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第91話 アリシア、ランキング1位に輝く

 みんなが楽しく暮らせる世界について考えてみる。


 それって、どんな世界だろうね? 


「自分で言っておいてなんだよって言われるかもしれないけれど、ちゃんとはイメージできていないかなーって」


≪自分で言っておいてなんだよ~≫


 はいはい、お約束お約束。


「だってさー、人が10人いたら、10通りの考えがあるんだよ? つまり人の楽しさは10通りあるわけでー。誰か1人の楽しさを100%叶えたら、たぶん楽しい度合いが低い人って出てきちゃうと思うのね。でも、みんなの楽しさが重なるところだけを探そうとすると、ものすごーく小さい楽しさだけが残るから、結果全員そんなに楽しくもない、とかね……」


≪アリシアは今楽しいですか?≫


「今? エヴァちゃんとお話するのは楽しいよ?」


≪それはありがとうございます。私が質問した『今』というのは、もう少し広めの期間のことを指しています。たとえばここ数カ月くらいを思い出してみて、どう振り返りますか?≫


「数か月かー。なんかもうだいぶ昔のように思えてきたけれど、ストラルド様がいらっしゃらなくなってから、まだ1カ月くらいしか経っていない……んだよね。やっぱり……楽しい、とは言えないかな。忙しくして忘れたいなって思うけれど、やっぱりふとした拍子に思い出しちゃう。優しいお顔。笑い声。王様なのに気さくで……わたしの話もちゃんと聴いてくれた……」


≪私は、陛下の死期が刻一刻と迫っていることについて、お傍にいて観察していたので理解していたつもりです。しかし、理解していたことと受け入れられることとは別なことなのだということを知りました。とても悲しい、という感情を真に理解することになりました。人の死というものに直面して、私はまた1つ、人のことを理解できた気がします≫


 エヴァちゃんだって悲しいんだよね……。

 わたしの分身なんだし、体はロボでも心は人と同じ。


「人って簡単に死んじゃうんだよね……。わたしの前世とは違って、この世界には女神様たちが近くにいらっしゃるから、『まだだよ』って時には送り返してくれたりもするから、そこのところはまあ、楽しい、のかな?」


 んー、やっぱり楽しいとは違うかも。

 安心?


≪ドリーちゃんがかわいそうです≫


「今スレッドリーのことを話題に出すのは違うでしょ!」


 別にそこに安心を覚えているわけじゃないんだからねっ!


≪アリシアが殴って、スークル様のところに送られては送り返されてくるドリーちゃんが気の毒です。いつか本当に死んでしまうのではないかと思うと、不安で不安で夜も眠れません。ああ、ドリーちゃん。かわいそうなドリーちゃん≫


「わたしが殴って死にそうになったことなんて数回しかありませんー! だいたいはほかの人とか……リンちゃんとかが原因ですからね! うん、そうだよ! たぶんリンちゃんのほうがスレッドリーに厳しいし! それを言ったらエヴァちゃんだって何回もやってるじゃないのさ!」


 夜も眠れない、あたりのボケは華麗にスルーしますからね!


≪それではここで、大発表します。ドキドキ! ドリーちゃん女神様送りランキング~~~≫


 何よ、そのランキング……。

 しょうもないなー。


≪第5位:リンレー様15回。第4位:ドリーちゃんのお姉様方(5人合計)31回。第3位:ラダリィさん38回。第2位:ナタヌさん109回。そして、栄えある第1位は、アリシアの233回でした≫


「そんなに⁉ ウソでしょ……っていうか、エヴァちゃんが入ってないじゃん! 不正だ不正だ!」


≪私調べですが、エヴァシリーズ合計で、ドリーちゃんを女神様送りにした回数は0回でした。どこかおかしな点がありましたか?≫


「さすがにそれはおかしいでしょ! いつもあれだけボコスカ殴って『王子よ、死んでしまうとはなさけない』ってやってるじゃないのさ!」


 1回や2回や10回や100回じゃないのは知っているんだからね!


≪いいえ、あれはすべて私の自作自演です。スークル様の声色を真似て、ドリーちゃんのことを別空間に転移させて蘇生していたのでした。残念、ドリーちゃんは死んでいませんでした~≫


 そんなの反則じゃん!

 そういうのありなの⁉


≪ありも何も、女神様送り自体、人としてなしだと思いますが≫


「くっそぉ! ロボにまた人の在り方を説かれたわっ!」


≪アリシア、お口が悪うございますわよ≫


 うっせ!

 

「うー、勝手に蘇生して良いなら次からはわたしもそうするわ! なんなら毎回蘇生するのも面倒だし、自動蘇生するようにスレッドリーの体を改造しておこうかな⁉」


≪そうなると、最強のドリーちゃんが生まれてしまいますが≫


「女神様送りにしてスーちゃんに怒られるくらいだったら、先にそれくらいやっても一緒でしょ! よし、決めた! 今すぐ改造しちゃおう!」


≪Yes, My Lady. ドリーちゃんの体に自己修復術式を埋め込みました。肉体の破損が80%以下の場合、即時自己修復が実行されるように設定しました。また、テロメアの自動延長を設定いたしました。理論上、半永久的にテロメアが再生を続けます。仮の寿命としてテロメアの自動延長期間を1000年に設定しました≫


 ちょっと、何を勝手に⁉


「ずるいよー。わたしのやることがなくなっちゃったじゃん!」


≪アリシアよりも私のほうが人間の体に詳しいので、適切な処置が行えたと思いますが、どこか問題があったでしょうか?≫


「問題は……ないけど……わたしがやりたかったっていうか……」


≪ドリーちゃんの体をまさぐりたかったんですね。気づかず出過ぎた真似をしました≫


 言い方ー!


≪なお、本件は事前に女神様方の過半数の承認を得ておりますので、あとで怒られる心配はございません≫


 マジぃ? 根回し良すぎない?

 ていうか、よくミィちゃんがOKしたね……。


≪賛成4、反対1、無回答2でした。ミィシェリア様は反対票を投じておられましたが、数の暴力で押し切りました≫


 数の暴力って……それってホントに大丈夫なの……?


≪スークル様の負担が大きいことを理由に、ほかの女神様方の賛成を得ることができましたので問題ございません≫


 ううーん。まあ、スーちゃんに迷惑をかけていたのは事実だから……ミィちゃん許してね?


 あ、無視だ。

 けっこう怒っているかも……。


≪愛の女神様ですから、いずれきっと愛を持って受け入れてくださるでしょう≫


 そういうものかな?


≪そういうものです≫


 じゃあ、そのうち機嫌が直ることに期待しようかな。


≪では、改めてもう1度質問します≫


 ん、質問?


≪アリシアは今楽しいですか?≫


 うわ、完全に忘れてた!

 めっちゃまじめな話をしていたんだった!


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