法を無力化する。だが、習得したことで、ストックが一気に2つも埋まってしまう。
「この魔法、燃費が最悪だ。こんなものを使ったらこっちが干からびる」
「それなら私の異能を使えば使えるかもしれないわ」
「犯罪者の手を借りるのは癪だが……お前の実力を見定めるいい機会だと解釈しておこう」
「ワタクシは結構。穢れてしまいますわ」
「でも、貴女のライバルは受け入れたわよ(チラッ)」
「ああ、彼女のバフ分、今の私はお前よりもずっと強い。はるかに強い」
「なんですって!貴女、ワタクシにも力を寄越しなさいませ!」
「素直になればいいのよ」
エクステラが彼らの肩に手を当てて、【接続】による魔力供給を始める。「ほう」と感嘆の息を漏らす。そして、エクステラが魔法少女の弱点とそれを利用した作戦
を伝える。
「分かった。時止めは先と同様に本人には破られるだろうが、リビングアーマーの動きくらいは止められるはずだ」
「道は俺の【凝固】で作ってやる!」
「時よ、凍れ!」
白黒の世界に移り変わり、数秒の間だけとはいえ、身動きが取れない魔法少女に向かって空気の道が作られる。だが、予想とは異なり、プルータスも色づき始めているが、一度破ったせいか魔法少女の復活は一度目よりも早く復活してくる。
「こいつでも喰らえ、アースブレイカー」
「マーキュリーウォール」
神藤が放ったアースブレイカーを水のバリアを犠牲にして耐え凌ぐ。だが、それこそが唯一の弱点。バリアを使ったことで視界を一瞬ふさいでしまった魔法少女の目の前には【加速】を利用して間合いに入ったカケルの姿が映る。
「次元斬!」
「次元斬」
魔法少女に上位技を放つ暇はない。互いに全く同じ技を放ち、吹き飛ばされる二人。そこに割って入りこもうとするプルータスに向かってカレンが赤い炎を凝集し形作った火の鳥を迎撃するために足が止まる。
「乱入とは……無粋な真似させませんわよ」
魔法少女が体勢を立て直そうとブレーキを掛けた時、背後に回ったエクステラが拳銃の銃底で後頭部を思いっきり殴りつける。
(あとはステラ、頼んだぞ)
それは一か八かの賭け。地上へと落下していく魔法少女を見下ろしながら、作戦が成功したかどうかを見守る。もし、失敗していたら二度目は無い。たった一度のチャンス。その結果を教えるかのように魔法少女がゆっくりと立ち上がる。
「魔力リンク解除。それにしても、この身体を使うのは久しぶりですね。こっから先は100%エミュ。つまり――」
誰にも聞こえないような小声でつぶやくと、くるりと回りだして決めポーズを取り始める。
「そう、私こそが世間を騒ぎ出している魔法少女ミキティープリンセス☆お星さまに代わってお仕置きよ!」
「「「「………………はあ?」」」」
「どうやら生前の意思を取り戻したようね」
実際はそんなことは無い。術者を倒さないとゾンビが再生・復活してくるのは力也ゾンビですでに把握している。ゆえに不死身。倒せない。だが、乗っ取ればどうだろうか? 相手の切り札は反転してこちらの鬼札に早変わりだ。
「いや、待て!あいつはネクロマンシーが蘇らせたゾンビで敵なんだぞ。そういう演技をしている場合だって――」
「私は死人を蘇らすことができるエクステラよ。今回は時間制限付きだけど」
「ひどいよねえ。後輩君たちに信じてもらうためにも一肌脱がないと。ヴィーナスラブ」
杖から放たれる金色の粒子がキラキラと降り注ぐと、仲間たちが受けていた深い傷跡がみるみるうちに治っていき、死に体だった赤羽と臼井が何事も無かったかのように目を覚まし、むくりと起き上がる。
「俺たち、死んだんじゃあ……」
「去年亡くなったばあちゃんがおにぎり作ってくれた……」
「なんてデタラメな回復能力なんだ!?」
「えへへ、これで少しは信じてもらえたかな」
「うぐっ……まあいい。余計な時間を食ったが、俺たちは国防軍の応援に向かう」
「だったら私もついていくよ。私を操って後輩君たちにひどい目に会わせた奴を放ってられないもん」
「そもそも君は竜東学園の生徒だったのか?」
「そんなわけないじゃん。野垂れ死にしかけた私が超絶エリート校に入れると思う?」
「だったらなぜ後輩と呼ぶのだ!」
「だって、私の後の時代の人間なんでしょう。だったらみんな後輩」
「意味が分からん」
「というのは冗談で。ただからかってみただけなんだよね」
「ふざけるな!」
「だって、私の後輩って呼べるのってエクステラちゃんだけだもん~」
「はあ~、こんなのが前任者ってのは頭が痛くなるわね」
「ひどくない!? ほら、二人は美少女!プリティーでキュアな感じでユニット組もうよ」
「しょうがないわね」
「というわけで一夜限りの夢のコラボ行きま~す!」
「昼間だけどね」
「細かいことは気にしない」
「さてと、100年前の因縁に決着を付けに行くけど、カケルと生徒会長さんは何かあった時のために地上に残ってくれないかしら?」
「分かった。僕たちでみんなを守るよ」
カケルたちを残し、Sランク級の探索者たちがミキティーが開けた穴を通って深層へと向かっていく。
一方、その頃。能力の使い過ぎでツルツルの禿げ頭になった鷲崎と手に持っていた銃を投げ捨てるリョウコ。ナイチンゲールも力を使い果たしたのか座り込む始末だ。
「もう魔力が残っていません」
「魔力切れか……よく持った方だな」
「こっちは弾切れよ」
「あとは徒手空拳。ガチンコ勝負ってわけだな」
「クカカカカ、勝負はついたも同然じゃな」
力也が超重力で攻撃手段の無い二人を捕らえ、手に持ったグラビティ―ブレードを構える。エクステラはいたぶる目的もあったせいか鉄パイプだったが、本人の意思の無いゾンビにそのような慢心は無い。リョウコの首を跳ねようと剣を振り上げた瞬間――
「アースブレイカー!」
力を調整したアースブレイカーが襲い掛かり、力也が肉片一つ残さず消滅する。突然の乱入者の前に鷲崎や視聴者たちも目を見開いて驚く。
【ファッ!?】
【仲間割れ?】
【操っているのあの爺さんだろ!?】
【若返っているけどな】
「魔法少女ミキティープリンセス、華麗に見参☆」
「……プリンセスエクステラ、見参。これ、やる必要ある?」
【wwwwwwwwwww】
【wwwwwwwwwww】
【大草原不可避】
【なにやってんだ】
【二人の決めポーズ、スクショしました】
【急にニチアサが始まったぞ】
【敵同士やろwww】
【俺たちの知らない間に夕日をバックに河川敷で殴り合いをしたのかもしれない】
【昭和かよwww】
【令和ぞ】
【一文字違いだからセーフ】
【爺さんも驚いて言葉出てないやんけ】
「馬鹿な、ワシのゾンビはワシの制御下にあるはず」
「美少女に不可能は無いんだよ。というわけで、100年前の落とし前、きっちりつけてもらうよ」
「ほざけ!ワシにはまだアンプルがある!これを使って、もっと多くのゾンビを!ぐぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
爺さんの顔に目が新たに4つ浮かび上がり、胴体はニョロニョロと伸びていき、手足は退化していく。口からは鋭い牙が生えていく。それは大蛇、人間の面影は一切残っていない。死者への敬意を忘れ、人としての心を失った者の末路としてはある意味相応しいのかもしれない。
「姿からして権天使級かしら」
「キタレ、天使ノ軍勢ヨ」
地面からボコボコと獣天使が湧いてくる。そのすべてが金色の輝きを失い、くすんでいることから彼らもまたゾンビなのだろう。さらにひと際大きな音を立てながら、ドクターが操っていたキマイラドラゴンも這い上がってくる。
「数は多いようですけど、ワタクシの敵ではありませんことよ」
カレンの炎が地上を舐めるように焼いていき、天使たちを塵一つ残さない。圧倒的な火力に視聴者たちも感嘆するしかなかった。
「コレバカリハ、使イタクハ無カッタノジャガナ。起動セヨ、智天使級!」
智天使級の女性の目に光がともり、拘束していた鎖がその手足から外れていく。そして、むしり取られていた箇所には黒い羽が生え、ドレスのような甲冑を身に着けていく。
「どうやら、それが最後の切り札のようね」
「コノチカラデ日ノ本ニ住ミ着ク寄生虫共ヲ排除シテヤル」
「寄生虫は貴方よ!」
互いに手札はさらけ出した。これ以上の奥の手は無い。後は実力勝負と意気込んでエクステラたちは最終決戦へと挑んだ。




