第97話 ヴェラからの手紙
ヴェラから手紙が来た。
いつもより長かった。
「レンへ。
院の調査への協力が終わった。報告する。
シェードは全部話した。俺が知らなかったことも出てきた。組織は俺がいた時代より以前から、もっと広く動いていた。でも、シェードが話したことで、記録が残った。消えた記録の目録と、消した理由と、誰が関わったかが、今は院の資料になった。
逆説的だが、百年間消えていた記録の「消えた記録の目録」が残ったことで、消えた記録の存在が証明された。カイの記録が消えたことも、シェードの証言として残った。
俺自身のことを話す。
院の調査で俺のことも全部話した。俺がしたことと、しなかったこと。処分は院が決めるが、証人として話したことは院が記録した。
それが終わって、少し軽くなった。
俺はこれからどこかに行く。院の調査が終わったら、ネベルにいる理由もなくなった。どこへ行くか決めていない。でも、どこでも生きていける気がする。今は。
お前のことを最初に見たとき、何の力もない子どもだと思った。失礼な話だが、正直にそう思った。
でも違った。お前は記録帳を持っていた。記録帳を持っている人間は、何かを持っている。
カイも記録帳を持っていた。カイを消そうとしたシェードも、結局自分で記録を取っていた。記録する者は、消えない何かを持っている。
ヴェラ」
俺は手紙を読み終わって、少し窓の外を見た。
「ヴェラさんから手紙です」とベルに言った。
「どういった内容ですか」
「調査が終わった、という報告です。あと——」
「あと?」
「記録帳を持っている人間は消えない何かを持っている、と書いてありました」
ベルが少し考えた。
「ヴェラさんらしい言い方ですね」
「そうですね」
返事を書いた。
「ヴェラさん。手紙をありがとうございます。調査への協力、ありがとうございました。
どこへ行くか決めていないと書いていました。決まったら教えてください。手紙を送れる場所があれば、送ります。
一つだけ。ヴェラさんが旅の途中で合流してくれなければ、俺はここまで来られなかったと思います。ネベルの記録も、シェードの組織のことも、ヴェラさんがいなければ分からなかった。
ありがとうございました。レン」
送った後で、また窓の外を見た。
ヴェラはどこへ行くだろう。旅の合流もロットに比べれば静かだったが、いなくなるのも静かだ。
でも、あの旅の四人がいたから、今がある。
記録帳に書いた。
ヴェラから手紙が来た。調査が終わった。これからどこかへ行く。
旅で一緒だった人たちが、それぞれの方向に動いている。ロットは工房を作る。クロウは院にいる。ヴェラはどこかへ行く。
補足に書いた。
「繋がりは続いている。場所が変わっても。それが記録帳と手紙が教えてくれることだ」




