第138話 アリシア、チテネティア様の正体を知る
「まああの時のミィシェリアに近いじゃろうな。やはりそうじゃろう。チテネティア……お主、力を失ったな……?」
マーちゃんの推理。
チテネティア様は以前のチテネティア様ではない。
チテネティア様は分裂、または権能の譲渡など、なんらかの手段で以前持っていた力を失っている状態にある、と。
でもそんなことってありえるの……?
「マーちゃんが言っている『力』って女神様の力ってこと……?」
もしそうなら、とんでもない問題なんじゃ⁉
「いいや、この結界の維持や、民に与えている加護を見る限り、女神としての力は失っておらぬようじゃ」
「じゃあ何の『力』のことを言っているの?」
「むしろそれ以外のことじゃな。女神としての力――そのほかの概念すべてを捨てたんじゃろ?」
女神としての概念以外……?
「それって……このパストルラン王国以外を管理したりするっていう、星の……?」
「なあ、そうなんじゃろ? 我ら女神同士は同格であるがゆえ、お互いに何を考え、どんな力を持っているかを量ることはできぬ。じゃから、今の今まで気づかなんだ……。この地に住まう民しか見ていないのではない。もはやチテネティアには、ほかの土地や国の状況を見ることができぬのじゃ……」
「チーは星の女神。この地に集う民に祝福を与える女神です」
絶やさぬ笑顔がむしろ不気味に見えてくる……。
「この地、というのは文字通りこの地域のことを指しておるのじゃろう。以前は星全体のことを言っておった。そのはずなのじゃが……」
マーちゃんが小さく首を振り、チテネティア様から視線を外した。
「いつからなのじゃ? いつから分かれた?」
「チーの中にその答えはありませんわ」
「つまり……お主は分かれて切り捨てられた側なのじゃな?」
「マーナヒリンがそう思うなら、そうなのかもしれませんわね」
否定をしない。
つまりは肯定。
たとえるなら、エヴァちゃんの子端末が切り離されて親端末に同期できない、みたいな状態ってことなのかな。だから親端末の考えはわからないし、自分が切り捨てられた状態なのかもわからない。
「残っているのが、このパストルラン王国の西部地域を管理守護する『星の女神・チテネティア様』としての役割ってことですか……」
名前は『星の女神』だけど、もう星のことは見えない女神様……。
「だったら余計にほかの女神様たちと協力してやっていかないといけない状況なんじゃないですか?」
これまでみたいに、女神様としての力もあって、ほかに星全体を見る力もあって、なんでもわかっていた状態ではないってことですよね。情報共有して、助け合って、そしてこのパストルランに祝福を与えてくださらないと……。
「アーちゃん。それを言っても無駄じゃ」
「なんで⁉」
「今のそやつが、このパストルランにおける『星の女神・チテネティア』としての役割しか持っておらぬのであれば、それはもう残りカスのようなものだからじゃ」
残りカスって……。
「ただこの西部の土地においてのみ、自らの信徒に対して祝福を与えるだけの存在じゃからな。国にも政治にも興味がなく、その力もないとなれば何も期待はできぬよ。ただこの土地を守ってくれていればそれで良いと考えるべきじゃろうな……」
言い方が冷たすぎない?
もうちょっとこう、お願いしたら何とかなるとか……?
「なんともならんの。だって残りカスじゃし」
「こんなふうに言われてますけどー? 『星の女神・チテネティア様』的には言われっぱなしで良いんですか? もっとやれるぞ、うぉー! みたいなのはないですか?」
と、煽ってみたりして?
「チーは静かに過ごしたいのです。この土地に移住してきたいという民がいるのであれば、喜んで受け入れましょう。チーの信徒には、永続するしあわせを与えたいと思います」
「難民を受け入れてくださるのはうれしい、ですが……」
なんかこう……閉鎖的ですね?
この土地を新政府で運用していくのは……ちょっと骨が折れそう。
すんなり自治州に組み込めるのかな。
「あ、それじゃあチテネティア様は、シアヌのことってぜんぜんわからない感じですか……?」
パストルラン王国以外の国からやってきたと思われる【魔王の末裔】の話は……。どこかほかの国に【魔王】がいるとか、そういう話をお聞きしたくて……。
「存じ上げませんわ。ですが、この星に住まう者であれば、すべてチーから生まれた者です。チーがママであることには変わりありませんわ」
ううーん。
その微笑みは、愛にあふれたママっぽいんですけどねー。
要は、「何か知らんけど、そこにいるなら私の子だよ」ってことですよね。
そういう答えを聞きたかったわけじゃないんだよねぇ。
「チーは、【魔王の末裔】のことよりも、アリシアに興味がありますわ。アリシアと話がしたいのです」
「わたしですか⁉」
急になんですか⁉




