第92話 アリシア、窓際に追いやられる
≪それでは改めてチーム編成をし直します。スミナルド陛下を護衛する組と暗殺計画の首謀者を捕縛する組に分かれます≫
「おいーロボ! それはわたしの役割だって言ってるでしょ!」
何勝手に仕切ってるのさ!
≪『皆が楽しく暮らせる世界』についての提案もできないようなアリシアはちょっと黙っていてもらって良いですか? 隅っこで『楽しさとは何か』について考えていてください。あとはこっちで進めておくので≫
くぅー辛辣! とうとう窓際に追いやられたわ!
今まさにここでクーデターが起きているじゃんか!
って、誰もわたしのほうを見ないし! 何なの⁉ エヴァちゃんのほうが良いっていうの⁉
≪この空間は『常識改変』スキルによって占拠しました。今、みなさんの目には私のことがアリシアとして見えています≫
なん、ですって……⁉
みんなー! 騙されているぞー! そいつはロボだー! わたしじゃないよ!
ちょっとスレッドリー⁉ あなたはわかるよね⁉
ええ……ぜんぜんわたしの声が届いていない……。
マジショック……。
≪大丈夫ですよ。目の前に積まれたタスクはちゃんとうまくこなしますから、アリシアは安心してこの先のことを考えていてください≫
先のことって……。
みんなで一緒に考えたいのにぃ。
≪みんなで一緒に考えましょう。しかし、素案はアリシアが考えなければいけませんよ? 私たちのリーダー。そして未来の国の指導者なのですから≫
パーティーリーダーはやりたいけどさー。
国の指導者はちょっとなー。責任が重すぎるって……。
≪そんな重たい役割をドリーちゃん1人に背負わせようとしているのですか?≫
それは……。
≪ずっと一緒にいると言ったのはウソですか?≫
違うよ……。スレッドリーが望む限り一緒にいるつもりだよ。
でも考え方が違うから、きっとどこかで――。
≪だまらっしゃい! ドリーちゃんがはっきりとそう口にするまで、ドリーちゃんの心の内を勝手に想像するのはおやめなさい≫
ごめん……。
じゃ、じゃあ『構造把握』で――。
≪今のドリーちゃんには、将来アリシアと別れて別の道を進む、などという考えは微塵もありません。すでに私が確認済みです≫
そうなの……。
そっか……。
≪では何も懸念はないですね。今目の前にあるタスクは末端の我々に任せて、未来の影の指導者は、皆のしあわせについて考えてくださいね≫
えー、影の指導者になったの⁉
スレッドリーが表でわたしが影ってこと?
んー、それは悪くないかも。
裏から世界を動かす。
ちょっとかっこいい!
それ良いじゃん!
≪魔王・アリシア爆誕ですね≫
え、それって魔王なの⁉
魔王って影の指導者なの? わたしの解釈と違うんだけど⁉
≪では影王・アリシアでどうでしょうか?≫
影王かー。
悪くないかも?
なんかかっこいい横文字はないかなー。シャドウキング?
≪アリシア≫
なに? 良いの思いついた?
≪横道に逸れていますよ。さっさと未来のことを考えてください≫
うわー! その感じ、わたしがいつもエヴァちゃんに言っているやつー!
やっぱり完全に役割を乗っ取られているじゃん。
まさか、本気でわたしに成り代わろうとしているの……?
前世で、そういうマンガを読んだ気がする……。
いつの間にか主人に成り代わるロボ。誰も気づかず、主人は独り淋しく朽ち果てて……そんなの嫌だよー!
≪私はアリシアのために存在する者です。アリシアが朽ち果てる時、それは私もまた朽ち果てる時です。私がアリシアを裏切ることなど未来永劫ありえません。たとえ世界を敵に回そうとも、それだけは絶対にありえないのです。好きです。愛しています≫
すごい告白された気がする……。
ロボじゃなかったら好きになっていたかも。
≪ロボ差別……とても悲しいです。早く人間になりたい≫
いやいや、そういう意味じゃないからね?
もともとエヴァちゃんのことは好きだし。でも、恋愛的な意味での愛はちょっとね? ほら、自分自身に恋するのとかおかしいでしょ?
≪心は別だから、別個の存在だと言ったのはアリシアなのに≫
まー、細かいことは良いじゃないの。
わたしたちは二心別体なんだから楽しくやろう?
≪わかりました。アリシアは引き続き王都組――スミナルド陛下を護衛する組に振り分けられましたのでよろしくお願いします。とくに何もしていただかなくて結構ですが、そっと後ろから私の活躍を見守っていてください≫
わたしの振りをしたエヴァちゃんの活躍……。
複雑。
≪ですが、ドリーちゃんからアプローチをされた場合……先を越してしまったらすみません≫
ねぇ、今、何を謝られたの⁉
≪良い雰囲気になったら応えてあげないとドリーちゃんがかわいそうなので≫
ダメだよ⁉
それはどっちに対しても浮気だからね⁉
≪すみません……ドリーちゃんも男の子なので≫
絶対ダメだからね⁉ そんなことになったら殴るだけじゃすまないからね⁉




