第100話 アリシア、2つ目の選択肢に魅力を感じる
≪2つ目の選択肢ですが、『新生パストルラン』での生活を望まない貴族たちの受け入れ先候補として、『ウルティムス』国と話をつけてありますので、そちらに移住していただくことができます≫
えっ、そうなの⁉
わたし、途中で全部ノーアさんにぶん投げて王都に帰ってきちゃったから、あの後どうなったのか気になっていたんだよね。
まだ『ダーマス』の近くのあそこに、『ウルティムス』の大使館ってあるの? みんなあのお城で生活している?
≪ウルティマさんとシャーレさんは、アリシアが去ってからほどなくして国にお帰りになりました。ですが、サナさんたち元反乱軍のみなさんの大半は残っていらっしゃいますね。仮初ではなく、永久に使用できる肉体の貸与を希望されています≫
おお、わたしたちの生活様式を気に入ってくれた人たちがいるんだね。
魂だけの存在から肉体のある存在に戻ったら、それは「進化じゃなくて退化だー」みたいなことを叫んでいたのに、まあ、楽しいならそれで良いよね。
≪サナさんたちとは逆に、貴族の方々が魂だけの存在となって『ウルティムス』国で生活をすれば、個の概念が薄れていくことになります。そうなれば、貴族や王族や平民などという階級制度のことなどは気にならなくなるでしょう≫
んー、まあ、そうかも……でもそれって、かなり大きな決断だよね……。
普通に考えて、一度肉体を捨てちゃったら、もう2度と戻れないわけでしょ? ある意味死ぬのと同じなのかなって。
≪もし魂だけの存在が合わなかったら、クーリングオフ制度もありますから、一定期間内であれば肉体に戻ることができます≫
マジ⁉
それはお得だね。あとでちゃんと肉体に戻れるなら、わたしも魂体験してみたいかも!
≪ただし、一度肉体と魂を切り離してしまっているため、元の肉体に戻ることは不可能です。元の肉体に似せた『ホムンクルスの体』に魂を宿らせるということになります。アリシアにはおすすめしません≫
はいはい、そんなことだろうと思ったよ。
つまりは、サナちゃんたちがやっているのと同じ状態ってことだよね。
危なかったわ。
一度魂だけの存在になったら、強制的にエヴァちゃんの見た目にさせられるってことでしょ。
≪いいえ。貴族のおじさんたちが私の完璧で美しい見た目のボディに入るのは生理的に無理なので、おじさん用のダルンダルンボディをノーアさんに作っていただく予定です≫
生理的って……。
まあ、でもたしかにわからないでもない、か。だけどおじさん用のダルンダルンボディ……。いっそのこと、クーリングオフ制度を利用した人は、全員猫にしておけば良いのでは?
≪わかりました。そのように提案書を書き換えておきます≫
ヤバ。逆に人気出ちゃったらどうしよう。
人間でいることに疲れたら猫になってのんびり暮らす。
あれ? もしかしてこれって、けっこうアリなんじゃない?
≪ただし、一度パストルラン王国から離脱の手続きを取っていますので、あくまで『ウルティムス』国の国民となっていることに変わりはありません。ホムンクルスの肉体を得たとしても、『ウルティムス』国大使館の外に出ることは許可されませんので注意が必要です≫
あそこは治外法権だから、『ウルティムス』国の国民が滞在可能な場所になっているもんね。まあ、空間も拡張されていてとっても広いし、猫がのんびり暮らすのには何不自由ないんじゃないかな。
わたしももうちょっとだけがんばったら、そうしようかなー。
≪残念ながら、こちらは現貴族階級の方のための『人生再スタートプラン』ですので、平民のアリシアには適用されません≫
悲しい。
こんなところでも身分の差が……。
≪地位と特権と私財を放棄される貴族の方々が、不利益を被らないための策ですので、どうかご理解ください≫
冗談だって。
それはよくわかっていますよー。
本気で猫になりたかったら、自分で自分の体を『創作』するし、わたしにそんなプランはいらないからね。
≪アリシアが猫になったら……裸で生活をするんですね?≫
え、あー、猫って服は着ないもんね。
≪ずっとアリシアの裸が見放題……≫
その場合は猫になったわたし、だからね? 見た目は完璧に猫だよ?
≪周りの人たちの目を潰して回らなければいけなくなりそうです≫
みんなの迷惑になりそうだから、やっぱりわたし、猫になるのやめます……。
≪まずは、「服を着ない全裸の世界が正しい」という、大規模な『常識改変』を実行したいと思います≫
それはやめて?
それこそダルンダルンボディのおじさんの裸とか見たくないし。
≪アリシア≫
何よ?
≪すぐにエッチな話題のほうに脱線しないでください≫
ちょっとちょっと! 今の話の発端はわたしじゃなくない⁉
≪最後に3つ目の選択肢ですが――≫
待ちなさいって! 今のは完全にエヴァちゃんが犯人だからね!




