ガイダンス
スマホを取り出すとゆきちゃんからメッセージが届いている。大講義室の真ん中位にいるよか。
今日は就職ガイダンスだ。4月も中旬になっているため、すでにエントリーを締め切っている企業も多いが、まだ間に合う業種などの説明。それから今から始まる面接のポイントなど。すでに内々定をもらっている人もいるし、ガイダンスなどなくてもネットなどで情報を集めている人もいる。だからさほど参加者もいないだろうと思ってたけど……。
大講義室に入ると、思った以上に学生の姿があった。
ゆきちゃんの姿を見つけて隣に座る。
「思ったより人がいるね」
「あれじゃない?他の人はどうなのかそろそろ気になるところ?こういう機会じゃないと4年生ってあんまり会えないしさぁ」
なるほど。
内々定もらってたら来ないわけだし、まだみんな就職決まってないんだって、少し安心感あるかも。
「あとさぁ、OBやOG……誰が来るか分からないけど、先輩に会えるし」
そんな人を呼び込める先輩が今日は来るってわけでもないよね?
「あ」
最前列に、あのぬいぐるみを肩に乗せた人がいる。
すごいなぁ。ぬいぐるみはのせたまま受講するんだ。
「ん?何?」
「いや、なんかちょっと気になって」
他の人は全然気にしてないみたいだけど……。
スマホを取り出し検索する。
「何?気になるって」
「えーっと、なんだっけな。え、え、えん、えんらだったかな」
検索すると、すぐに出てきた。
煙羅……。煙々羅、煙羅煙羅……。
毒煙の鬼神、妖怪……。解呪方法は香炉。
なるほど。煙の妖怪のぬいぐるみだったんだ。そりゃ、煙に見えるわけだ。
よくできてるなぁ。
「これがなんで気になるの?」
ゆきちゃんが首を傾げた。
「うん、なんか流行ってるのかなぁって」
「マジ?JKとかに?あー、もう二十歳すぎると、こういうの疎くなるよねぇ」
ゆきちゃんが急に年寄り臭いことを言い出した。
「ふふ、前からゆきちゃん、爬虫類以外疎い感じじゃなかった?」
「ははー、そうでした!」
ぺろりとゆきちゃんが舌を出した。
なんてやり取りをしていると、チャイムがなりガイダンスが始まった。
つい、視線は女性の肩の上にのっているぬいぐるみに向いてしまう。
……和樹、鑑定魔法で本当に煙羅だって分かったのかな?
それとも、煙っぽいから、煙羅を思い出して口から出た言葉?
「それでは、OBやOGから体験談を聞いた後、質疑応答の時間を設けます」
いつの間にか前半の話が終わってしまったみたいだ。
進行役がOGとOBを迎え入れる。
「「あ」」
私とゆきちゃんから同時に声が出た。
二人で顔を合わせて小さくうなづく。




