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星図師は空の欠けを知っている  作者: ごま
第二部:消えた星を追う旅

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第42話 クロウの協力

 図書館での調査が一段落した夜、クロウが宿に来た。

 事前の連絡はなかった。宿の食堂で夕飯を食べていたら、クロウが入ってきて「少し話したい」と言った。

「どうぞ」

 クロウが向かいに座った。

「俺も協力する」

 突然言った。

「協力、というのは」

「院の内部の記録を、俺の権限で閲覧できるものがある。君の調査と照合できるものがあれば、提供できる」

「なぜそれをするんですか」


 クロウが少し間を置いた。

「俺の名誉のためだ」

「名誉?」

「院のエリートとして、知っていて黙っている状態は名誉にならない。星図師として星の記録に嘘があるなら、それを放置することは名誉にならない」

「正直な理由ですね」

「俺は感情的な理由で動く人間ではない。でも、論理的に正しいことをするのが名誉だと思っている」

 俺はクロウを見た。

 エリートの人間が「協力する」と言うとき、裏がある場合がある。でもクロウの言い方には、素直な部分があった。

「分かりました。ありがとうございます」


「ただ条件がある」

「聞きます」

「情報の扱いについて。俺が提供するものは院の内部情報だ。それを院の批判に使うことは、今は避けてほしい」

「院の批判が目的ではないので、問題ありません」

「では星の消失の証拠として使う分には構わない」

「はい。俺の目的は記録を積み上げることです。院を批判することではない」

「……よく分かった。明日、院の分院に来い。俺が入れてやる」


 翌日、院の分院に行った。

 正面から入れるわけではなく、クロウの証章を使ってクロウ本人と一緒に入った。

 内部は図書館よりさらに古い建物だった。廊下が長くて、奥に行くほど明かりが少ない。

「観測記録の保管室だ」

 クロウが扉を開けた。

 棚が天井まで続いていた。全部が観測記録の束だった。

「どのくらい古いものがありますか」

「百年は確実にある。それ以前は別の場所に移してある」


「星の消失に関する記録を探したい」

「その棚の端から三つ目に、異常観測の記録を集めた場所がある。ここに持ってくる」

 クロウが数冊の帳面を持ってきた。

 俺は開いた。

 異常観測の記録には、輝度が急に下がった星、見え方が変わった星、消えた星が記録されていた。報告者は各地の星図師だった。報告を受けた側のコメントも書いてあって、多くは「単年変動の範囲内」「観測誤差」として処理されていた。

「処理されている」

「そうだ。処理されて、「問題なし」になっている」

「でも俺の記録と照合すると……」


 俺は自分の記録帳と院の記録を並べた。

 方向が重なるものがある。俺がファーレンから南西と記録したものと、他の場所から同じ方向に変化ありと報告したものが、複数一致した。

「これ——」

「一致している」

「年代も確認できますか。いつ頃から変化していたか」

 クロウが記録を確認した。

「十五年前の記録にすでに変化ありという報告がある。処理されているが、報告があった」

「十五年前から——ランドで老人たちが記憶を失い始めた頃からずっと、記録があったんですね」

「あった。でも「問題なし」として処理された」


 俺は少し怒りを感じた。感情だから、記録帳には書かない。でも、怒りがあった。

 知っていて、黙っていた。あるいは知らなかったが、知ろうとしなかった。

「クロウさん、この記録のコピーを作れますか」

「時間がかかるが、できる」

「お願いします」

「君はこれで何をするつもりだ」

「今は記録します。いつか正式な証拠として使える形にしたい。それは今日ではないかもしれないが」

 クロウが少し間を置いてから言った。

「俺も協力する。協力できる範囲で」


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