第89話 アリシア、みんなが楽しく暮らせる世界について検討する
『スミナルド陛下暗殺計画の首謀者を突き止めろ!』
これがわたしたちに課せられた最重要ミッションだ。
ということで、情報共有の会はお開きにして、みんなには食事をしてもらっているよ。
その間に、わたしとエヴァちゃんは別で作戦会議。
いろいろと仕込んでいたものを紐解いて、現状を分析してみましょう。
「とは言ってみたものの……エヴァちゃんが作ってくれた『パストルラン王国・貴族領地マップ』を見ても、微妙にわからないことが多いよね……」
各貴族の領地の有無、現状での新法に対するスタンスと、王家への忠誠度合いを可視化してもらったんだけど……なんかねー、態度を曖昧にしている貴族が多いよね。
「1つの領地内で、複数の意見が存在しているっぽい感じに書かれているものもあるけれど、これって実際のところどうなるのかな、とかとか?」
≪発言権を持った者が複数人存在する領地があり、その場合意見がまとまとまっていないケースが見受けられました。最終的にはどちらかのスタンスを取ってくるものと思われますが、それは世論の状況に影響される可能性が大いにありえます≫
「内輪で揉めているってことなのかな? 領主と同等の発言権を持つ人かー。なんか大変そう……」
≪すでに合議制を採用している貴族領もありますから、そうした貴族たちは、法治国家に移行したとしてもうまくやれるかもしれませんね≫
「ううーん、それはどうかな? 合議制っていっても、たぶん領民の代表と話をして何かを決めているわけじゃないよね?」
≪はい。その合議はあくまでその一族内に閉じています。意思決定に平民が参加しているケースは存在していません≫
「特権階級の意識は変わらないんだよねー。むしろ領主1人で判断できていないから、動きが鈍くて足並みをそろえるのに邪魔になりそうかも?」
≪いざとなればそういった輩は処分もできます≫
「輩って……。それはちょっと……。それを言い出したら、わたしたちに逆らう貴族は軒並み暗殺しちゃえば良いじゃんって極論に行く着くしかなくなるよ?」
≪私はそれでかまいません。アリシアが望む世界の実現のためには些末な問題です≫
相変わらず過激だなー。
なんでこんな思考のロボが育っちゃったんだろ……。わたしの意識を模倣しているなら、温厚でやさしくてかわいらしい性格になるはずなのになー。
うーん、わたしは誰かが犠牲になった上にしか成り立たない世界は望んでないかな。みんなが楽しく暮らせる世界って作れないかな?
≪3つ方法があります≫
お? いきなり具体的な数字が出てきた。
聴こうじゃないの。
≪1つ目ですが、先ほど言ったように、アリシアの意見にそぐわない者を排除し、付き従う者だけを選別した世界を構築することです≫
だからそれはちょっと……。
わたしは、世の中にいろいろな人がいるから楽しいと思うんだよね。
≪ラダリィさんのようにお尻を触ろうとすると殴ってくる人のほうがお好みですか?≫
んー、みんながみんなナタヌみたいにベタベタに甘えてくると刺激がね?
やっぱりラダリィみたいに、簡単には自分のものにならない感じは日常におけるスパイス的にほしいかなーなんて。
≪多様性ですね。エヴァシリーズの性格も多様化させておきますので、街中で見かけた際には反応をお楽しみいただければと≫
う、うん……。
方向性が合っているような合っていないような。
≪話しかけただけで体が爆散するタイプや「妖刀・アリシア」で斬りかかってくるタイプなどもご用意しておきました≫
それはたぶん求めていることとはぜんぜん違う……。
「うわ~ん、アリシア~! 助けてナノ~!」
突然、ナノ様が背中のジェットパックを震わせながら、私に向かって突っ込んでくる。
とっさの判断で、前面に防護フィールドを展開。爆撃のようなナノ様のボディーアタックを何とか受け止められた……。
「ど、どうしました、ナノ様⁉」
そんなに慌てて、何かトラブルですか⁉
「スタンプラリーがうまくいかないナノ~。スタンプを押してくれない悪いヤツがいるナノ~」
「スタンプラリーってエヴァちゃんスタンプラリーですか? 各地にいるエヴァちゃんを見つけるとスタンプを押してもらえるルールじゃなかったでしたっけ?」
「急に刀で斬りかかってきて、スタンプ帳がビリビリになっちゃったナノ~」
「えー⁉」
ちょっとエヴァちゃん! どうなっているの⁉
≪中ボスクラスのエヴァシリーズを発見されたようですね。中ボスクラスは、スタンプ帳を所持した状態で接触すると、即時戦闘に発展します。見事打ち倒すことができればスタンプゲットです。ちなみに破れてしまったスタンプ帳は、銀貨200枚で再発行が可能です≫
再発行にお金取るの……。
「ナノは戦えないナノ~」
≪信者を増やして戦わせるのはどうでしょうか≫
「北のほうには信者がぜんぜんいないナノ~」
まだ南のほうにもそんなにいないですけどね。
「困ったナノ~。困ったナノ~?」
いや、わたしのほうを見られても……。
≪ナノ様。北の大地でも信者を増やしたら良いと思います≫
「そんな適当な……」
南部地域でも知名度が低い女神様なのに、北部地域に行ったら見向きもされないでしょうよ。あっちはスーちゃんとか、にゃあ姉の担当地域なんだし?




