表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星図師は空の欠けを知っている  作者: ごま
第二部:消えた星を追う旅

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
45/74

第45話 忘却師の痕跡

 食事をしながら、クロウと話した。

 宿の食堂で、夜遅い時間だった。他の客はほとんどいなかった。

「封印された部屋の記録、消えていたのは意図的なものだと思うか」

「自然ではない消え方でした。文字だけが消えて、紙は残っている。インクを拭き取ったわけでもない。何か別の方法で消した」

「魔法的な方法か」

「その可能性があります。俺の知識にはないが、記録を消すことができる人間がいるという話は聞いたことがある」

「どこで」

「父から。「忘却師」という呼び名で」


 クロウが少し止まった。

「忘却師。俺も聞いたことがある。院の古い人間が、たまに使う言葉だ。「あれは忘却師の仕事だ」という言い方をする」

「院の中で知られている存在なんですか」

「知られているが、公式には存在しない。都合の悪い記録を消す組織があるという噂は、院の中では古くからある。でも証拠がない」

「今日見た、消えた記録が証拠になりませんか」

「消えた記録という証拠は、存在を証明しない。記録が消えた事実は示せても、誰が消したかは示せない」


「では、どうすれば」

「消した人間を見つけるか、消したという証言を取るか。どちらも難しい」

 俺はしばらく考えた。

「ヴェラが知っているかもしれない。ヴェラは「危険な立場にいる」と言っていました。ヴェラ自身が忘却師の組織にいる可能性があります」

「ヴェラという人物を知っているか?」

「ファーレンで接触してきました。父が遠ざけようとしていた人物です」

「どういう印象だった」

「敵でも味方でもない、と自分で言っていました。記録の価値を認めているが、組織の立場もある、という矛盾した状態にいると思います」


 クロウが食事を続けながら言った。

「ヴェラを探すか、ヴェラを待つかだな」

「ヴェラはこちらの動きを把握しているようです。ランドでも、ここでも、俺が動いた後に現れています。だから待てば来ると思う」

「待ちながら調査を続ける」

「そうです。今できることを続ける」

「君は焦らないな」

「焦っても仕方ない。記録は積み上げるしかない」


 翌日、記録の整理をしていたときにヴェラが来た。

 今度は正面から来た。図書館の入り口でイヨと話していた。俺が来るのを知っていて、待っていた。

「話せる?」

「話します」

 外に出た。霧の中で立って話した。

「消えた記録を見たのね」

「見ました。忘却師がやったことですか」

 ヴェラが少し黙った。

「……そうだ、と言ったら」

「組織のことをもっと教えてほしいです」

「それは言えない。でも——」

 ヴェラが空を見た。霧の中の空だ。

「消えた記録の中に、私が関わっていないものもある。二十年前に消えたものの中に、私が知らないうちに消されたものがある」

「あなたも知らないうちに消された記録がある」

「私の記録が消された」


 俺は記録帳を出した。

「ヴェラさんが持っていた記録が消されたんですか」

「私が調査していた記録が、途中で消えた。二十年前。調査を止めた」

「調査を止めたのは」

「怖くなったから。そして、消した人間が誰か分かったから。止めなければ、もっと消されると思った」

「消した人間は誰ですか」

「シェードという。私の、元上司だ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ