第95話 新しい星図師たち
ロットから手紙が来た。
「各地から問い合わせが来ている。失星図を読んだ若い星図師たちが、自分も記録を始めたいと言っている。どうすればいいか教えてほしいという質問も来ている。レンのところに転送していいか? ロット」
返信した。
「転送してください。全部返事を書きます」
手紙が来た。
十代の星図師から。「失星図を読んで、観測を始めました。記録の書き方を教えてほしい」
二十代の星図師から。「師匠がずっと感じていたことが、失星図で説明できると言っていた。自分も記録したい。どんな記録帳を使えばいいか」
ある街の工房の見習いから。「記録することが怖くなくなりました。失星図があるから。自分の記録が誰かの役に立つかもしれないと思った」
全部に返事を書いた。
記録帳の形は何でもいい。毎日書くことが大事。日付と場所と観測値。それだけで始められる。補足は後から書けるようになる。
書けば積み上がる。積み上がれば、誰かの役に立つ。
ロットが「すごい数来てる」と言った。
「そうです」
「レン一人では返事が間に合わないのでは」
「間に合わせます」
「俺も手伝う!」
「ロットが返事を書けますか」
「書けます! ロットが回った工房から来てる手紙は、ロットが返事書いた方が早い!」
「それはそうです。お願いします」
ベルも手伝うと言った。
三人で手紙を分けた。ロットが旅打ちで関係のある工房からのもの。ベルが若い見習いからのもの。俺が内容の複雑なもの。
一週間かけて全部に返事を書いた。
クロウから手紙が来た。
「院でも動きが出ている。失星図の公示後から、若手の院員が記録の継続観測を自発的に始めた。南西の星の消失も、複数の院員が確認して記録した。失星図の記録方式——基準星方式——を院の標準観測方法として採用する提案が出ている。クロウ」
基準星方式が院の標準に。
俺が旅の途中で思いついた方法だった。カイの記録を参考にして、相対的な明るさの変化を記録する方法。
それが院の方法になる。
「ベル、基準星方式の説明書を一枚書いてもらえますか。院から問い合わせが来るかもしれない」
「書きます」
記録帳に書いた。
新しい星図師たちが記録を始めた。手紙が来た。若い人たちが「怖くなくなった」と書いてきた。
補足に書いた。
「カイが記録した。俺が記録した。今度は若い星図師たちが記録する。これが継承だと思う。俺が教えたわけではない。失星図が示した先を、それぞれが自分で続けていく。それが一番いい形だ」




