第20話 新コスチューム
【HELLO、ハロー、起きてますか?】
「…………うるさい」
【ひどい言われようですね。元々が死体に【接続】して生きているようなもの。無意識下とはいえ、必死に【接続】してくれたおかげで即死から数秒でも生きてくれたので、こちらの【浸食】による身体の修復が間に合いそうです】
「それは良いが」
【ちょっと褒めてくださいよ】
「確かめたいことがある。即死の攻撃からでも生き返られるということは、俺は不死身になったということか?」
【そんなわけないでしょう(真顔)】
「冷静に否定されるとそれはそれで傷つくんだが……」
【相手が剣をさっさと引き抜いたからセーフでしたけど、あと1秒でも突き刺していたら修復が追い付かず、接続が切れます。そんな妄言を吐くくらいなら、こんな無茶、二度としないでくださいね。美少女が死ぬところは二度と見たくないんです】
「ああ、分かったよ」
【というわけで、私に体のコントロール権を下さい。あんな奴、さっさと片付けてやりますとも】
「できるのか?」
【ええ。浸食率を30%くらいまでくれれば、私がエクステラの身体を使うことができます。許可はいりますけどね】
「分かった。俺とアイツとの相性は最悪のようだ。一度敗北した俺より、勝てる自信があるお前に賭けたほうが良い」
【まあ、あんな卑怯な手を使った時点であの男の負けですけどね。似非ヒップホッパーを倒しましょう】
「そうだな。撃って良いのは撃たれる覚悟ある者だけだ。だが、アイツは撃たれる覚悟の無い者を撃った。ステラ、この言葉を忘れずにどんな手段を用いてでも必ず勝て!」
【もっと美少女に!アイ ハブ コントロール!】
「なんDA、あの光WA?」
落下していくエクステラの死体が突如光りだし、力也は疑問の声を上げる。
グラビティブレードは殺傷能力だけでなく、突き刺したモノの中で無秩序な重力場を発生させる。エクステラの臓器や骨や筋肉はかき乱され、生存は不可能。文字通り必殺の一撃を喰らっても、生きているとは到底思えない力也はその場に立ち尽くすしかなかったのだ。
そして、光が収まると、そこには伊達メガネを掛け、黒いセーラー服を着た委員長風のエクステラが立っていた。化粧もそれにあわせて、ゴスロリ服の時よりは薄くなっている。
「これより行うのは星の裁き。エクステラ、戦闘形態!」
「バトルモードだと。いままで手加減していたとでも言うのかYO!」
「ええ、そうよ。ここから行われるのは一方的な蹂躙よ」
エクステラが手にしたのはひかりと対になるような赤黒い刃を持つビームソードであるEX-08。それにステラは自分の知っているデータをインストールし始める。
「銃が駄目なら剣ってかYO。だがな、超重力の前にお前は動けないことを忘れたのかYO!」
眼下には市街地が広がる中、超重力を使えば甚大な被害が出るのは想像に難くない。エクステラが民間人を守ろうと撃たれる前に接近戦を仕掛けることを見越してのカウンター狙いなのだろう。だが、エクステラは動こうともしない。
(どんな方法を使ったのか分からねえが、あれだけの怪我の治療を施したんなら魔力は枯渇しているはず。動く気配も無いのが何よりの証拠DA。衣装替えはただのハッタリだNA)
そう思い、力也が手を振りかざすのと合わせるかのようにエクステラが剣を振り上げる。そこにはエクステラが超重力にひれ伏す姿も無ければ、押しつぶされる建造物も無い。
「どういうことだ……?」
「簡単な話よ。超重力を斬っただけ」
「何を言ってやがる。重力だぞ、重力!重力が切れるはずがねえ!グラビティボール!」
内部が高重力のグラビティボールがまるで豆腐のように斬られ、消失し、こちらへと向かってくる。だが、相手が持っているのは剣。リーチさえとれば戦いようはあると、自身へかかる重力方向を変え、猛スピードで逃げながらの引き撃ち。
(奴は民間人を守るためにグラビティボールを全部斬るはず。こうやってばら撒けば、隙の一つくらい……)
6つほど同時に放ったグラビティボール。それらを全て切ろうと思えば、背中を見せるはずと思い、手元に一つだけ残している。だが、エクステラはその思いに反して、刀身を消して構える。それはまるで居合のような構え。そして、射抜き、赤黒い刀身を再び見せた瞬間、6つのグラビティボールが同時に斬られる。
「馬鹿な、動くことすらも無く6つのグラビティボールを同時に切断しただと!?」
「誰が6つだけだと言いましたか?」
「まさか……」
力也が右手でキープしているグラビティボールを見ようとした瞬間、右手がずり落ちる。しかし、痛みは無い。それどころか血が一滴も出ていない。まるで体が切られたことすら把握できず、元からこのような身体であった認識しているようにさえ思える。
「ありえねえ、こんなのありえねえだろうがああああ!!」
力也に余裕はない。眼下に見えた呑気にこちらを撮影している女子高生を襲い、グラビティブレードを喉元に押しつける。
「動くんじゃねえ。もし、一歩でも動いたらコイツを殺す!」
「随分と吠えるわね……この負け犬」
「うるせえ、その武器を捨てろ。でないと殺す!」
「た、たすけて……」
「分かったわ。もう必要ないし」
「あん、何を言っている?」
「だって、貴方、もう死んでいるもの」
「何を言ってやがる。右手斬られただ――」
力也が反論しようとしたとき、口がうまく動かない。なぜだろうかと思い、手を動かそうにも体の自由が利かなくなっていることに気づく。そして、急に体のバランスが崩れ、彼の最期の視界に映ったのは細切れになった彼の身体。いつ斬られたのかさえ分からぬまま、力也は意識を手放すのであった。
「私に勝ちたいなら、Sランクをダース単位持ってくることね。大丈夫? ケガはない?」
エクステラが人質になった女子高生に手を差し伸べようとした瞬間、化け物でも見たかのような目をし、すぐさま逃げ出す。
「お礼くらい言ってほしいんですけどね~まあ、劣化【切断】使ったとはいえ、100年前なら生かしたまま切り殺せたのに、あの傷だとせいぜい3日程度しか生きられませんし、人質戦術まで取るようならさっさと認識させて殺したほうが良いでしょう」
もはや原作とはかけ離れた展開になっているとはいえ、宿主の意向を組んできれいさっぱり元の状態に戻すことは忘れないようにしようと思いながら、EX-08をしまう。任務を遂行したことで人格を入れ替え、元のエクステラに戻る。
【どうです? 私の圧勝でしょう。被害も出ていませんよ】
(……あの居合い、一体何をしたんだ?)
【めんどくさくなったんで斬っただけですよ。『斬る』という過程を】
(まさか、居抜いた瞬間、斬ったという結果だけが残ったとでも?)
【YES!頭の回転が速くて助かります。もっともこんなの魔力消費が激しすぎて、今の浸食率だと私しか使えませんし、連続で打てないうえに、出せて1日2回くらいですね】
(どうりで疲労感があるわけだが、十分おつりがくるレベルだな……)
【ってことは?】
(場合によっては、今後もお前に戦ってもらうパターンもあるということだ)
【ワーイ!W美少女パワーで戦いましょう】
「そうね。こっちは片付いたことだし、向こうと合流しましょう」
エクステラが竜東学園に転移し、力也だった肉片だけが残されるのであった。




