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第86話 アリシア、城下の様子を観察する

 その後、何度か同じ話を繰り返して議論したけれど、スミナルド陛下もスレッドリーも、お互いに考えを変えることはなかった。


 スミナルド陛下は自分を民衆の『敵』としてほしい。『打倒君主制』、そして『貴族の特権階級の廃止』をし、主権を国民に持たせた『法治国家』の樹立を成してほしいという要求。

 スレッドリーは、スミナルド陛下の『敵』には回りたくない。『君主制の廃止』、『貴族の特権階級の廃止』に反対はしないが、それはあくまでスミナルド陛下が先頭に立って実行すべきという考え。


 完全に平行線だね。

 というわけで、プライベートな謁見を終えて、わたしとスレッドリー、それからエヴァちゃんの3人は王宮を後にした。

 って言っても、エヴァちゃんの別端末は、引き続ぎスミナルド陛下の清い雇用関係(?)の秘書をやっているわけなんだけどね。


 ステファンが起きるまでにはまだまだ時間があるし、デオミンガル組のラダリィとナタヌと合流するのは3日後の予定だし、どうしたものかな……。

 調べるべきことはもう調べ切った感覚はあるよね。どうするかの方針は何も決まっていないけれど!


 わたしの意見?

 今のところ保留です。


 なんでかって?

 こういう複雑な計画って、やろうと思ってその通りになることってないんじゃないかなーって。人の心ってそんなに簡単には思い通りにいかないんじゃないかって思っているのね。きっとほんのちょっとした不確定要素によって、思いもしない方向に転がっていく。そんな気がするのよ。


 スミナルド陛下のお考えをそのまま実行しようとすると、おそらく多くの血が流れることになりそう。

 それってホントに必要な犠牲だからOKなの? 個人的にそこはあんまり納得できていないかな。大局的に見たら考え方は良い……んだろうけどね。んーでも、自らケンカを吹っ掛けていって、わざと暗殺計画が立ち上がるように仕向けているのは気に入らないかな。そんなことをしなければ、ストラルド様のような安定した治世を築けるんじゃないかなって思うし。理想が高いのはわかるんだけど、別に国の治安がすごく乱れているわけじゃないし? 目下の課題は災害復興なんだから、まずはそこだけに集中して手をつければそれで良いんじゃないかな。


 スレッドリーの考えは……スミナルド陛下と戦いたくない。それだけだからね。あとはそれを回避することありきでロジックを組み立てているから、公平性も合理性もないし、何にも響いてはこないかな。やっぱりスレッドリーに政治の才能はなさそう。別にわたしにそれがあるとも思わないけれど、少なくともスレッドリーの言葉に、わたしの心は動かされませんでしたってことで。



「ねぇ、スレッドリー。もうちょっと街の様子を見て回ろうか。軍人だけじゃなくて、商人や一般の住民がどんな気持ちを抱いて日々生活しているのかは知りたいかな」


「おう、わかった。俺にはわからない……。アリシアがやりたいようにしてくれ……」


 スレッドリーはいつにも増して、ぼんやりしているように見えた。

 心ここにあらず、のほうが正しいかも。

 まだスミナルド陛下の言葉や気持ちがうまく呑み込めていないんだろうね。簡単に言えば、「自分を殺して勇者になれ」だもんね。そんなのすぐに呑み込めるわけないか。


「街の人たちに声をかけられたらちゃんと愛想良くしてよ? ぼんやりしていたら、みんな味方についてくれないよ?」


 このままスミナルド陛下のプランが進行した場合、スレッドリーは民衆を味方につけて、扇動し、勇者として振る舞わなければいけない。

 つまりこれは、愛想を良くして事前の挨拶回りって感じかな。1人でも信奉者を増やしておいて損はないと思うし。


「俺は兄上と戦うつもりはない」


「はいはい、それはわかってますよ」


 その気持ちは尊重してあげたいけれど、果たして民意がそれを許してくれるかな……。


「んー、思ったよりもざわついているね……」


 王宮に上がる時には気づかなかったけれど、そういうつもりで街の人を観察してみると、どこか余裕がなさそうに見えてくる、かもしれない?

 ピリピリしているような、そわそわしているような、怯えているような……。

 誰もスレッドリーに話しかけてこないし。

 これまでだったら、スレッドリーが顔を上げて城下町を歩いたりした日には、あっという間に子どもたちに囲まれて、もみくちゃにされていたはずなのに……って、子どもたち自体が少ない?


≪現在、王都周辺から西部方面へ疎開する動きが活発化しています≫


 この空気はそういうことか。


 王都が戦場になる。

 それはもはや漠然とした不安ではなく、予測された未来だということなのでしょうね。


 西部方面かー。

 王都は、パストルラン島の中央からやや東寄りのところに位置している。西のほうに行けば、できるだけ王都から離れられるってことかな。


 思ったよりもかなり切羽詰まった状況なのかも。

 放っておいたらあっという間にスミナルド陛下が暗殺されちゃってもおかしくないんじゃ……。


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