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星図師は空の欠けを知っている  作者: ごま
第二部:消えた星を追う旅

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第47話 ソルテの証言

 ロットが持ってきた情報を整理するのに、三日かかった。

 ロットは口で説明するのが得意だったが、俺には記録帳に整理してもらう方が分かりやすかった。ロットが話して、俺が書いて、ロットが「そう、それ」と確認する、という作業を繰り返した。

 クロウも加わった。

「多いな、証言が」

「十三ヶ所です」

「一人で回ったのか」

「一人で! 半年くらいかけて!」

 ロットが少し自慢げに言った。


 ロットの証言の中で最も詳細だったのは、ソルテという港町の話だった。

 ソルテはネベルから西に三日ほどの場所にある港で、ロットが一ヶ月ほど滞在していた。

「ソルテの漁師組合の古い帳面に、星の変化が記録されていた」

「漁師組合が記録していたんですか」

「してた! 漁師って航路のために星を見るじゃないですか。だから組合で「いつもと違う」という記録を残していた。三十年分くらいあった」

「それは写せましたか」

「全部は無理だったけど、変化があった記録のページだけ写してきた」


 ロットが写してきたページを見た。

 漁師の記録は素人のものだったが、方向と輝度の変化の感触は書いてあった。「南西の明るい星がいつもより暗い」「先月まで見えていた星が今夜見えない」という記録が、三十年分の中に散らばっていた。

 俺はカルの記録と時期を照合した。

「カル師がネベルで観測していた時期と、ソルテの漁師の記録の変化時期が重なります」

「一致してる?」

「時期が一致します。カル師が「南西方向が急激に変化している」と報告した時期と、ソルテの漁師が「南西の星が頼りにならない」と書いた時期が、同じ年に集中しています」

「それって」

「二つの別の地点から、同じ時期に同じ方向の変化を観測していた、ということです。信頼性が上がります」


 クロウが俺の記録帳を見ながら言った。

「これが証拠として成立するためには、もう少し正確な観測データが必要だ。漁師の感触と元星図師の記録を合わせても、院的には「感触」で終わる可能性がある」

「それは分かっています。でも今はパターンを確認する段階です。証拠にするのはその次」

「そのために各地を回るつもりか」

「はい。エスタという港にも行くつもりです。東端の港で、百年以上の記録がある可能性があります」

「エスタは遠いぞ。ここから一週間以上かかる」


「ロットさん、ソルテの話を詳しく教えてください。特に——何か変なことはありませんでしたか。記憶の問題とか、普通ではないことがあった話とか」

「あった! 忘れてた」

 ロットが急に声を上げた。

「漁師の一人が「去年の秋のことを覚えていない」と言っていた。その前後は覚えているのに、ある二ヶ月だけない、と」

「何人いましたか、その症状は」

「俺が確認できたのは二人。でも組合の人が「もっといるかもしれない」と言っていた」

「時期は」

「三年前の秋だって」


 俺は地図を見た。

 ランド、ソルテ、ファーレン。三つの地点で、記憶の問題が起きている。

 ランドは二十年前。ソルテは三年前。ファーレンでは今のところ確認していない。

 時期がバラバラだ。でも、全員が「特定の期間の記憶がない」という点では一致している。

「消える記憶の時期が違う」

「場所によって違う、ということかな」

「星種の影響が場所によって時間差を持って出る、という可能性もあります。あるいは、別々の出来事として起きている可能性もある」


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