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星図師は空の欠けを知っている  作者: ごま
第三部:星の記録者

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第73話 シェードの動き

 クロウから手紙が届いた。

 「院に戻って同僚数名に話した。反応は割れた。信じた者が三人。保留が二人。聞こうとしなかった者が一人。その一人が気になる。院の記録管理を長年担当している老人で、シェードの組織と繋がっている可能性がある。動きを注視している。

 失星図の写しは受け取った。内容を確認した。院の古い記録と照合している。照合が終われば、院の公式記録の形で出せるかもしれない。

 急がないが、止まらない。クロウ」


 ヴェラからも短い手紙が届いた。

 「ネベルで動いた。組織の末端が数人、俺の話を聞いた。シェードへの不満はある。でも怖くて動けない。時間がかかる。もう一つ。シェードが動いた形跡がある。ファーレン方向に人を出した」


 俺はその文を読んで、窓の外を見た。

「父さん、ヴェラさんからシェードがこちらに人を出したかもしれないという話があった」

「どの程度の話か」

「確認中です。でも用心した方がいい」

 ガルトが「分かった」と言って、窓の外を一度見た。それだけだった。


 翌日、港で見知らぬ男が星図師の工房を尋ねているという話をリナが持ってきた。

「レンの工房はどこか、と聞いていたらしい。漁師が教えた」

「どんな人物でしたか」

「旅人みたいな格好。でも荷物が少なかった。漁師が言うには、腕に何も巻いていない人だったって」

 腕に印がない。院の星図師ではない。


「工房に来ましたか」

「来ていない。漁師が教えて、それからどこかに行った」

 場所を知った。それで終わった、ということかもしれない。あるいは、様子を見ている。

 俺は工房の記録を確認した。写しは全部外に出した後だった。工房に残っているのは原本の一部と、俺の記録帳だけだ。


 ガルトが「どうする」と言った。

「今は動かない方がいいと思います。動くと、動いた先に誘導される可能性がある」

「では?」

「記録を増やす。俺がいる限り記録は増え続ける。それを止める方法は、俺を止めることだけです。でも俺を止めても、すでに写しは外に出ている」

「分散したということか」

「そうです。一か所に全部あった時代は終わりました」


 ベルが「不安じゃないですか」と聞いた。

「不安です」

「そうですよね」

「でも、カイも不安だったと思います。一人で記録していた。記録を奪われた。それでも続けた。俺は一人じゃない」

「そうですね」

「見知らぬ人間が来ても、工房に来た人間がいても、記録帳さえあればいい。ここに今夜の空が書いてある限り、消すことはできない」


 夜、記録帳に書いた。

 シェードが動いた。ファーレンに人を出した。でも来るなら来ればいい。写しはもう外にある。クロウが院に持っていった。ロットが各地に持っていく。

 南西の星を観た。

 また暗くなった。測定値を記録した。明らかな変化がある。

 補足に書いた。

 「シェードが動くほど、動いた証拠が残る。怖いが、それは俺が正しいことをしているということでもある」


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