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星図師は空の欠けを知っている  作者: ごま
第二部:消えた星を追う旅

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第34話 記憶の穴

 ランドに三日泊まった。

 宿は村の農家に頼んで、一部屋を借りた。旅の星図師が泊まることは珍しいらしく、少し話題になった。おかげで、俺が調査していることを知った村人が次々と話しかけてきた。

 聞けば聞くほど、同じことが繰り返された。


 村の広場で話した老人は、七十代の元農夫だった。

「二十年前の頃のことが、頭の中からきれいにない」

「どんな感じですか」

「映してある絵が消えたみたいだ。前も後ろも絵はある。でも真ん中の三年分だけ、絵がない」

「その三年間、村にいましたか」

「いたと思う。家族が言うにはいたそうだ。でも俺には分からない」

「何か、その時期に普通ではないことがあったと聞いていますか」

「…旅の人間が来ていたという話は聞いた。何人か、村に泊まっていたらしい。星を調べていたとかで」

「星を調べる人が来ていた?」

「そうだ。でも詳しくは知らない」


 旅人が来ていた。星を調べていた。

 記録帳に書いた。

 別の老婆に聞きに行った。この村で生まれ育った八十代の女性で、記憶の問題はない。でも、二十年前のことをよく覚えていた。

「あの頃、変なことがあったんだよ」

「どんなことですか」

「夜になると、空が妙に暗くなる夜があった。星が全然見えない夜があってね。曇ってもいないのに見えない夜が、何度かあった」

「何年続きましたか」

「三年くらいかな。その後は普通に戻った。でも、その間に記憶がなくなった老人が続出して、村が少し騒ぎになった」

「医者はなんと言いましたか」

「歳のせいだと。でも同じ年の人間が同じ時期に同じように記憶をなくすのがおかしいと思う人もいたが、結局分からないままになった」


 星が見えない夜。記憶がなくなった老人たち。

 全部が同じ三年間に集中している。

 俺は宿に戻って、記録帳を広げた。

 タイムラインを作った。

 二十年前。星が見えない夜が複数回発生。記憶を失った老人が村に五人以上。旅の人間(星を調べていた)が村に滞在。

 星が消えていく現象は現在も続いている。二十年前に何かがあって、それが今も続いているのか。または二十年前に大きな変化があって、その後も小さい変化が続いているのか。


 三日目の夜、村の外に出て観測した。

 ランドは内陸だから、ファーレンとは見える星の高さが少し違う。でも南西の方向を確認した。

 あの星は——見えた。

 でも暗い。ファーレンで最後に記録したときより、明らかに暗い。三日分の移動による角度変化だけでは説明できない差だ。

 それとも、三日の間に低下が進んだのか。

 記録した。


 翌朝、ランドを出る前に、最初に話しかけた老婆に挨拶した。

「父と話して、何か分かりましたか」

「調査の途中なので、今はまだ分かりません。でも、記録はしました」

「記録して、どうするんですか」

「積み重ねます。いつか誰かに見てもらえるくらい積み重なったら、何かが変わるかもしれない」

「いつかというのは、遠い先ですか」

「分かりません。でも記録は続けます」

 老婆がうなずいた。

「父さんの記憶がなくなったことを、誰かが記録してくれたというのは、少し救われる気持ちがあります」

「消えた記憶も、こちらに記録があります。消えていないということになります」


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