死者奏者①
〜〜〜
「総理。じきにかの国大統領よりお電話があります」
「……」
意気消沈した一国のトップ。
その周りには顔面蒼白になり、声さえも発することができずに汗を滲ませる面々。
「総理、おきを確かに」
「あ……あぁ」
「必ずや打開策はあります。必ずや」
「……っ」
励ましの言葉。
しかしその言葉さえも、今の現実には火に油を注ぐようなものだった。
「打開策だと? ふんっ、そんなものあるものか。終わりだ終わり。この国も世界もな」
「核さえも通じない存在にどうしろと?」
「こ、降伏だ。金を渡して降伏をーーッ」
「最後まで戦うべきだッ、こうなれば玉砕しかあるまい!!」
怒号と不安が飛び交う場内。
だがそれを、無機質な着信音が遮る。
それを確認し、受話器を手に取る総理。
途端に静まる場内。
そしてそこで交わされたのは、この世界で長きに渡り秘匿され続けていた"複数の組織"に協力を要請するというものだった。
〜〜〜
廃墟と化した、街。
それを空から見下ろし、しかし二人の表情は変わらない。
夕日に至っては鼻歌を囀り、良心の呵責など一切ないといった様子だった。
そんな夕日にかかる声。
「如月 夕日」
「なーに?」
「これから先。人類共はやり方を変えてくる。神秘を伴わぬ抵抗……それが無意味と理解したはずだ」
「うん。そうだね」
ペルセフォネの声。
それに夕日は、淡々と答える。
「でも、ペルちゃん」
「わたしたちは負けない」
言い切る、夕日。
その瞳に蠢くは光なき闇。
決して揺らぐことない、復讐の意思だった。
〜〜〜
「わーい死体が一杯だ」
壊滅した都心。
その瓦礫と死体に埋もれた廃墟に、健気な声が響きわたる。
「んーっ。でもどうして私は復活しちゃったのかな? ついこの前。きさらぎ ゆうひに手も足もでないで葬られちゃったのに」
死者奏者。
小柄で漆黒のドレスに身を包んだ魔王少女の一人。
墓場で死体を操り、魔法少女と相対したのだが呆気なく如月 夕日に敗れた存在。
そんな魔王少女のエレナが復活したのは、本人にとっては喜ばしいこと。
だが、エレナの胸の内は疑問で満たされていた。
転がる大量の死体。
中には焼けただれ、判別すらできないものも多数。
どうしてこんなにたくさんの死体があるのか。
そしてなぜ、ここまで街が崩壊しているのか。
更に加えてーー
「あれ、ペルセフォネの気配もする。んーってことはエレナと同じでふっかつしたのかな? わからないことだらけだ」
死体という名の玩具。
エレナはそれを弄びながら、小動物のように首を傾げる。
そのエレナの姿。
それは好奇で満たされた子どものそれと同じだった。
***
「死者奏者」
エレナの力の気配。
ペルセフォネはそれを感じ、ぽつりと声をこぼす。
その声に夕日もまた反応を示す。
愉しそうに。
その瞳に闇をゆらめかせながら。
「エレナ? んーっと。あっ、あの死んだモノを操る魔王少女だったよね」
「そうだ。人類の兵器で理不尽に死んだ者たちの魂。それが贄となり死者奏者の復活がはやまったのだろう」
淡々と声をこぼす、ペルセフォネ。
その表情にはしかし、一切の油断も慢心も宿ってはいなかった。




