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星図師は空の欠けを知っている  作者: ごま
第三部:星の記録者

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第78話 評議会

 クロウから短い手紙が届いた。

 「今日が評議会だ。結果は後で報告する。クロウ」

 それだけだった。


 その日は工房で仕事をした。普段通りに。失星図の追加部分を書いた。南西の星の観測値の更新。各地から届いた記録の照合。

 何かを待っている、という感覚はあった。でも待っていても何もできない。できることをやった。


 三日後、クロウから長い手紙が来た。

 「評議会に提出した。反応を報告する。

 最初、沈黙があった。院長が「これはどこから来た記録か」と聞いた。俺が「ファーレンの星図師、レンが収集した百五十年分の記録です」と答えた。院長が「百五十年分を一人で集めたのか」と聞いた。俺が「一人ではない。各地の星図師たちの記録が集まったものです」と答えた。

 問題の老人が発言した。「信頼できない資料だ。個人の記録を寄せ集めただけのものを院の公式記録と照合する必要はない」

 俺は「では院の公式記録と照合して確認しましょう」と言った。照合を提案した。拒否できない提案だ。

 院長が「照合を行う」と決めた。問題の老人は黙った。照合結果が出るまで二週間かかる。出れば次のステップに進める」


 照合。

 院の公式記録と比較して、失星図の内容が院の記録でも確認できれば、「個人の記録の寄せ集め」という批判は通らなくなる。

 クロウがうまく動いている、と思った。


 ベルが「評議会ってどういう場所ですか」と聞いた。

「院の上位者たちが集まって決定をする会議です。院の方針を決める」

「そこで失星図が出たということは」

「院の問題として扱われ始めた、ということです。個人の話ではなく」

「大きくなりましたね」

「大きくなりました。カイが一人で言い続けていた話が、今は院の評議会で議論されている」


 ロットから手紙が来た。

 「今、エスタのヨランさんのところにいる。百年分の記録を直接見た。すごかった。レンが言っていた意味が分かった。ヨランさんが「記録は俺の死んだ後も残る。それだけでいい」と言っていた。

 帰路についた。あと三か所寄って戻る。ダンへの土産はいいものを見つけた。レンにも見つけた。ガルト師匠への土産は悩んでいる。何がいいか教えてくれ。ロット」


 俺は返事に「父さんは道具が好きです。道中で見かけた珍しい測量道具があれば」と書いた。

 ベルが「ガルト師匠のことよく分かりますね」と言った。

「長く一緒にいますから」

「そうですね」

 ベルが少し考えてから言った。

「俺も長くいる。でも師匠が何を好きかは、あまり分かっていなかった気がします」

「気づけるようになりますよ、時間が経てば」


 記録帳に書いた。

 院の評議会で失星図が提出された。照合が始まる。二週間後に結果が出る。

 クロウが院の中でうまく動いてくれている。

 南西の星の測定値を記録した。今夜も変化あり。

 補足に書いた。

 「カイが言い続けた言葉が、百年後に院の評議会で議題になった。それだけで、記録することの意味は証明された気がする」


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