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星図師は空の欠けを知っている  作者: ごま
第二部:消えた星を追う旅

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第66話 ファーレンに戻る

 ミラ老師のところから工房に戻ると、コルダ老人が来ていた。

「帰ってきたな」

「ご無沙汰していました」

「顔つきが変わった。旅に出る前と別人だな」

 俺は何と答えればいいか分からなかった。「そうですか」とだけ言った。


 コルダ老人がロットを見た。

「この子は?」

「旅の途中で合流した見習いです。ロット、といいます」

「見習いにしては目がいい。なんだ、その若さで」

 ロットが「ロットです! よろしくお願いします!」と大きな声で言った。コルダ老人が少し驚いて、それから笑った。

「久しぶりに元気な若者を見た。うちの工房に来るか?」

「俺、どこにも属さないスタイルなんで!」

「そのスタイルはいつか苦労するぞ」

「そんとき考えます!」


 夕方、テオとダンが来た。

 テオが俺の顔を見てすぐに「やせた?」と言った。

「旅中はそんなにゆっくり食べる時間がなかったです」

「それはいかん。今夜は俺が作る」

「ありがとうございます」

 ダンがロットを見て「この人誰」と言った。

「一緒に旅した見習いです」

「見習いが旅するの?」

 ロットが「旅打ち見習いっていうんだよ! 各地の工房を回って技術を身につけるスタイル!」と答えた。

 ダンが「すげえ」と言って、それからロットと話し込み始めた。五分後には二人で競技観測の話をしていた。


 リナが来た。マーゴも一緒だった。

「帰ってきたじゃないですか」

「帰りました」

「心配してたんですよ。手紙で追われてるとか書いてきたから」

「ご心配をかけました」

「無事ならよかった。——このクロウという方は?」

 クロウが前に出た。「王立星図院から来た。クロウといいます」

 リナが少し警戒した顔をした。

「院の方がなぜここに」

「レンと旅をしていた。事情がある」

 クロウは何も付け加えなかった。リナもそれ以上は聞かなかった。


 ソーラが来た。

 俺の顔を見て、しばらく何も言わなかった。

「……大きくなったわね」

「そうですか?」

「背、伸びた。あと——」

 ソーラが少し笑った。

「目が落ち着いた。子どもの目じゃなくなった」

「何年もたちましたから」

「何年もたったわね」


 夕飯をみんなで食べた。テオが作った料理がたくさん並んだ。

 ロットが「うまい!」と三回言った。

 ダンが「ロットって旅打ちなんだって!」とテオに報告した。

 テオが「旅打ちか。体は大丈夫か?ちゃんと食えているか?」と聞いた。

 ロットが「旅先では食えないこともありますけど大体何とかなってます!」と答えた。

 テオが「今夜はたくさん食え」と言って、ロットの皿に料理を追加した。


 食事の後、クロウが少し離れた場所に座っていた。俺が近づいた。

「ファーレンはどうですか」

「温かい。院とは違う」

「院は違うんですか」

「……もう少し、個人と個人の距離がある。悪いわけではないが、こういう夕飯の場はあまりない」

「クロウさんも一緒に食べればよかったのに」

「呼ばれていない」

「呼べばよかった。すみませんでした」

 クロウが少し間を置いた。

「次からは呼んでくれ」


 記録帳に書いた。

 ファーレンに戻った。出発してから数年。道中で数えたことはなかったが、ここに戻って初めてその重さを感じた。

 みんながいる。テオ、ダン、リナ、マーゴ、コルダ老人、ソーラ。

 変わった人もいる。変わっていない人もいる。でも、みんなここにいる。

 補足に書いた。

 「俺が戻る場所があるということが、旅中は支えになっていたと思う。意識していなかったが、そうだったと思う」


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