第87話 アリシア、デオミンガル組と再会する
3日後。
わたしたちは予定通り、王都近くの街道沿いにいた。
デオミンガル組との待ち合わせに、人気の少ない場所を指定したからね。
予定時刻より遅れること30分ほど。
「おー、あっちの馬車が見えてきたね」
小っちゃくてかわいい最新型のジェットスキー馬車!
機械仕掛けの馬もだいぶリアルになっているよー。草も食べるし。
≪脚質は左から、差し、逃げ、逃げ、先行、追い込み、逃げとなっています≫
その設定って、何か意味があるの?
≪レースになった時に有効かと≫
ちょっと意味がわからない。
あー、そういうこと? この国で競馬を流行らせようって?
≪賭け事は胴元が勝つ。最初に始めればガッポガッポです≫
うむ……。
その件については、真剣に考えてみよう。
まずは競走馬を育成するところからかな。
あんまりやりたくはないけれど、若干遺伝子をいじって長距離耐久から短距離スピード型に変えて……あーでも、各地方で育て方に特色が出るようにしたいね。自然交配でも一定確率でレア個体が出現するように調整を――。
「アリシアさん! ただいま戻りました!」
ナタヌが御者席から飛び降りてくる。
久しぶりに見るナタヌは、変わらず元気いっぱいだ。
「おかえりおかえりー。みんな変わりないかな?」
ラダリィが御者席にいない。客車のほうにいるのかな?
「ナタヌ、戻ったか。ラッシュとエイミーンとは会えたのか?」
スレッドリーが不安そうな表情で話しかける。
まあそこが1番気になるところでしょうね。
でもナタヌのこの表情を見れば、何も心配することはないんじゃないかな?
客車の扉が開け放たれ、姿を現したのは――。
「殿下! お久しぶりでございます!」
ラッシュさんだ。
髭が生えて、古びたマントを羽織って、ワイルドなイケメンにジョブチェンジしたみたい。
「おお、ラッシュ! 久しいな! 息災か⁉」
スレッドリーが駆け寄っていく。
「はい! おかげさまで! 妻と2人、なんとかやっております」
妻!
くぅー! なんかもう、その響きだけで最高だね!
続いて客車から顔を出したのはエイミーンさん。
ラッシュさんが手を差し伸べて、ゆっくりと2人が降りてくる。
「殿下……ご、ご無沙汰しております」
エイミーンさんは視線を彷徨わせて、若干おどおどしていた。
「エイミーンも息災か。良かった。ああ、本当に良かったな……」
2人の顔を見て、スレッドリーが安堵のため息を吐く。
ラッシュさんもエイミーンさんも、ちょっとだけ薄汚れているけれど、健康に問題はなさそうだし、楽しくやっていたっていうのはホントのようね。暗殺集団の中にいて楽しくやれるんなら、どこへ行ってもやっていけそうな気がするよ。わたしだったら、毎日怖くて泣いて震えちゃうかも。
「ラダリィとエヴァちゃんは?」
なかなか降りてこないね。
「お2人は、中で少々……片づけをされています」
と、ラッシュさん。
「なになに? みんなで宴会でもしていたのかな?」
楽しそう!
わたしたちも混ぜてほしいなー!
「いえ、中というのは……」
ラッシュさんの表情が……?
片眉が上がって……なんか言いづらい感じですか?
「特別反省室……でしたでしょうか? お2人ともそちらにお入りになったままなのです……」
エイミーンさんも複雑そうな表情だ。
「ナノ~! ナノはいるナノ~!」
代わりに客車から降りてきたのは、なんとナノ様!
「ナノ様⁉ そちらにいらっしゃったんですか⁉ いつの間に……」
最近顔を見ていないと思ったら!
「バビュ~ンとジェットで飛んで、エヴァスタンプラリーをやっているナノ~!」
ここは狭いので、ジェットの羽を広げないでくださいね!
「エヴァスタンプラリー? なんです、それ?」
「これナノ~! エヴァに作ってもらったナノ~!」
と、見せられたのは手のひらサイズの石板……じゃなくて、タッチパネル式の端末だ!
≪全国に散らばっている私、エヴァシリーズを1体1体訪問するとスタンプがもらえるスタンプラリーを開催中です。コンプリートできたら豪華景品が手に入ります≫
「コンプリートって……5000体のエヴァちゃん全部ってこと?」
無理臭くない?
≪いいえ、チビエヴァシリーズや不可視のドローン型なども含め、現在1億3205体です≫
不可視は絶対無理でしょ。
見えないんだし。
≪心の目で見つけてみてください≫
はいはい、今度暇な時にねー。
「スタンプラリーの話はどうでもいいや。それより、ラダリィとエヴァちゃんは、特別反省室に入って何をしているの? あ、そっか。長屋と農園で保護した子どもたちの健康管理だ!」
≪それも行っています。全員健康状態は良好で、そろそろ外に出しても問題ない状態まで来ました≫
「おーおー、それは良かった! でも子どもたちもけっこうな人数だよね。外に出すって言ったってどこに……」
広くて安全な場所を確保しないといけないんだけど、今はそんな余裕はないし……。
≪今しばらく、特別反省室を拡張した施設内で生活をさせておきます。地上の気候を完全に再現した空間を用意していますので、子どもたちは室内にいることに気づいていないものと思われます≫
まあそれならそのままでも良いかな。
いずれはちゃんと外に出してあげたいけど、いろいろ片付くまでちょっとだけ待ってね!
「それで、ラダリィは中で何をしているの? 子どもたちと遊んでいたり?」
≪いいえ、ラダリィさんは拷問担当です≫
拷問⁉ 誰の⁉




