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星図師は空の欠けを知っている  作者: ごま
第三部:星の記録者

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第79話 波紋

 二週間後、クロウから報告が来た。

 「照合が終わった。結果を報告する。

 失星図に記載された観測値の八十三パーセントが、院の公式記録と一致または整合していた。残りの十七パーセントも「一致しない」ではなく「院の記録が空白になっている期間」との照合で一致が確認できなかったものだ。

 つまり、失星図の内容は院の記録で否定されない。問題の老人が「信頼できない」と言った根拠がなくなった。院長が「失星図を院の参照資料として受理する」と決定した。

 これで次のステップに進む。院として外部に公示する準備を始める。クロウ」


 受理された。

 俺はその手紙を読んで、少しの間だけ何もしなかった。

 受理されるとは思っていた。でも、実際にされると、何か言葉にならない感覚があった。


 ベルが「何と書いてあったんですか」と聞いた。

「院が失星図を受理しました」

 ベルが「すごい」と言った。それだけだった。でも、その一言の重みが分かった。

 ガルトが奥から出てきた。俺が黙って手紙を渡した。父が読んだ。

「……そうか」

 それだけだった。


 波紋はすぐに広がった。

 院が参照資料として受理したという話が、院内から外に漏れた。ロットが回った工房から「院が認めたというのは本当か」という手紙が来た。エスタのヨランから「生きているうちにこうなるとは思わなかった」という手紙が来た。

 ランドのヨシュアから手紙が来た。「父の話が院の資料の一部になった。父に報告しました」


 コルダ老人が工房に来た。

「聞いた。院が認めたそうだな」

「参照資料として受理されました」

「大したものだ」

 コルダ老人が俺を見た。

「何年前に、この子どもが変な観測結果を持ってきた。星が変だと言った。俺はその時、正直に言えば半信半疑だった。でもお前が続けるから、俺も見続けた。今日まで」

「老人が見続けてくれたから、俺も続けられた面があります」

「そういうことにしておく」


 ソーラが来た。

「おめでとう」

「ありがとうございます」

「ミラ老師が喜んでいると思う。カイ師匠も」

「……そうだといいですが」

「そういうものよ。記録する人間は、次の人間に何かを渡す。カイからミラへ、ミラからあなたへ。あなたが渡したものが院で受理された。カイまで遡れば、百年のことが今日繋がった」


 夜、街に出た。

 久しぶりに港まで歩いた。海の匂い。遠くの灯台の光。

 空を見た。南西の星はまだある。

 今夜の測定値を記録した。まだ暗くなっている。院が失星図を受理しても、星は止まらない。記録は続く必要がある。


 記録帳に書いた。

 院が失星図を受理した。波紋が広がっている。

 でも、これで終わったわけではない。シェードの組織はまだある。南西の星はまだ消えていない。記録を続けることが、今もやることだ。

 補足に書いた。

 「嬉しいかと聞かれれば嬉しい。でもそれより先に、次のことを考えている。これが俺の性格なのか、それとも旅で変わったのか、よく分からない」


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