第137話 アリシア、マーちゃんの推理を聴く
「民の不安を取り除くために、我ら女神が積極的に祝福を与える必要があるのではないのかの?」
マーちゃんがとっても良いことを言っている!
そうだよね。
みんな不安なんだと思う。なんにもわからないのに、良くない方向に進んでいるのだけは見えるんだもんね。
貴族たちは『君主制廃止』で荒ぶっているし、スミナルド陛下がぶち上げた新法のせいで、そこかしこで失業した元兵士たちが暴れて治安が悪くなっているし。
「チーの見える範囲では、そのような不安を訴えている民はおりませんわ」
見える範囲って……。
星全体を見渡せる女神様が何を言っているのやら……。
「あくまでもチーちゃんの……星の女神・チテネティアの決めた土地しか見ぬと? その外には目を向けようとしない、ということなのじゃな?」
「おっしゃっている意味がわかりませんわ」
うわー、女神様同士の舌戦が怖い……。
最初とっても仲が良さそうだったのに……。
お互い譲れないものがあるってことなんだよね、きっと。
でもチテネティア様が西部地域の土地にこだわっているのはなんでだろうね? 星の女神様なんだから、パストルラン王国全体も見えているはずだし、その外にあるほかの国々、もしかしたら別の空間にある国も見えているものなんじゃないの?
「もしやチテネティア……お主、捨てたのか……?」
それまで寝そべっていたマーちゃんが跳ね起きる。
チテネティア様の近くまで歩いていき、至近距離でそのお顔を観察し始めた。
「おっしゃっている意味がわかりませんわ」
マーちゃんに険しい表情で睨みつけられても、チテネティア様は笑顔を崩さない。
「そうでないのであれば……分け与えたか……。切り分けた……。もしや後継者か? それはないか……」
一言一言、ゆっくりと言葉を紡ぎながら、チテネティア様の顔色を窺っている様子。でもチテネティア様は笑顔を崩さなかった。
さっきからマーちゃんは何を言っているんだろうね。
でも何か、マーちゃんが想定していなかったことが起きているのかもしれない?
「スークルは少し前、このパストルラン以外の国についても、ある程度状況を把握しておるような物言いをしておった。しかし最近は『何もわからない。国があるかも把握していない』という発言を繰り返しておる。我にはそれがどうにも腑に落ちなかったのじゃ……」
そうだっけ?
スーちゃんはずっと「ほかに国があるかはわからない」って言っていたような……? そういえばミィちゃんが「ほかの国には神がいたり女神がいたり、いろいろなものを崇拝する国がある」みたいなことを言っていたような?
「ミィシェリアは、スークルからそういう情報を共有されているに過ぎないのじゃ。対外的な話は、チテネティアからスークルに流れ、その後、我らほかの女神たちに共有されることがほとんどじゃったからの」
「ふーん?『女神様の間に上下関係はない』みたいな言っていたけれど、やっぱりそういうのはあるんだ?」
情報の流れが上限関係なんじゃないの?
「女神の特性の違いでもあるからの。チテネティアはパストルラン王国の『星の女神』以外にも別の顔を持っておる。そこからの情報を、国を守るために生まれた『戦いの女神』が受け取る。これは自然な流れじゃった」
まあ、そう言われると役割の違いっていう感じはするね。
いきなり愛の女神様とか、水の女神様が受け取ってもなーって。
「じゃがの……。最近……いつからだったかは思い出せぬが、そういった情報が流れて来ぬようになった……気がするのじゃ。たまたまかもしれぬが……」
自信はなさそう。
「それがさっきマーちゃんが言っていた、『捨てた、分かれた』みたいな話につながるの?」
いまいちよくわからない……。
「我の想像が正しいのであれば、そこに居るチーちゃんは、以前のチテネティアとは違うモノじゃ」
「違うもの……?」
どういうことだろう。
別人……別女神様? もしかして、ニセモノってこと⁉
「違うモノと言ったのは、まったく異なる存在という意味ではないのじゃ。わかりやすく言うなら……そうじゃな……存在が小さくなった。縮小した。分割されたうちの1つ。そういう意味なのじゃ」
つまりどういうこと……?
女神様が分裂して並行的に行動するのは普通なんじゃないの? ミィちゃんは各地方の神殿に一斉に現れてみんなに神託を与えているって言っていたよ?
「それは分裂してもいずれ戻るから並行存在なのじゃ。我が言っているのは、チテネティアは分かれたまま戻っておらぬのではないか、ということなのじゃ……」
前に異空間に落ちた時にミィちゃんが千切れてミニィちゃんになった、みたいな感じかなー?




