第60話 共に旅する
三人での帰路が始まった。
来た道を戻る形だが、経由地を変えた。シェードの追跡を避けるため、クロウが「院のネットワークを使える宿を選ぶ」と言った。
「院のネットワーク?」
「院に協力的な宿や施設が各地にある。そこなら少し安全だ」
「そんなものがあるんですか」
「知らなかったか。各地の星図師工房も含めて、院は広いネットワークを持っている」
最初の夜、クロウが選んだ宿は普通の外見だったが、主人が院の関係者だった。
「三等師が来るとは珍しい」
「事情があります」
「構わない。ここは安全だ」
久々に安心して眠れた。
翌日から、歩きながら話す時間が増えた。
クロウは歩きながら記録帳の話を聞いた。俺が旅で集めたもの、各地の証言、ヨランの百年の記録、星種実験の写し。
「これだけあれば、院の審査委員会に出す価値はある」
「足りないものがあれば教えてください」
「……一番弱いのは「現在進行形の証拠」だ。過去の記録は揃っている。でも今現在も消失が進んでいるという証拠が弱い」
「ベルが毎月記録してくれています。ファーレンの現在の観測データがある」
「それを揃えれば、過去から現在への連続性が見えてくる。それが揃えば出せる」
ロットが「俺も証人になれますか」と聞いた。
「各地の証言を集めた人間として、証言できますか」
「証言の補助にはなる。正式な審査では、星図師の観測記録が主になるが、補助証言は有効だ」
「じゃあ、なれる!」
「なれる」
ロットが少し嬉しそうにした。
「俺、役に立ててる」
「十分です」
「言い方、もうちょっとうれしそうにして」
「十分です」
「変わらない!」
クロウがロットに「いつもそのペースか」と聞いた。
「いつも! レンも最初は戸惑ってたと思うけど、今は普通に話してる」
「俺もそうなりつつある。不思議と慣れる」
「人間ってそういうもん!」
クロウが「そういうものかもしれない」と言った。珍しく少し笑った顔だった。
旅が続いた。
毎晩観測した。毎晩記録した。三人でいると、ロットが見張り役を買って出た。「俺は観測の役には立てないけど、周りを見ておくことならできる」と言って、俺が記録している間の周囲確認を担当した。
クロウが「それは合理的な分担だ」と言った。
三人での旅はファーレンでの工房の日々に少し似ていた。それぞれが役割を持って、一つの目的に向かって動く感覚。




