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星図師は空の欠けを知っている  作者: ごま
第三部:星の記録者

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第96話 ロットの計画

 ロットが「相談がある」と言ってきた。

 珍しかった。ロットが相談してくることは多くない。言う前に動いていることが多い。

「どうぞ」

「工房を作ろうと思う」


 静かな宣言だった。ロットにしては静かだった。

「どこに?」

「ここではない。でも遠くでもない。エスタかネベルの間くらいかな。あそこは旅打ちが通りやすい場所で、若い星図師が一人でいるには場所が良い」

「一人でやれますか」

「一人でやったことはある。旅打ちで世話になりながら各地を回るより、場所があった方が良いことも出てきた。手紙を受け取る場所が必要だと思い始めた」


「理由があったんですね」

「失星図の件で、各地から問い合わせが来た。ロットに聞けばいい、と思われるようになってきた。でも、俺が一か所に長くいないから、手紙が追いかけてくる。これは不便だ」

「それは確かにそうです」

「拠点があれば、手紙がそこに来る。俺が旅をしながら定期的に戻ることができる。完全に定住するわけじゃない。旅打ちのスタイルは変えない。でも、戻る場所を作る」


「ガルト師匠に相談しましたか」

「した。昨日」

「何と言いましたか」

「「止める理由はない」と言われた。それだけ。ガルト師匠って肯定も否定も最小限だよね」

「そういう人です」

「でも、「止める理由はない」は肯定だよね」

「そうです。十分な肯定です」


 ロットが「場所の目当てがある」と言った。

「エスタとネベルの間の街に、長年空き工房がある。コンラートという星図師が使っていたが、体を悪くして閉めた。俺がネベルに行ったとき、ヴェラさんに聞いた。コンラートさんが「使ってくれる人間がいれば」と言っているそうだ」

「コンラートさんというのは——」

「父さんが知っている人だ。ガルト師匠がネベルにいた頃、世話になった星図師」

「そうか。父さんが知っているなら、紹介してもらえるかもしれない」

「もう話してもらった。手紙が来た。「来るなら場所を準備する」って」

「先に動いていたんですね」

「うん! でも一応報告しようと思って」


「いつ行きますか」

「来月。春になる前に。春は旅しやすい季節だから、その前に落ち着きたい」

「分かりました。気をつけて」

「また帰ってくるよ! ここが一番のホームだから!」


 夕飯にみんなで話した。ロットが計画を話した。テオが「じゃあ今夜はたくさん食え」と言って料理を出した。ダンが「また来いよ」と言った。

 ロットが「何度でも来ます!」と大きな声で言った。


 記録帳に書いた。

 ロットが工房を持つことにした。エスタとネベルの間。旅打ちスタイルは変えない。でも、戻る場所ができる。

 補足に書いた。

 「ロットが根を張り始める。旅打ちが、場所を持つ。それぞれが自分の続け方を見つけている」


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