第52話 記録者の噂
ヨランを訪ねる前に、エスタの港で一日過ごした。
情報を集めたかった。ランドと同じように、地元の人間から話を聞く方が、目的の記録者を直接訪ねるよりも情報が多い場合がある。
港の食堂で昼飯を食べながら、隣に座った漁師に話しかけた。
「星を研究している者です。この港で、空の変化に気づいている方はいますか」
「ヨランの爺さんが詳しいが、あの人は人見知りでな」
「他には」
「最近では……組合の若い連中が「南の星が変だ」と言っていた。三人くらい気づいているようだったが」
「教えてもらえますか、その方々に」
三人の若い漁師に話を聞いた。
全員が独立して「南の方向の星が以前より暗い」と感じていた。一人は「二年前から」、一人は「去年から」、一人は「今年の春から」と時期が違った。でも方向は一致していた。南。
ファーレンからの南西とは少し角度が違う。でも、エスタの位置からの「南」は、ファーレンから見た「南西」と同じ方向を指している可能性がある。
「記録者の噂」というのを聞いたのは、別の場所でだった。
港の道具屋で観測用の消耗品を買ったとき、主人が言った。
「星図師さんか。最近、各地から星を調べている人が来るようになったね」
「そうですか」
「ここに来たのも三人目だ。みんな同じようなことを聞いていく。空が変わっているかどうか、記録はあるかどうか、と」
「他に誰が来ましたか」
「一人は若い女の星図師だった。半年前くらい。もう一人は——年配の男だったが、星図師ではないと言っていた」
「星図師ではない人が星を調べに来た?」
「書き物をたくさん持っていた。「各地の記録を集めている」と言っていた」
各地で記録をしている人間がいる。
俺だけではない。
俺は記録帳に書いた。
エスタで他の調査者の情報あり。若い女性の星図師(六ヶ月前)と年配の非星図師(時期不明)。共に空の変化と記録の有無を調査。
ヨランを訪ねたとき、その調査者たちのことも聞いてみる。
ロットが「俺も行く」と言って一緒に港を回っていた。
「ロットはこういうの得意ですね、人に話しかけるの」
「人と話すの楽しいから! レンは得意じゃない?」
「必要なことは話せます。でも楽しいとは感じていないかもしれない」
「もったいないな。人から聞く話って面白いのに」
「面白いというより、必要なものを取り出している感覚です」
「そこが俺との違いかな」
ロットが笑った。
「俺は面白いから話す。レンは必要だから話す。でも集まる情報は同じだよな、ある意味」
「同じかもしれません。でもロットの方が相手が話しやすいと思います」
「そうかも!」




