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星図師は空の欠けを知っている  作者: ごま
第三部:星の記録者

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第88話 ロットが帰った

 ロットが帰ってきた。

 夕方、大荷物を担いで工房の前に現れた。

「帰ってきたー!!!」

 港まで聞こえそうな声だった。


 ベルが「おかえりなさい!」と飛び出した。

 ガルトが奥から出てきた。ロットがガルトを見て「師匠!!」と言った。

「師匠ではない」

「師匠! 土産です!」

 ロットが大きな革袋を開けて、測量道具を出した。見たことのない形だった。

「南の市場で見つけた。旅打ちでも使える小型の角度計です! どうですか」

 ガルトが受け取って、手の中で回した。

「……悪くない」

「ありがとうございます!! 褒められた!!」

「褒めていない」


 ロットがダンへの土産を出した。貝細工の小物だった。

「ダンが欲しいと言ってたやつに近いもので! 本人はいますか」

「夕方なら来ると思います」

「じゃあ待つ!」

 ロットが俺に向いた。

「レン! これ」

 小さな箱を差し出した。

「開けていいですか」

「開けて」

 箱を開けると、星型に切った薄い透明な石が入っていた。

「南の港の店で見た。星図師に似合うと思って」

「ありがとうございます」

「使えそう?」

「観測窓にかけておきます」


 夕飯はみんなで食べた。

 テオが作ってくれた。ロットが「テオさんの料理また食べたかった!」と言った。テオが「よく食え」と言って料理を追加した。

 ダンが来た。ロットの顔を見て「よく戻ってきた!」と言った。二人がすぐに騒がしくなった。

 ソーラが途中から来た。

 コルダ老人も来た。「賑やかな夕食だな」と言いながら座った。


 ロットが旅の話をした。

 各地で会った星図師たち。七十歳のおじさん。三世代前から記録を続けていた家。院の発表を聞いて喜んだ老人。

「みんな記録していたんですよ。ばらばらに、一人で。でも失星図を見て「繋がっていたんだ」って言ってた」

「そうです」

「俺、旅打ちで各地を回っていてよかったと思った。星図師たちの顔を知っていたから、話を聞いてもらえた。知らない人間からの手紙だったら、開かなかった工房もあったと思う」


「ロット、自分の工房を持つ気はありますか」

 ロットが少し黙った。珍しかった。

「……考えてる。ちょっとだけ」

「どこに」

「どこかは分からない。でも、一か所に根を張ることも悪くないかなと思い始めた」

「旅打ちをやめるということですか」

「やめない。でも、戻る場所があってもいいかなって」


 夜、記録帳に書いた。

 ロットが帰ってきた。全員集まった。

 テオ、ダン、ソーラ、コルダ老人、ガルト、ベル、ロット。みんながいた。

 補足に書いた。

 「こういう夜が、記録帳に残る。記録帳は観測値だけではない。誰と食べたか、何を話したか。それも記録だ」


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