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星図師は空の欠けを知っている  作者: ごま
第三部:星の記録者

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第77話 嵐の前夜

 クロウから手紙が来た。

 「院内の整理が終わった。失星図の院版を作成した。来月、院の評議会で提出する。その前に、あなたの名前を公式記録に入れていいか確認したい。記録の収集者として。拒否するなら匿名にできる。

 ヴェラの資料を受け取った。内容を確認した。院の法務部門と相談する。これは思ったより重い案件だ。院内の問題として処理するか、外部機関に委ねるか、まだ決まっていない。ただ、隠す気はない。クロウ」


 俺は返事を書いた。

 「名前を入れてください。匿名の記録より、誰が書いたかが分かる記録の方が信頼される。俺の名前でいい」


 ロットから手紙が来た。

 「十二か所回った。みんな失星図を受け取ってくれた。二か所は「自分たちも記録を出す」と言った。あとは戻りながらもう少し寄る。帰るのは来月かな。ダンに土産を頼まれているので何か見つけないと。レンにも土産を持っていく! ロット」


 ヴェラからも来た。

 「シェードに会う機会を作れた。一週間後、ネベルで。一人で行く。結果は後で報告する」

 短かった。俺は返信を書いた。

 「気をつけてください。無理しないでください」

 送った後で、「気をつけて」という言葉の空虚さが少し気になった。でも、他に言えることがなかった。


 夜、記録帳に書いた。

 クロウが来月の評議会で提出する。ロットが十二か所を回った。ヴェラがシェードに会う。

 全員が動いている。

 俺は記録帳を閉じて、外に出た。夜の港に行った。

 南西の星を見た。


 星はあった。でも、確実に暗くなっている。今夜の測定値を記録帳に書いた。

 俺が最初にこの星の変化に気づいたのは、旅に出る前だった。あの頃はまだ何も確信がなかった。今は違う。

 この星は消える。時間は分からないが、消える。

 消えたとき、その周辺で記憶の混乱が起きるかもしれない。準備が必要だ。失星図にその予測を書き加えることにした。


 工房に戻って書き加えた。

 「南西の基準座標から確認できる変化速度から推測すると、今後一年以内に消失の可能性がある。消失前後の周辺住民への情報提供と、観測体制の整備を推奨する」


 ガルトが起きていた。

「眠れないのか」

「星を見ていました」

「南西か」

「南西です。変化が速くなっています」

 父が少し考えてから言った。

「俺が若い頃、カイが「南の星が変だ」と言っていた。どの星かは分からなかった。でも今、お前が言っている星が、カイが言っていた星かもしれない」

「百年かかって、まだ変化が続いている」

「そういうことだな」


 父と二人で少し外を見た。

 黙っていた。でも、同じ星を見ていた。

 父が「寝ろ」と言った。

「はい」

「明日も記録がある」

「そうです」

「記録する者が倒れたら記録が止まる。体を保て」

「分かりました」


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