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星図師は空の欠けを知っている  作者: ごま
第三部:星の記録者

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第81話 対話の試み

 クロウから手紙が来た。

 「院の照合結果が外部に公示された。各地の星図師ギルドに通知が行った。これで院の公式見解として失星図の内容が認められた形になる。

 院内の問題の老人は、記録整理の職を外れた。院の内部調査が始まった。ただし、これは院内の問題として処理される。外部への公表は院が判断する。

 シェードへの対応について相談したい。ヴェラの報告書を読んだ。シェードが「考える」と言ったなら、次の動きが重要だ。会うつもりがあるなら、俺も同席できる。クロウ」


 俺は考えた。

 シェードに会うべきか。

 ヴェラが会った。シェードは動揺した。「考える」と言った。でも、それが何を意味するかは分からない。

 記録帳に考えを書いた。

 シェードが「考える」と言ったのは、何かが変わったということかもしれない。あるいは時間を稼いでいるだけかもしれない。直接会うことで何が変わるか、分からない。

 でも、会わなければ変わらないことは確かだ。


 ガルトに相談した。

「シェードに会いに行こうと思います」

 父が少し間を置いた。

「理由は?」

「ヴェラさんが対話を試みた。シェードが「考える」と言った。次のステップとして、院の人間であるクロウさんと俺とで会うことで、院として話を進める形になる」

「危なくないか」

「シェードは記録を消す組織を動かしていた。でも直接的な暴力は記録にない。俺を傷つけることより、記録を止めることを目的にしている」

「そうとも限らない」

「そうです。でも——会わなければ、シェードが次に何をするか分からない。動きを把握する意味でも、会う方がいいと思います」


 父が黙って考えた。

「一人で行くな」

「クロウさんが同席すると言っています」

「それだけか」

「ヴェラさんも来るかもしれません」

「三人か。……それなら、行くとしても構わない」

 父らしかった。認めはするが、一人でやるなという。それが父の心配の形だ、と思った。


 クロウに返事を書いた。

 「同席をお願いします。ヴェラさんにも声をかけてください。ネベルで会いたい」


 ベルが「行くんですか」と聞いた。

「行こうと思います」

「戻ってきますよね」

「戻ります」

「……分かりました。工房は任せてください」

 ベルが少し背筋を伸ばして言った。十七歳のベルが、今は頼りになる後輩だと思った。


 記録帳に書いた。

 シェードに会いに行くことにした。クロウとヴェラが一緒に来る。

 シェードに何を伝えるか。ヴェラが「終わりにしろ」と言った。俺が言うとしたら何か。

 補足に書いた。

 「俺が言えることは記録のことだけだ。記録が残ることで、誰が守られるか。それだけを話す。シェードが聞くかどうかは、シェードが決める」


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