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第82話 アリシア、呼び出しを受ける

 謁見の間。

 ドアをほんの少しだけ開けて、そっと中を覗き込んでみる。


「いらっしゃい。アリシア=グリーン。遠慮せずに中へ入りなさい」


 すぐにわたしの存在に気づいて、スミナルド陛下が片手をあげて挨拶してきた。


「こ、こんにちは……」


 わたし、何で呼ばれたのよ……。

 このタイミングで入るの、めっちゃ気まず過ぎるんですが!


≪アリシア、こっちです≫


 エヴァちゃんが手招きしてくる。


 あなたは何で普通に部屋にいるのよ……。

 影に潜むお庭番の役はどうした⁉


≪こっちですこっち!≫


「わかったってば……」

 

 行きますから急かさないで。


 スミナルド陛下は完全に玉座から降りていて、部屋の真ん中辺りに置かれた円卓のイスに腰を下ろしていた。

 その正面にはスレッドリーの姿が。なんかむっすりしているけれど。


 わたしはスレッドリーの隣のイスに腰掛けた。


≪紅茶とシュークリームでございます≫


 エヴァちゃん、完全にメイドさんじゃんか……。

 まあでもメイド服を着ているし、見た目の通りですね! いや、だからお庭番の役はどうしたの⁉


≪熱々のアップルパイもございます≫


 いや、ケーキ増やさなくて良いから。シュークリームもアップルパイもわたしが焼いたやつだからね? エヴァちゃんはアイテム収納ボックスから取り出しただけなのに、なんでそんなにドヤ顔できるのよ。


「せっかくのお茶会だ。楽しい雰囲気で行こう。エヴァ、何か楽しくなる音楽をかけてくれないか」


≪かしこまりました。それでは失礼して……サンバのリズムを知ってるかい。ホホホ~イ≫


 まさかの音楽を口で⁉

 いや、それ音楽ですらなくない⁉


「ありがとう。さあ、せっかくの紅茶が冷めないうちにいただこう。どうした、スレッドリー。さっきからずっと黙って」


 エヴァちゃんのボケは完全スルー!

 スミナルド陛下……なかなかやりますね。


「アリシアが来たから格好つけているのかい? 大丈夫だよ。私はお前から想い人を取り上げたりはしないさ」


 と、わたしに向かってウィンク。

 何今の……。


「兄上には……側室が25人いる。気をつけろ」


 多い! 完全にハーレムじゃん!


「今は32人だよ」


 増えてる!


≪私も陛下の側室の1人です≫


「ちょっと⁉」


 そそそそ側室って!

 まさかそういう関係にににににににににに!


≪冗談です≫


「エヴァには振られてしまってな。清い交際、もとい、清い雇用関係を結んでいるよ」


「そ、そうですか」


 清い雇用関係って何……。


≪なんと私、体の関係なしで陛下の秘書をしています≫


 普通の秘書は、雇用主と体の関係なんてありませんけど⁉

 ていうか、そういう大事なことは事前に教えておいてくれない⁉ スミナルド陛下のところで働いているなら、スミナルド陛下のことをよく知っているってことだよね⁉ それなら事前にいろいろと教えておいてくれたって良いじゃない!


≪守秘義務がありますから♡≫


 人差し指をバッテンにして、指先にキス。

 

 やかましいわ!

 さんざん一心同体がどうのとか言っておきながら、他人との守秘義務を優先させるな! わたしには何でも包み隠さず言いなさい!


≪Yes, My Lady.≫


 そうよ、わかれば良いの。

 じゃあ、こっそりスミナルド陛下のことを教えて。


≪はい。陛下の性癖は少し特殊でして、複数人の女性と同時に――≫


 ちょっと待ったぁぁぁぁ!

 何を聴かせようとしているの⁉


≪ですから、陛下の秘密をお伝えしようかと≫


 なんかそういう夜の秘密の話は良いの!

 そういうのは個人の自由だからそっとしておいてあげて!


≪いいえ、陛下は昼間からお盛んですが≫


 知りませんけどぉぉぉぉぉぉぉ⁉

 昼間からお戯れになっているかなんて心底どうでも良いですけどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ⁉


≪そうですか……。ですが気をつけてくださいね≫


 気をつける? 何に?


≪陛下はNTR(寝取り)プレイを好まれますので、おそらく本気でアリシアのことを狙っています≫


 それ、今日1番聞きたくなかったやつー!

 さっきの「お前の想い人を取り上げたりはしないさ(キリッ)」って宣言……そういうフリなの……? もうサイアクじゃん。先に殴る? ここで暗殺しとく?


≪殴り殺したら暗殺ではなく撲殺です≫


 罪名は何でも良いけどさ……。


≪陛下≫


「どうした、エヴァ」


 エヴァちゃんの呼びかけに、スミナルド陛下が微笑みを浮かべる。

 うん、まあイケメンよね……。

 これなら大抵の女性は落とせそう……。わたしはそんなに安くありませんけどね!


≪アリシアから伝言です≫


「エヴァちゃん⁉」


≪『わたしに指1本でも触れようとしたら殴り殺す』以上です≫


「ちょぉぉぉぉぉ!」


 確かにそれっぽいことは言ったけど! 言ったけどさー! それは伝言不要なやつだからぁぁぁ! なんかの背信罪的なあれで逮捕されちゃうかもしれないじゃん!


「なるほど。これはおもしろい。アリシア=グリーン、ますます気に入った」


 えー! なんか気に入られちゃったんですけど⁉

 今のどこにそんな要素が⁉


「兄上……」


 下を向いたままスレッドリーが声を絞り出すように呟く。


「もしアリシアに手を出そうとしたら、アリシアがその手を下す前に、俺がいかなる手段をもってしても殺す」


 うわっ、これ、スレッドリーめっちゃ怒ってない……?

 こんなこと冗談でも言う人じゃないはずなのに……。


「なるほど、物騒な夫婦だな。大変お似合いだ」


≪ええ、大変にお似合いですわ≫

 

「ふ、夫婦じゃないしっ!」


 この2人……完全に遊ばれているわ……。

 わたし、もう帰って良いですかっ⁉


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