第37話 ネベルへの道
ネベルへの道は、途中から霧が出始めた。
最初は軽い靄だった。朝に出て、昼頃から霧が濃くなった。夕方には道の先が見づらいくらいになっていた。
同じ道を行く旅人が数人いて、みんな足を遅くしていた。
「ネベルはいつもこうなのか」と俺は隣を歩く男に聞いた。
「そうだよ。あの辺は山から霧が来る。地形の問題だ」
「晴れる日はないですか」
「あるよ。でも一年の半分くらいは霧だ」
夜、宿に泊まった。
この日は野宿できる空がなかったので、宿屋を使った。小さい場所で、旅人が三人いた。夕飯を食べながら話した。
「星図師か。珍しい」
「そうですか」
「星図師が内陸を一人で歩くのは珍しい。海なし地帯に用事があるのか」
「ネベルに」
「ネベルか。星図師の学者が多い町だな。議論ばかりしている印象があるが」
「研究都市ですから」
「あんた、まだ若いな。一人で大丈夫か」
「大丈夫です」
翌日も霧の中を歩いた。
霧の中では星が見えないから、昼間の記録を書いた。道中で目についたこと、高度の変化(内陸に入ると山に近くなる)、周囲の植生の変化。
空を観測できなくても、地上の記録はできる。
補足欄に書いた。
霧は地形の問題だという旅人の話。でも、ヴェラが「霧は人工的に発生させられていた。記録を守るための偽装」という話を第二部で明かすと俺の記録帳に書いてある……いや、それは未来の俺が書くことだ。今は地形の問題として記録する。
ネベルに近づくにつれ、行き交う人間が増えた。
学者風の人間が多かった。分厚い本を持っている人、紙束を抱えている人、議論しながら歩いている二人組。前の世界の大学キャンパス周辺に似た雰囲気があった。
王立星図院の分院がある。宿が比較的多い。旅費がかかるが仕方ない。
町に入る前に、一度立ち止まって空を確認した。霧の中でも、厚さが薄いところを探せばなんとか見える。
南西の方向。
暗い。はっきり暗い。ランドで見たときよりも、さらに落ちている。
記録した。
ネベルへの道中での南西星輝度変化記録。地点ごとの比較。
ファーレン→ランド→ネベル近辺の三点で、同じ星を観測した。距離が開くほど見え方が変わるが、純粋な輝度は落ちている。傾向は一致している。
ネベルに入った。
石造りの建物が多く、道が整備されていた。港町のファーレンとは全然違う。静かで、整然としていた。
まず宿を探した。それから図書館の場所を確認した。ヴェラが言っていた司書、イヨ。まずその人物に会うことが優先だ。
図書館は町の中央にある大きな建物だった。外から見ても古い建物で、何百年もある場所だと分かった。
明日、行ってみる。




