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ゲーム世界へ転生したモブ♂、死ぬ未来を回避するために美少女(偽)になる  作者: ゼクスユイ


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第19話 夜中の侵入配信

(あのとき、ああは言ったけど、サキ、大丈夫かな?)


 翌日、そんなことを思いながらカケルが自宅にいると、チャイムが鳴る。マスコミか何かと思いながらも、玄関をそっと開けると、そこには信二が立っていた。


「昨日は大変だったみたいだな」


「大変ってところじゃないよ。サキが大変な目に会って……」


「ああ、そのサキのことなんだが……ある人物からメッセージを預かっている」


「ある人物って?」


「当然、エクステラだ」


「なんで信二君がエクステラの!?」


「声が大きい。何度も同じことを言うのは面倒だからアスカたちも呼んでくれないか?」


「分かった。とにかく家に上がって!僕の部屋は2階の右の部屋だから」


「承知した」


 カケルの部屋に入ったとき、バン!ドン!と大きな音がしたので、後ろを振り向くとそこには鬼のような形相をしたアスカが信二の肩をつかんでぶんぶんと揺らす。


「アンタ、どうしてエクステラとやり取りしているのよ!」


「ちょっと待て!その話もするから、少し待て!」


「ああん!」


「アスカさん、喧嘩は駄目ですよ~」


 ジュースを持ってきたひかりが慌ててアスカを止めようと抱き付くと、興奮したアスカも少し頭が冷えたのか、信二から手を離してリョウが来るのを待つことにした。

 それから十数分後、リョウがやってきて早速、信二に質問する。


「来たけどよぉ、なんでエクステラの連絡がお前に来るんだ?」


「前、校舎裏で金ぴか獣と出くわして殿として残ったことだがあるだろ」


「嫌なこと思い出させるなよ」


「そのとき、エクステラにあったことは話したな」


「うん。助けが来なかったからやばかったんだよね」


「戦った私から見てもあの小ささで頭以外有効打にならないのはヤバイわ。まして信二の火力じゃあ話にならないわ」


「ああ(俺の火力は【浸食】ありきだからな)、そのとき、『またこの学校に現れるかもしれないから』と言って連絡先を貰ったんだ。もっとも、明らかに捨て垢だし、こちらからメッセージを送っても返事はないがな」


【ちなみにメアドは美少女である私が海外のサーバーをいくつか経由して作ったので足が着くことはありません】


「って、ちょっと!また現れるって話、本当なの!? なんでそんな重要なこと黙っていたのよ!」


「声がでかい。仕方がないだろ。お前たちは何度かあっているのかもしれないが、こっちは初対面の怪しい女の話、信じろというのが無理な話だ」


「……それは分かる気がする」


「初対面で死ぬぜって言われたしな、俺たち」


「あったね、そういうの」


「まだ2か月前なのに遠い出来事のように感じるわ。って、そんなのは良いとして、肝心のメッセージは何よ」


「書いている内容をまとめると、サキは目を覚ましたらしく、今は精密検査をしているそうだ」


「よかった~」


「本当にね。でも、モンスターになっているとき、思いっきり殴ったけど大丈夫だったの?」


「外傷はなく、モンスター時の記憶はないと書かれていたな。あとは精密検査の結果次第だ」


「余計ないざこざにならなさそうでよかった」


「そうとも限らんぞ。メッセージの続きにこのままではサキが遊園地テロの冤罪を受ける可能性があると書かれている」


「なんでだよ!」


「事情を知らない一般人からみれば、サキがモンスターに変身して客を襲ったように見える。改造した連中からすればこの上ない状況。しかも休日の遊園地。動画を撮っている人が居れば一発でアウトだ」


「今は救助の様子が報道されているけど、それが終われば犯人捜し。そうなったら、無実の証拠をつかんだとしてもサキの名誉の回復に何十年もかかるわ」


「なんでそうなるんだよ。俺たちになんかできることは無いのかよ」


「……これを伝えるべきかは正直迷った。だが、教えないことは彼女への不義理になるだろう」


「何か方法はあるの?」


「エクステラの最後のメッセージだ。サキの完全無罪を立証する方法。つまり、サキを改造した連中の施設へと忍び込み、違法実験のデータを公表する」


「えっ、それって犯罪じゃない!」


「犯罪でも何でもやろうぜ。このままだと、サキが濡れ衣を着せられるんだろ」


「リョウ、落ち着いて。仮に僕たちが実験データを手に入れたとしても、信用してもらえるの?」


「何の実績もない俺たちがデータや動画を上げたとしても信用してもらえないだろう。だから、Dtuverのみみみの生配信を使うらしい」


「迷惑系の?」


「確か、宝箱に爆竹入れて驚かせたり」


「ダンジョンの看板を左右入れ替えたり」


「曲がり角で驚かせたりするのよね。私、ああいう子嫌いなんだけど」


「(成り行きで選んだだけなんだが)俺が選定したわけじゃないから、文句はエクステラに言ってくれ」


 作戦の詳細を離した後、いったん解散し、夜になるのを待つのであった。



 その日の21時すぎ、竜東学園前でみみみはエクステラから渡されたツトム特注の配信用のカメラを回していた。


「こんちゃーす、みみみでーす」


【待っていた】


【こんちゃーす】


【今日は何するの?】


【コラボって書いてあったけど?】


「ふふふ、誰とコラボするか知りたい?」


【早く見せろ】


「しょうがないな。ではご登場してもらいましょう」


「途切れた雲から星が見えるように、たまには姿を見せましょう。ゲストのエクステラよ」


【マジ!?】


【さすがにそっくりさんだろ】


「私が偽物かどうかは私の活躍を見てもらえばわかるわ」


【見せてもらおうか、Sランク級の実力とやらを】


【ところで後ろの怪しい3人組は?】


 エクステラの後ろには目元だけを開けた仮面をつけた謎の3人が映っていた。髪型や体格で一人は女性だと言うのは分かるが、どこの誰なのかは男女含めてわからない。


「此度の協力者。名前はベガ(アスカ)、デネブ(リョウ)、アルタイル(カケル)よ」


【夏の大三角形www】


【七夕はもうちょい先やぞ】


【もうちょいマシな名前なかったんかい】


【星好き少女やからしゃーない】


【ところで何をするんだ?】


【この近くのダンジョンだと――】


「(本当に大丈夫なんだよね)今日は夜の竜東学園に忍び込んじゃいまーす」


【通報案件じゃねえか!】


【通報した】


【↑それはしゃーない】


「よーい、スタート!」


 ドカンと校門を吹き飛ばして、警報機が鳴り響くと同時に中に入るみみみたち。「忍び込むとは?」と視聴者を置いていく中、今は使われていないグラウンドへと向かう。


「このように空間感制御技術の発達で竜東学園の校舎内に広大なグラウンドがあるから、地上のグラウンドは鍵がかかっており、誰も使っていません。というわけで爆破」


【草】


【警備ロボットが湧いてきたぞ】


「ここは僕が、飛翔斬」


 ビームソードを持ったアルタイルが警備ロボットをスパスパと飛ぶ斬撃で一掃していく。そして、グラウンドに侵入したエクステラがグラウンドの中央に向かって黒い弾丸を放つ。


「さあ、闇夜を照らす星々の下、真実の姿を見せなさい」


【空間にひびが!?】


【まさか結界!?】


【現役生:知らないよ、そんな結界!】


【現役生が知らないってどういうことだよ!】


 コメント欄が阿鼻叫喚している中、数発の弾丸で射抜かれ、【浸食】により効果が薄れて、崩れ落ちていく迷彩結界。そこに現れたのは校舎くらいはあるであろう建物。だが、外見だけでは判断できないのがこの竜東地区。中は東京ドーム何個分なんて可能性はいくらでもあるのだ。


【OB生:知らないよ、そんな建物!?】


【悲報:現役、OB生、自分の学園内の建物も知らない】


【あのー、これって俺たちが見て良い奴?】


【誰も知らない建物がある時点で税金逃れ、ぜってーしているだろ】


【みんな、竜東学園に凸れー!】


【祭りじゃあああ!】


「ははは、まだまだだよ、野郎ども―!一気に行くよ!(なんとかなれー!)」


「おっと、そうはさせないぜ」


 みみみたちが声をした方を見上げると、そこには色黒でドレッドヘアーのこわもての男が宙に浮いていた。


【OB生:あいつは谷重 力也!】


【知っているのか、OB生!】


【珍しい不良だったのもあるけど、俺たちの代のSランクだ!一緒に過ごしたんなら、覚えていない方がおかしい】


「HAHAHA、俺様もいつの間にやら有名人になっちまったようだZE」


「みみみ、ベガたちを連れて中に入りなさい。ロックは解除しておいたわ」


「分かった」


 みみみが三人とカメラを連れて、隠し施設の中へと入っていく。そしてエクステラを取り囲む警備ロボットと力也がグラウンドに取り残される。それを見た力やが邪魔と言わんばかりに手を振り下ろすと、周りの警備ロボットが一瞬にして地面にへばりつく。


「あら、私を逃がさせてくれるのかしら」


「思ってもいないことを言うなYO。俺はお前とタイマンで殺し合いをしたいだけだZE!グラビティプレス」


(……っ!? プールしている魔力を全て肉体強化に!)


 エクステラの身体に超重力がかかり、周りの地面が陥没すると同時に普段使用していない魔力リソースを肉体強化に回す。だが、それだけではこの超重力下では動ける程度であって、戦えるほどの余裕はない。だが、エクステラはそんな焦りを見せず、何一つ顔色を変えない。


「8Gの重力下でも屈しないとはNA」


「星を落とすつもりならこの倍はもってきなさい」


「言葉に甘えて俺の全力全開だZE!これが16G☆D☆A」


(まずい、これでは一歩動かすのでさえやっと……)


 エクステラが比較的軽い拳銃に切り替えて、力也に銃口を向けようとするも、ガクリと銃口が下がり、真下をむく。これにはさすがのエクステラも顔色を悪くする。


「HAHAHA、これが俺のグラビティワールドDA。ネット上でSランク級ともてはやされているようだが、これが格の差ってやつDA。Sランクの看板に泥を塗った罪、一思いには殺さないZE」


 EXギアから鉄パイプを取り出し、素振りをするかのようにぶんぶんと振り回しながら降りてくる。ニチャつきながら歩き、エクステラの前に立ち鉄パイプを振りかざそうとした瞬間、エクステラが発砲。それとほぼ同時に上空から力也の腕が打ち抜かれ、鉄パイプを手放す。


「いだああああ、てめえ、何をしやがった!」


「撃ったと同時に転移させたのよ。超重力で超加速した弾丸をね」


【一度銃口を向けてわざと振り下ろしたことで、相手からは銃は使えないと思わせて意識をそらしたのが功を奏しましたね】


(銃なんて必ず意識するものだからな。転移用の魔法陣をいくら小さくしても、意識されたらバレる。こんなのは一度きりの奇策だ)


 そして、不用意に近づいてくれた力也に向かってすかさず銃弾で返答する。超重力ですぐ地面に落下すると思っているようだが、すでに力也の体にヒットした以上、【接続】でつながっている。超重力に逆らないながらも、彼の足を貫く。


「ぐああああ!」


「確かに格が違うわね。私と貴方とで」


「てめえ、よくもこの俺様に恥をかかせやがってえ!!グラビティボール」


 力也が手元から黒い球体を放つと同時にエクステラにかかっていた超重力が消える。一気に体が軽くなる。そうなれば、肉体強化を最大までしていたエクステラにとって鈍重ともいえるグラビティボールを回避するのは容易だ。


(なぜ、超重力を……? 攻撃に転用する場合は併用できない縛りがあるのか)


 仮にその縛りがあったとしても、超重力を解除するデメリットと釣り合っているのかと言われると正しいとも言えない。

何しろ、こちらは身動きがほぼ取れないのだから、距離を取って応援が来るまで待てばいい。なんなら、エクステラの無力化自体は成功したとさえ言える。それすらも捨てるとは、何が狙いなのだと思考を巡らせていると爆発音が聞こえ、まさかという最悪の考えに至る。


「この攻撃は私を狙ってではなく――」


「そうだ、おめえの後ろにある高層ビルを狙ったのSA」


(飛行魔法は得意じゃないんだが――!)


 マシンガンに切り替え、ねじ切られて真っ赤な炎を出しながら崩れ落ちていくビルに向かってロケットのように飛ぶ。夜とはいえ、営業している店も少なからずある。しかもビルが密集しているこの地域なら、一つビルが倒れればドミノ倒しになる危険まである。


(ええい、一か八か……繋がれ!)


 崩れ落ちたビルの上部が隣のビルに持たれるかのように倒れようとしたところに着弾し、逆再生するかのように倒壊したビルの下部とくっつき始める。

 ビルの崩壊をぎりぎりで防げで一安心したところに、エクステラの左胸から刃状のものが突き出る。


「ヒャハハハ、どうだグラビティブレードの味は? まあ、心臓付近の臓器をねじ切ったから即死でしゃべることもできねえだろうがな!」


 力也は建物に侵入しようとした敵を排除しようと、突き刺した刃をさっさと引き抜き、物言わぬ死体に成り下がって落ちていくエクステラを見下げるのであった。

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