第59話 クロウが助ける
翌日、クロウが来た。
どこから来たのか分からなかった。俺たちが泊まっていた宿に、朝食を食べていたら現れた。
「レン。見つけるのに苦労した」
「なぜここに?」
「ネベルに残した手紙を読んだ。それとヴェラから連絡が来た。追われているなら合流した方がいいと思った」
「ヴェラさんから」
「ヴェラはネベルを監視していた。シェードの動きを知らせてくれた。それで俺も動いた」
ロットがクロウを見た。
「あなたが院のエリートの人ですか?」
「そうだが」
「話は聞いてます。よろしく!」
「……よろしく」
クロウが少し戸惑った顔をした。ロットのペースについていけない人間は多い。
「状況を教えてくれ。どこで追跡を受けた」
「エスタを出た翌日の宿と、昨日の村の市場です。二人組に追われました」
「今は撒いているか」
「多分。でも安心はできません」
「俺が同行する。院の証章がある分、公の場所で動きを制限できる」
三人での移動になった。
クロウがいると、少し楽になった。院の証章は公的な場所では効力がある。街道の検問のような場所でも、クロウが前に出れば問題なく通れた。
ロットがクロウと話した。最初はクロウがロットのペースについていけなかったが、半日経ったら普通に会話していた。
「各地の情報を持って来たんですか、ロットさんは」
「そう! 十三ヶ所!」
「それは——有効な情報だ」
「でしょ!」
三日ほど歩いたとき、クロウが言った。
「ネベルで院の記録を照合した結果を言っておきたい」
「はい」
「十五年前から現在にかけて、南西方向の異常観測報告が七件ある。全部「観測誤差」として処理されていたが、報告書は残っていた」
「七件」
「俺が確認できた分だけだ。実際はもっとあるかもしれない。ただし、これを使って院に動かすためには正式な手順が必要だ」
「正式な手順」
「複数の地点のデータを揃えて、院の審査委員会に提出する。審査が通れば公式な調査が始まる」
「俺の記録では足りませんか」
「今持っているものだけでは、まだ足りない。でも、揃えれば届く可能性がある」
俺はしばらく歩きながら考えた。
「ファーレンに戻ったら、今ある記録全部を整理します。足りないものが分かったら、また動きます」
「賢い判断だ」
「クロウさんは院に戻りますか」
「お前と一緒にいる方が今は有効だと判断した。院の仕事はしばらく留守にできる」
「ありがとうございます」
「お礼は必要ない。名誉のために動いている」
ロットが「院のエリートって意外と面白いな」と言った。クロウが「そうか」と言った。




