勝つための一歩
第19話 勝つための一歩
「対人模擬戦は、5人対5人で行う!」
教官の声が第3訓練場に響いた。
「武器は訓練用を使用! 魔法は出力を制限し、殺傷を目的とする攻撃は禁止だ。戦闘不能の判定はこちらで行う!」
訓練場の中央では、職員たちが木製の柵を移動させていた。
先ほどまで模擬魔狼と戦っていた場所が、二つの陣営に分けられていく。
「勝敗は、相手チームの全員を戦闘不能にするか、制限時間終了時に残っている人数で決定する。人数が同じなら有効打の数で判定だ!」
「……結構、本格的なのね」
ミアが呟いた。
「相手も考えて動くからね」
レオンは杖の先端を確かめながら答えた。
「さっきより難しいと思うよ」
「でも、楽しそう!」
エリシアはすでに剣を握っていた。
「人と戦うのは初めてじゃないけど、こういう訓練は初めて!」
「楽しむのはいいが、突っ込みすぎるなよ」
ダグラスが釘を刺す。
「分かってるって!」
「さっきも同じことを言ってたぞ」
「今度は本当に分かってる!」
そのやり取りを聞きながら、ジョシュアは訓練場を眺めていた。
対人戦。
魔物とは違い、相手も剣を使い、盾を構え、こちらの動きを読んでくる。
自分がどれほど戦えるのか、まるで分からなかった。
「ジョシュア」
ダグラスが声をかける。
「さっき教官に言われたこと、覚えてるか?」
「仲間の動きを見ること?」
「そうだ。それと、無理に一人で倒そうとしなくていい」
ダグラスは自分の盾を軽く叩いた。
「困ったら俺の後ろへ戻れ」
「……分かった」
「それだけで十分だ」
ジョシュアは頷いた。
そのとき、教官が手元の名簿を確認した。
「第4班! 相手は第7班だ!」
向かい側から、5人の冒険者が歩いてくる。
先頭にいるのは、短い黒髪の青年だった。
革鎧を着込み、片手剣を腰に下げている。
その後ろには槍使い、盾を持った男、弓使い、そして杖を持った女性が続いていた。
「よろしく頼む」
黒髪の青年が声をかけてきた。
「俺はロイド。第7班のまとめ役だ」
「ダグラスだ。よろしく」
二人が握手を交わす。
ロイドはジョシュアたちを見渡した。
「そっちは盾が一人か」
「ああ」
「なるほどな」
その言い方が、ミアには少し引っかかったらしい。
「……何か?」
「いや、別に」
ロイドは笑った。
「お互い頑張ろう」
そう言って、自分の仲間たちのもとへ戻っていった。
「……今の、何?」
エリシアが首を傾げる。
「多分、こっちの編成を見てたんだと思う」
レオンが答えた。
「相手は剣、槍、盾、弓、魔法。かなり均等な構成だね」
「嫌な感じ」
ミアは耳を伏せた。
「こっちの弱いところを探してたんじゃない?」
「模擬戦なんだから、それは当然だろう」
ダグラスが言った。
「俺たちも考えるぞ」
5人は円を作った。
「まず、俺が中央を守る。エリシアは右、ジョシュアは左だ」
「うん!」
「分かった」
「ミアは自由に動いていい。ただし、敵を見つけたら早めに知らせてくれ」
「了解」
「レオンは後ろで詠唱。敵の弓使いには注意してくれ」
「僕もそう思ってた」
レオンが頷く。
「相手に弓がいるなら、魔法を撃つ前に狙われる可能性がある」
「俺が守る」
「頼んだよ」
作戦を決め終えると、教官が両チームを呼んだ。
「位置につけ!」
ジョシュアたちは訓練場の片側へ並んだ。
向こう側では、ロイドたちがすでに構えている。
盾役が中央。
槍使いがその隣。
剣士のロイドは少し離れた位置に立ち、後方に弓使いと魔法使い。
ジョシュアは剣を握り直した。
掌に汗が滲んでいる。
「……緊張してる?」
隣からエリシアが尋ねた。
「少し」
「私も!」
エリシアは笑った。
「でも、みんながいるから大丈夫!」
ジョシュアも小さく笑った。
「そうだね」
「両者、準備!」
教官が片手を上げた。
訓練場が静まり返る。
そして。
「始め!」
◇
最初に動いたのは、相手の弓使いだった。
弦が鳴る。
「レオン、伏せろ!」
ダグラスが叫ぶ。
レオンが身を屈めた直後、先端を丸めた訓練用の矢が頭上を通り過ぎた。
「いきなり僕か!」
「後衛を狙うのは当然だ!」
ダグラスが盾を構える。
その正面へ、敵の槍使いが突っ込んできた。
「はあっ!」
長い槍が突き出される。
ダグラスは盾で受け止めた。
乾いた音が響く。
「エリシア!」
「分かってる!」
エリシアが右から回り込む。
しかし、その前にロイドが立ちはだかった。
「悪いな。そっちは通せない」
「だったら、あなたを倒す!」
エリシアが剣を振るう。
ロイドはそれを受け流した。
続けて反撃。
エリシアは身を引き、剣を構え直す。
「……っ、結構やる!」
「そっちもな!」
二人の剣がぶつかり合う。
一方、ジョシュアは左側へ回ろうとしていた。
狙いは、相手の後衛。
だが、そこへ敵の盾役が移動してきた。
「行かせないぞ!」
大きな盾が進路を塞ぐ。
「……!」
ジョシュアは足を止めた。
右へ動けば盾も右へ。
左へ動けば、相手も左へ動く。
簡単には通してもらえない。
「どうした! 来ないのか!」
相手が挑発する。
ジョシュアは剣を構えた。
盾の向こうから、相手の剣が伸びてくる。
その瞬間、身体が動いた。
刃を避け、相手の懐へ踏み込む。
剣先が、盾の横を抜けようとした。
「うおっ!?」
相手が驚いて盾を引く。
ジョシュアの剣は、その縁をかすめた。
あと少し。
そう思ったとき、相手の足が動いた。
盾が横から押しつけられる。
「……っ!」
ジョシュアは後ろへよろめいた。
「甘い!」
相手が追撃してくる。
剣が迫った。
ジョシュアは身体を捻ってかわした。
だが、そのまま反撃しようとした瞬間、盾が再び目の前へ現れる。
攻撃が通らない。
相手は無理に倒そうとしてこなかった。
ただ、ジョシュアを足止めしている。
「……どうすれば」
ジョシュアは距離を取った。
自分だけで突破する方法を考える。
右か。
左か。
それとも正面から押し込むか。
そのとき。
「ジョシュア! 戻って!」
ミアの声が聞こえた。
振り向く。
レオンのいる後方へ、ロイドが向かっていた。
エリシアは追いかけているが、少し距離が開いている。
そして、ダグラスは槍使いに足止めされていた。
「……!」
ジョシュアは駆け出した。
しかし、敵の盾役が再び進路を塞ぐ。
「行かせるか!」
ジョシュアは反射的に剣を振った。
相手の盾が上がる。
その下へ足を踏み込み、脇を抜けようとする。
だが、盾が肩に当たった。
「くっ……!」
足が止まる。
そのわずかな時間で、ロイドはレオンの間合いへ入っていた。
「もらった!」
「……まずい!」
レオンが杖を引く。
詠唱を始める余裕はない。
ロイドの剣が振り下ろされる。
その直前。
「《防御態勢》!」
ダグラスが割り込んだ。
ガンッ!!
盾がロイドの剣を受け止める。
「……間に合った!」
レオンが息を吐く。
「助かったよ!」
「礼はいい! 下がれ!」
ダグラスはロイドを押し返した。
しかし。
「そこだ!」
背後から、敵の槍使いが踏み込んだ。
ダグラスが持ち場を離れたことで、中央が空いていた。
槍の穂先が、ダグラスの背中へ迫る。
「ダグラス!」
ジョシュアが叫んだ。
ダグラスは振り向こうとした。
だが、間に合わない。
槍が鎧を叩いた。
鈍い音が響く。
「そこまで!」
教官の声が飛んだ。
「ダグラス、有効打! 重傷判定! 戦闘不能!」
「……くそっ!」
ダグラスは悔しそうに歯を食いしばった。
その場で盾を下ろし、訓練場の端へ下がる。
「ダグラス!?」
エリシアが叫ぶ。
「俺はもう戦えん! お前たちで続けろ!」
残された4人は、一瞬だけ動きを止めた。
その隙を、相手は見逃さなかった。
「弓!」
ロイドが叫ぶ。
後方から矢が飛んでくる。
狙いはレオン。
「……っ!」
レオンは身を捻った。
矢が肩をかすめる。
「レオン、軽傷!」
教官が判定を告げる。
「……痛っ!」
レオンは顔をしかめた。
「本当に痛いじゃないか!」
「レオン!」
ミアが駆け寄ろうとする。
「来なくていい!」
レオンが叫んだ。
「僕より、相手の弓を止めて!」
「……分かった!」
ミアは方向を変えた。
低い姿勢で走り、相手の後衛へ向かう。
しかし、弓使いはすぐに距離を取った。
さらに、魔法使いの女性が杖を掲げる。
「炎よ、弾となれ――《火弾》!」
小さな火球が飛んできた。
ミアは地面を蹴り、横へ跳んだ。
火球が足元を通り過ぎる。
「……危なっ!」
着地した瞬間、弓使いが矢を放った。
ミアは身を屈めた。
矢が頭上を抜ける。
その間に、相手の魔法使いは次の詠唱へ移っていた。
「……これ、まずいわね」
ミアは歯を食いしばった。
ジョシュアは、その光景を見ていた。
ダグラスがいない。
エリシアはロイドと剣を交えている。
レオンは負傷し、ミアは後衛二人を相手にしている。
自分の目の前には、まだ盾役がいる。
どうすればいい。
誰を助ければいい。
頭の中で、考えがまとまらない。
「おい!」
盾役が踏み込んできた。
「よそ見するな!」
剣が振り下ろされる。
ジョシュアは咄嗟に身を引いた。
続く盾の押し込みも、身体を捻ってかわす。
だが、それだけだった。
避けられる。
相手の攻撃は、なぜか見える。
それなのに、自分から状況を変えられない。
敵を倒すことも、仲間を助けることもできない。
「……っ!」
ジョシュアは剣を握り直した。
そのとき、教官の声が聞こえた。
「残り2分!」
時間がない。
ジョシュアは息を吸った。
そして、ダグラスの言葉を思い出す。
困ったら俺の後ろへ戻れ。
だが、ダグラスはもういない。
それなら。
自分は、どこへ戻ればいい。
「……エリシア!」
ジョシュアは叫んだ。
エリシアが振り向く。
「何!?」
「こっちに来て!」
「え!?」
「一人じゃ、この人を倒せない!」
その言葉に、エリシアは一瞬だけ驚いた顔をした。
しかし、すぐに頷く。
「分かった!」
エリシアはロイドの剣を受け流し、ジョシュアの方へ走った。
「逃がすか!」
ロイドが追いかける。
ジョシュアは盾役の攻撃をかわしながら、エリシアへ近づいた。
「どうするの!?」
「僕が、この人を引きつける!」
「それで!?」
「エリシアが攻撃して!」
「了解!」
エリシアは迷わなかった。
ジョシュアは盾役へ踏み込んだ。
剣を振る。
相手が盾で受ける。
続けて、ジョシュアは横へ動いた。
相手も身体を向ける。
その瞬間。
「《強撃》!」
エリシアが横から飛び込んだ。
剣が盾役の肩へ命中する。
「ぐっ……!」
相手がよろめく。
「有効打!」
教官の声が響く。
「もう一回!」
エリシアが叫んだ。
ジョシュアは再び踏み込む。
しかし、今度は相手も警戒していた。
盾が前へ突き出される。
ジョシュアは横へ避けた。
その背後から、ロイドが迫る。
「二人まとめて相手してやる!」
剣が振り下ろされる。
ジョシュアは反射的に身を捻った。
刃が肩のすぐ横を通り過ぎる。
続けて、相手の盾役が剣を突き出す。
ジョシュアは一歩下がった。
さらにロイドの追撃。
身体が動く。
避ける。
かわす。
だが、反撃できない。
相手が二人になったことで、ますます攻撃する余裕がなくなっていた。
「ジョシュア!」
エリシアが叫ぶ。
「下がって!」
「……うん!」
ジョシュアは後ろへ跳んだ。
その瞬間、ロイドが方向を変えた。
狙いはエリシア。
「……しまっ!」
エリシアが剣を構える。
だが、ロイドの方が速かった。
剣が腕を叩く。
「エリシア、有効打!」
教官が叫んだ。
「……っ!」
エリシアは顔をしかめた。
その直後、敵の盾役が体当たりしてきた。
エリシアは足を滑らせ、地面へ倒れる。
「エリシア、戦闘不能!」
「……うそ!」
エリシアは悔しそうに地面を叩いた。
「あと少しだったのに!」
ジョシュアは立ち尽くした。
また一人、仲間が減った。
自分が下がったせいで。
そう思った瞬間。
「ジョシュア!」
レオンの声が響いた。
「右!」
ジョシュアは振り向いた。
ロイドの剣が迫っている。
避けようとした。
だが、身体が動くより先に、足元が滑った。
「……っ!」
剣が胸元を叩いた。
鈍い衝撃。
ジョシュアは後ろへ倒れた。
「ジョシュア、戦闘不能!」
教官の声が響く。
ジョシュアは地面に座り込んだ。
胸が痛い。
呼吸を整えながら、空を見上げた。
訓練場の天井が、やけに遠く見えた。
◇
「試合終了!」
教官の声が響いた。
「第7班の勝利!」
結果は、ジョシュアたちの敗北だった。
ダグラス、エリシア、ジョシュアが戦闘不能。
残ったレオンとミアも、相手の後衛を崩せないまま時間切れとなった。
「……負けたぁ」
エリシアが地面に座り込んだ。
「悔しい!」
「僕もだよ」
レオンは肩をさすりながら答えた。
「途中までは悪くなかったと思うんだけどね」
「悪かったところなら、いくらでもあるわよ」
ミアが腕を組んだ。
「最初にダグラスが倒れたのが大きかった」
「……すまん」
ダグラスが頭を下げる。
「俺が持ち場を離れたせいだ」
「でも、レオンを守ってくれたじゃない」
エリシアが言う。
「それはそうだが……」
「守る相手を間違えたわけじゃない」
ミアは少し考えた。
「ただ、その後のことを誰も考えてなかったのよね」
レオンが頷いた。
「そうだね。ダグラスが動いたとき、僕たちも位置を変えるべきだった」
「……俺も」
ジョシュアが口を開いた。
4人が振り向く。
「僕も、何もできなかった」
「ジョシュア?」
エリシアが首を傾げた。
「敵の攻撃は避けられた。でも、どうすればいいか分からなくて……」
ジョシュアは自分の手を見た。
「エリシアにも、無理をさせた」
「そんなことないよ!」
エリシアが慌てて言う。
「一緒に攻撃しようって言ってくれたの、嬉しかったし!」
「でも、負けた」
「それは……」
エリシアは言葉に詰まった。
少しの沈黙。
そのとき。
「お前たち」
教官が歩いてきた。
「なかなか面白い試合だったぞ」
「……負けましたけど」
ミアが言う。
「ああ。見事に負けたな」
教官はあっさり答えた。
「だが、最後まで何とかしようとしていたのは悪くない」
ダグラスが顔を上げた。
「……ありがとうございます」
「ただし、敗因は明確だ」
教官は指を一本立てた。
「お前たちは、全員が自分の役割だけを考えていた」
「……役割?」
ジョシュアが尋ねる。
「ああ。盾役は守る。剣士は攻撃する。魔法使いは詠唱する。シーフは敵の隙を突く」
教官は5人を見渡した。
「それ自体は間違っていない。だが、状況が変わったとき、誰も次の動きを決められなかった」
ジョシュアは黙って聞いていた。
「特に、盾役が倒れた後だ。そこから全員がばらばらになった」
「……はい」
「ただ、最後にジョシュアが仲間を呼んだのはよかった」
ジョシュアは顔を上げた。
「……僕が?」
「ああ。自分一人では倒せないと判断して、助けを求めた。それは正しい」
教官は頷いた。
「だが、呼んだ後の動きが甘かった。敵は一人ではない。お前たちが二人で一人を狙えば、別の敵が動く」
「……はい」
「覚えておけ。集団戦は、一人の強さだけで決まるものじゃない」
教官は、向こう側で談笑している第7班を指さした。
「あいつらは最初から、お前たちの魔法使いを狙っていた」
レオンが眉を上げる。
「やっぱり」
「盾役を動かし、中央を空けさせる。そこへ槍使いが入る。単純だが、よくできた作戦だった」
ダグラスが悔しそうに拳を握った。
「……完全に誘い出されたわけか」
「そういうことだ」
教官は笑った。
「だからこそ、訓練する意味がある」
そして、ジョシュアを見た。
「お前も、少しは分かったか?」
「……はい」
「何が分かった?」
ジョシュアは考えた。
相手の剣は見えた。
攻撃を避けることもできた。
けれど、仲間が倒れていくのを止められなかった。
自分一人が攻撃をかわしていても、戦いには勝てない。
「……敵を見るだけじゃ、駄目なんですね」
教官は小さく頷いた。
「そうだ」
それだけ言うと、次の班の方へ歩いていった。
◇
訓練が終わった頃には、すっかり夕方になっていた。
第3訓練場を出ると、王都の空は赤く染まっていた。
「……お腹空いた」
エリシアが呟く。
「さっきまで悔しがってたのに?」
ミアが呆れたように言う。
「悔しいのと、お腹が空くのは別!」
「まあ、それはそうだね」
レオンが笑った。
ダグラスは少し考えてから口を開いた。
「なあ。今日の反省も兼ねて、飯でも食いに行かないか?」
「いいね!」
エリシアが即答した。
「どこ?」
「ギルドの近くに、安くて量の多い食堂がある。冒険者もよく使う店だ」
「安い?」
ミアの耳がぴんと立った。
「ああ。味も悪くない」
「それなら賛成」
レオンが苦笑した。
「判断が早いね」
「大事なことだから」
ジョシュアも笑った。
「僕も行きたい」
「決まりだな」
ダグラスが歩き出す。
エリシアとミアがその後に続いた。
レオンも杖を肩に担ぎ、ゆっくり歩き始める。
ジョシュアは最後に訓練場を振り返った。
さっきまで戦っていた場所。
自分が倒れた場所。
負けたことは、悔しかった。
けれど、それ以上に気になることがあった。
攻撃が迫ったとき、身体は勝手に動く。
それなのに、自分の意思で剣を振ろうとすると、上手くいかない。
まるで、自分の身体のどこかに、知らない誰かの戦い方が残っているようだった。
「ジョシュア!」
エリシアの声が聞こえる。
「置いていくよ!」
「あ、うん!」
ジョシュアは慌てて駆け出した。
今は、分からないことばかりだ。
それでも、今日一つだけ分かったことがある。
一人で戦うのと、仲間と戦うのは違う。
強いだけでは、守れないものがある。
ジョシュアは前を歩く4人の背中を見つめた。
次は、もう少し上手く戦いたい。
せめて、誰かが助けを求めたとき、迷わず動けるように。
「……次は勝ちたいな」
小さく呟く。
その声を、隣を歩いていたダグラスが聞いていた。
「勝とうぜ」
「……うん」
「次は、俺も簡単には倒れん」
ダグラスは笑った。
「だから、お前も頼むぞ」
ジョシュアは頷いた。
「分かった」
5人は並んで、夕暮れの王都を歩いていった。




