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星図師は空の欠けを知っている  作者: ごま
第三部:星の記録者

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第75話 同盟

 ロットから手紙が来た。

 「最初に行った工房の先生が、失星図を読んで「自分も記録がある」と言った。二十年分。出してもいいか聞いたら「出してくれ」と言った。写しを取ってそちらに送る。

 二番目の工房は半信半疑だったけど断られなかった。三番目は喜んで出してくれた。七十歳のおじさんで、若い頃から「おかしい」と思っていたが誰に言えばいいか分からなかったって。

 旅打ちをやっていてよかったと初めて思った。ロット」


 次々と手紙が届くようになった。

 知らない名前の星図師から。ロットが回った工房から。中には「私の師匠の師匠の記録があるが、見せるべきか」という問い合わせもあった。

 全部に返事を書いた。

 「見せてください。写しでも結構です」


 エスタのヨランから手紙が来た。

 「レンの記録を読んだ。正しい。俺の記録と合う。俺の記録を外に出していい。全部使ってくれ。ヨラン」

 短い文だった。でも、三世代百年分の記録を「全部使ってくれ」という一言の重さは分かった。


 ランドのヨシュアから手紙が来た。

 ランドで証言を聞かせてくれた老人の息子だった。

 「父が亡くなりました。三十年前の記憶が戻らないまま逝きました。でも、あなたが来てくれて話を聞いてくれた。父は「やっと話せた」と言っていました。記録に使ってください」


 俺はその手紙を読んで、しばらく記録帳を持ったままでいた。

 ベルが「大丈夫ですか」と聞いた。

「大丈夫です。ランドで話を聞いた人が亡くなったという知らせが来ました」

「そうですか」

「でも、話を聞けてよかった、と書いてありました」

「……よかったですね。間に合って」

「そうです。間に合いました」


 ガルトが「これだけ集まれば、一人の記録ではなくなる」と言った。

「そうです。もはや俺の記録ではない。各地の星図師たちの、百五十年分の記録です」

「シェードはそれを消せないな」

「一か所に全部あれば消せる。でも各地に散らばっていれば、全部は消せない。今は各地に散らばっている」

 父が少し考えてから言った。

「……記録は、繋がることで守られる」

「そうです」


 クロウからまた手紙が来た。

 「院内の動きを報告する。問題の老人が記録整理室への立ち入りを一時制限された。院の上位者が状況を把握し始めた。ゆっくりだが動いている。

 失星図の院内版を作る準備を始めた。院の公式書式に合わせる。それが完成すれば、院の公文書として扱われる。時間をくれ」


 記録帳に書いた。

 各地から協力の申し出が来ている。ロットが各地を回っている。ヨランが全部使ってくれと言った。ランドの老人が亡くなった。

 同盟、という言葉を書いてみた。

 でも違う。同盟というより、同じ場所を見ていた者たちが気づいた、という感じだ。俺が作ったのではなく、最初からあったものが見えてきた。

 補足に書いた。

 「カイは一人だったが、カイが記録したものは一人のものではなかった。俺もそうだと思う」


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