第39話 無敵の連携
【死んだ!?】
【あんな先制攻撃あり!?】
【モンスターからすれば、あそこから敵が湧いてくるわけだから陣取るのは当然といえば当然だけど】
【リスキルやんけ!】
【下層であんなの喰らったことねえぞ】
【下層と深層で危険度違いすぎる】
だが、そこは場数を踏んでいる鷲崎。とっさにミサイルの爆風でマグマを吹き飛ばし、窮地を脱する。
「ふう、とんでもねえ挨拶かましやがって。どこの誰だ?」
爆風が晴れた先に居たのは真っ赤な熱を帯びた霧状のモンスター。火属性のミスト系モンスターでも上位種のマグマミストである。
【ミスト系は下位種でもやべえのにここで引くのか】
【どれだけヤバいの?】
【弱点属性のみ有効。単純な物理攻撃も含め、他属性は完全無効】
【魔法で倒せば良いじゃん】
【これが通常モンスターなんだぞ。魔法バンバン使ったら魔力もポーションも枯渇するわ】
【今回はショートカットもしたから、その分の余裕はあるはず】
コメント欄で解説しているうちに自衛隊が水や氷の魔法を使い、マグマミストを冷却させて、その熱を奪っていく。反撃しようと再び口からマグマを吐き出すも、弱っていることもあって鷲崎のミサイルで再び押し戻されてしまう。
「何とかなったな。ナイチンゲール、回復だ」
「はい。禿鷹と呼ばれないようにしましょうね」
「誰が禿鷹だ。ったく」
【wwwwwww】
【定着しつつある禿鷹大佐】
【うちの国のエースやぞ】
「さてと、六花。この階層のマッピングは終わった?」
「はい、エクステラさん。無事、終わりました」
空中モニターにこの階層の地図を見せる。それは信二の知るゲーム中のマップとほぼ一致している。ただ違うのは1点のみ。それは7章以降でないといけない通路だ。
「この場所に行きたいわ」
「行き止まりですよ? 国土交通省発行の地図とも相違はありません」
「近くで探査すれば何かわかるかもしれない」
「……へえ、打ち合わせ通りならそこに大物がいるってわけか」
【大物?】
【RTAだから、そこの床を潰せばボス部屋に繋がるとか】
【ありそう】
【深層1階層のボス無視できるのは美味しい】
【ランダムに出る分事前対策がキツイんだよな】
【メンバーに拡散しなちゃ】
【なお、行けるメンバーは限られている模様】
【まあ、深層だしな】
【じゃあ、深層のボスを知っているようなコメントをしている人たちは……】
【我が国のトップエースたちでございます】
【深層行けそうなの御三家だけだろ】
湧いて出てくるマグマミストや下層ボスだったレッドオーガやブルーオーガを倒しながら進み、例の行き止まりまでやってくる。
「この先に通路が無いか調べてくれる? 人工物かどうかも合わせて」
「分かりました。スキャン開始……」
六花が壁に手を当てること数分。眼を閉じて集中していた六花がハッとした顔で見開く。
「ビンゴか?」
「はい。巧妙に隠蔽されていますが、確かに通路があります」
「サーチ系魔法に引っかからないようジャミングかステルスが施されているわけね」
「その通りだと思います。私でも近くまで来て集中しないと違和感に気づけないレベルです」
「ってことは、ここを破壊すれば道は開かれるってわけだな。中佐、戦車を出せ!俺の10万本フルパワーのバンカーミサイルと合わせてここを突破する」
「私たちは粉砕作業をしている間、後ろを守ります」
「おう、背中は任せたぜ。ナイチンゲール、景気よくぶちかますぞ」
「承知しました」
「なら、私は大佐さんの強化でもしようかしら」
エクステラが鷲崎の肩に触れて接続する。そのあふれてくるような未知の感覚に驚嘆する。
「これがお前さんの力って奴か。確かにネットで言われているような活性化系の異能っぽいな」
「それはどうも」
鷲崎が壁に向かって戦車と共に巨大なミサイルを発射する。その絶大な火力は分厚い岩盤すらひびが入り、砕け散っていく。
(おいおい、下手すれば数倍。いや、それ以上の威力があるじゃねえか。人類が無し得なかった蘇生にギネス記録すら凌駕するバフ能力、こりゃあ上層部も欲しがるわけだ)
それと同時に危険性もわかる。もし、エクステラがこの力を悪用したらどれだけの被害が出るか想像したくもない。短い期間とはいえ、一緒に行動して分かったのは彼女が目的はどうであれ、善性をもって力を奮っていること。根からの悪党でなかったことに安心する。
(少なくとも上層部の連中に渡すよりも、このままエクステラに持たせた方がまだマシだな、これは。死んでなかったら何でも治せるナイチンゲールも含めて、あまりにも戦局を変えすぎる力だぜ。EXナンバーってのはよ)
そう思いつつ、何発もミサイルと砲撃を放っていくと、岩盤が崩れて通路が開く。この通路は地図にも描かれていない未知の通路。本来ならば、人工物などあり得ない場所。だが、その通路の先を進むと駄々広い場所にヒカリゴケで照らされた研究所がぽつりと見える。
【ダンジョンの中に建物!?】
【深層だぞ、ここ】
【国の許可なしで立ち入りできない場所に建築なんか――】
「というわけで、亀北ダンジョン攻略RTA、改め――突撃!隣の秘密研究所vol.2をお送りします(ヤケクソ)」
「てめえら、官僚の不始末を俺たち軍が拭くんだ。覚悟しとけよ」
【官僚D:いやあああああああああああああああああ】
【官僚E:ぎゃああああああああああああああああ】
【官僚B:深層案件ってことはウチ絡みだ……オワタ】
【官僚A:これから私、特に理由ないけどアメリカに行きます。探さないでください】
【官僚C:逃がさん、お前だけは】
【仲良死】
【官僚たちの嘆きが聞こえる】
【日本の株価また下がるか】
【山手線また止まるな】
【土曜日で良かったね】
【エクステラのやつ、そこまで考えて……】
「へえ、君たちが僕の対戦相手なんだ」
「相手が軍だろうが自衛隊だろうがぶっ壊してやるよ」
研究所から来たのはたったの二人。一人は小学生くらいの男子。もう一人はパンクな恰好をした男。二人とも目つきは悪く、助けを求めに来たような顔ではない。
「誰だ、てめえら」
「ニヒヒヒヒ、そうだね。冥土の土産に名乗ってあげるよ。僕は影山アキラ」
「俺は石破 淳。まあ、名前なんざ覚える必要はないぜ。ここで全員ばらすからよ」
「たった二人で全員を、だあ? ふざけるにもほどがあるぜ」
「にひひひ、なら、シャドウ。一番後ろの奴、殺して良いよ」
「まずい!」
シャドウの名前を聞いたエクステラがとっさに後ろを振り向くと、そこは血しぶきを上げながら首が飛んだ自衛隊員とその後ろに忍者の格好をした中学生くらいの少年が居た。その少年の手には血塗られた忍者刀があり、彼がその下手人であることを示す。
彼の存在に気づいた自衛隊員が手にした剣やナイフで襲い掛かろうとしたとき、岩場の影に潜り込み姿を消す。そして、今度は天井から苦無を投げつけ、彼らの首元を的確に突き刺し、殺す。
「他愛も無い。自衛隊と言えども所詮はこの程度か」
「おいおい、影山。俺の分も残してくれよな」
「にひひひ、やだね。これはゲームなんだ。僕と君、どっちが多くの敵を倒せるかっていうね」
「そういうことかよ。良いぜ、そのゲーム、乗った!」
【なんなんだ、アイツら】
【仮にも下層を楽々突破できるレベルの人間をいとも簡単に……】
【エクステラと同じ暫定Sランク級の探索者ってことか!?】
【ゲーム脳な奴と同じ扱いにしないでほしい】
「EX-03シャドウ。【潜航】のスキルであらゆる影の中に潜りこめる奇襲のエキスパートよ」
「EXナンバー、俺のナイチンゲールや自衛隊の六花と同じ人型EXギアか!」
「左様」
「どこから情報が漏れたのか興味があるらしくってね、君だけは生かしてあげるよ」
「それ以外は俺たちがぶっ壊す!」
「だったら容赦はしねえ!総員、攻撃開始!捕縛とか考えるんじゃねえぞ。殺せ!」
国防軍の銃弾、自衛隊の炎や氷の槍が飛び交っていく。当たれば間違いなく致命傷。シャドウは影の中に潜むも、人間二人は逃げる素ぶりさえ見せない。
ところが、石破に当たった攻撃は砂のように分解され、ダメージを受けた様子すらない。その一方で、眉間に銃弾を受けた影山はまるで実体がなかったかのように消える。そして、岩陰からうにょりと影山が現れる。
「どういうことだ?」
「シャドウのマスターの異能、【人形】。影をゴーレムに変える能力よ。本物は何処かにいるはず」
「にひひひ、良く知っているね。だけど、こういうことができるのは知っているかな?」
影山が指パッチンすると石破が数十人ほどに増え、襲い掛かる。それに対応しようと自衛隊員が前に飛び出し、斬り付けるも偽物のゴーレムは一撃で消える。
「おっと、運が悪かったな。俺は本物だ。【分解】発動」
本物を切り付けた自衛隊員が砂となって跡形もなく消える。触れたものを物理・魔法関係なく分解する。それが彼の異能だ。さらに、増えた分身にも影があるため、シャドウのテレポート先が大幅に増え、死角から一撃必殺の刃が飛び交う。
「数は君たちの方が少し上かもしれないけど、こっちは無限にゴーレムを作り出せる」
「てめえらに勝ち目はねえんだよ!」
彼らのチームワークに自衛隊員は為すすべなく、次から次へと倒れていくのであった。




