第41話 美少女♂vs美少女♀
「この施設は軍が押収する!大人しくしろ!」
「と言っても、誰もいないようね」
研究所の中はもぬけの殻だった。どうやら石破たちが戦っている隙に逃げたようだ。ただ、資料を全て持ち出す暇は無く、パソコンなどを手当たり次第壊してはいるようだが、これくらいならば時間はかかるモノの修復すればデータの吸出しは可能な範疇。残された資料を鷲崎が読むと、眉間にしわが寄る。
「……ビンゴだ。ここの連中は天使を素材に違法薬物を作っていたらしい」
【マジ?】
【天使を素材にねぇ】
【どっかで聞いた話だな】
【最初のコラボの時の研究所とそっくりな内装だし……エクステラ、これも……】
「そうよ。違法薬物を作ったのもドクター。事前情報によると、ここは薬物の生産工場と言ったところかしら」
【官僚C:ぎゃああああああああああああああああああ】
【官僚F:国の管理下で薬物作っていたとなると厚生労働省的にもやべえんですが……】
【官僚B:次はお前だ】
【官僚D:逃げられると思うなよ】
【日本終了のお知らせ】
【ドクター、てめえ!】
【そのドクターはエクステラが倒したから】
【みみみのことと言い、悲劇しか起こしてねえじゃねえか!】
【でも、ドクターが居なかったら、エクみみは生まれなかった】
【つまり、ドクターは恋のキューピッド?】
【ふ ざ け る な】
【や だ よ】
【おえー】
【誰だ、こんなコメント残した奴!】
【処す?処す?】
「さてと、ここは他の人に任せて私たちは原料の確保に向かいましょう」
「原料か……何が出るか楽しみだぜ。中佐にはここに残ってもらって資料の回収をしてもらう」
「承知しました」
【官僚C:全然楽しくないんですけどおおおお!】
【官僚B:返して。週末返して】
【返しているやん、楽しい週末やのうて終末やけど】
【wwwwwwww】
【草】
撮影者のみみみも含め、4人は研究所の地図とEX-06のマッピングを照らし合わせながら、原料保管庫のカギを壊して中に入ると、天使入りのカプセルが所狭しと並んでおり、職員と思われる男性が自死している。
「口を割らされる前に死んだか」
「生きたサンプル……ではなさそうね」
「ラベルによると力天使級のサンプルまであるわね」
「他に部屋は?」
「はい、この奥に地図に書かれていない大部屋があります」
「隠し部屋か。行くぞ」
どこかに隠し部屋に通ずるスイッチがあるのかもしれないが、探すのが面倒な鷲崎は壁を吹き飛ばして隠し部屋の中へと入っていく。無用の長物と化した警報がジリジリと鳴り響く中、彼らの目の前に居たのはむしり取られて片翼だけとなった女性タイプの智天使級が拘束されている姿であった。
「マジかよ。地上で暴れていたやつと同タイプがこんなところに居たのか!」
(女性タイプの智天使級だと!? ゲームにはいなかったはず!)
想定外の出会いに驚いていると、智天使級の足元から杖を突いて、こつこつと歩いてくる老人が現れる。こんなところに一般人がいるわけも無く、彼が『評議会』の一員、またはその関係者であることは一目でわかる。
「まさか『エクステラ抹殺計画』が軍の介入で頓挫するとは思いもしなかったわい」
「私を抹殺? ふふふ、あまりにもお粗末すぎて笑いが出るわ」
「俺たちが介入したと言っても、良いところは奪われちまったがな」
「まあいい。ここでワシが貴様らを倒せば、有象無象の戯言などもみ消せる」
【俺らのことか――!】
【官僚'sも見ているんだぞ】
【そうだ、そうだ。一般ピーポー以外も見ているんだぞ】
【なんなら天使さんのおまけ付きだ】
【熾天使:見ているぞ】
【官僚A:もうやだぁ】
【官僚B:逃げるなあああああ】
「俺たちを倒すっつても、よぼよぼの爺さん一人に負けるつもりはねえぜ」
「ふん。これを見ても、驚かんか」
地面から這い上がってきたのはかつてエクステラが殺したはずの谷重力也。いや、正しくは腐敗臭を漂わせているそれは彼のゾンビと行って差し支えない。
「ワシの異能は肉片一つでもあれば再生させ、操ることができるネクロマンシー。そして、これは研究されてきたアンプル。これを肉体に注入することで――はあああああああああああああ!!」
よぼよぼの爺さんの筋肉が膨れ上がれ、若返っていく。20代後半のマッチョな男になったところで変身が止まり、高笑いする。
「フハハハハハハハ!見よ、この肉体美!これがワシの本来の姿だ」
「はん、男の半裸に興味はねえよ。これがボインな子なら大歓迎だったんだがな」
【エロ大佐wwww】
【それ言う必要あります?】
【エロガッパwww】
【エロハゲタカwwww】
「ほざけ、小僧。アンプルにより、ワシの異能も強化されておる。普段ならせいぜいSランク級を一人しか蘇生できぬが、今はこの通り」
両手をかざすとさらにもう一体のゾンビが追加される。背負った杖と見覚えのある青白いビームソードを持った魔法少女のようなひらひらとしたピンクと白を基調としたドレスを着た少女を見た時、ステラが発狂する。
【アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああああああああああ!!】
(どうした!?)
【見間違えるはずがありません。あの子は……あの美少女は…………私が守らなければならなかった美少女です】
(まさか前任者の……)
【はい、間違いありません】
(ということは手に持っているのはやはりEX-01!ならばステラは杖の方か!)
「どうやらエクステラは気づいたようじゃのう。ワシが復活させた死者は生前装備していた物を持って復活する。もっとも、それらをワシらが手にした瞬間、土くれに戻ってしまうのが難点じゃな」
「あの魔法少女は私が対応するわ。重力使いの方は二人に任せる」
力也が超重力を放った瞬間、ステラが以前やったように重力を斬る。次元斬や過程を省力する斬撃はまだできないものの、この1か月でみっちりと訓練した成果が出る。力也の超重力が効かないと見るや否や、魔法少女が居合の構えを取り始める。
「居合斬・閃」
【そうはさせません!】
ステラに交代したエクステラが同じく過程を省力した斬撃を放ち、相殺。ついでのように力也が切られるも、再度復活する。防げるのはもう1回。しかも時を置かないと撃てない状況。
だが、魔法少女から見れば、同じ技を放てる敵でしかなく、当時はそのようなデメリットを持ち合わせていない。エクステラもデメリット無しで撃てると考えるだろう。楽して勝てる相手ではないと認識したのか、目線がエクステラに向けられる。
「真・瞬光斬」
十人に分裂した魔法少女が一斉に姿を消し、エクステラに10本の刃となって襲い掛かる。十の刃は【切断】の異能により、あらゆるものを切り裂く刃。そこに防御する術は無く、退路を断つ刃が同時に放たれることで回避することも不可能。
だが、エクステラが持つEX-08も劣化コピーとはいえ、【切断】の異能を持つ。それぞれの刃のぶつかり合いは相殺されるも、受け止めきれなかった刃がエクステラのスカートを大きく切り裂く。
「煌・十字翔」
(ええい、カケルの上位技をぽんぽん放つんじゃない!)
まばゆい光を放ちながら、向かってくる十字の斬撃。十字の斬撃から放たれている光の粒子をよく見ると、高速で丸ノコのように回転している刃であり、光を乱射することで光っているように見えている。つまり、この光すらも【切断】の異能の効果対象であり、防御不可の斬撃である。
これは避けざるを得ないエクステラは短距離転移で躱すが、そこに待ち受けているのは次元を跳び超え、転移中だろうと断つことができる斬撃。
「次元斬・極」
「……っ!」
運よく手にした剣に当たるも、大きく吹き飛ばされ、天井に激突する。天井にめり込んで身動きが取れない彼女に魔法少女は杖を向けて、魔法陣を描く。
「マーズレイ」
とっさに魔法障壁を張るも、【浸食】の前では意味をなさない。紙屑かのように破られ、砲撃魔法に飲み込まれてしまう。
「エクステラ!」
「Sランクを前によそ見をしている場合かのう?」
よそ見をした鷲崎に向かってグラビティボールが放たれるが、リョウコのライフルが相殺する。よそ見をしている場合ではないと自分に言い聞かせ、この厄介な相手をどうするか考えるのであった。
(相性がすこぶる悪いな。寝る前に用意しておいた保険が来てくれたら、巻き返せるんだが……)
砲撃魔法が止むと、そこにはいつものゴスロリ姿に戻ったエクステラが居た。だが、体中にある傷は彼女の受けていたダメージを深刻に物語っていた。
【向こうの浸食はオリジナルの私がいるので防げますが……勝ち目あります?】
(今の俺に手札は無い。ならば逃げるしかない。運よく逃走経路はあるわけだからな)
「ここだと狭すぎるわね」
エクステラが天井に空いた穴を使って地上へと向かっていくと、魔法少女も追撃するのであった。




