現代兵器⑤
「理不尽な死と絶望。うん、とっても心に響く言葉だね」
眼下を見つめ、夕日は微笑む。
そして更に言葉を続けた。
「それにしてもペルちゃんはすごいね」
「なにがだ?」
「んーと。人類が救いようのない悪だってことに最初から気づいていたんだよね。すごい、えらい」
「気づく気づかないではない。元より魔王少女の根源はそこにある」
夕日の誉め言葉。
しかしペルセフォネは、それを真に受けることはない。
滑らかに動き。
それをもって剣を収め、ペルセフォネは夕日を見据える。
その表情。それは相変わらずの無感情。
「如月 夕日」
「なーに?」
「魔法少女の根源。それは、安らかな生と希望。そして人類は善。たったはずだ。そこに気づく気づかないという意思の介在はあったか?」
問いかける、ペルセフォネ。
「うーんと」
考え。
しかし、夕日はすぐにそれを放棄する。
「夕日、わかんない。魔法少女のことは思い出したくないんだ」
"「人類は善。安らかな生と希望の為に」"
魔法世界の使者。
その白ずくめの存在の一言で全てが始まった。
唇を噛み締めーー
「夕日は。夕日はね、少しでもあっち側に居たことに虫酸が走るの。だから、はやく」
俯き、夕日は呟く。
「夕日は真っ黒に染まりたい」
「……」
その夕日の姿。
それにペルセフォネは内心で呟いた。
"如月 夕日。既にお前はこちら側の存在だ"
と。
~~~
「生物兵器。及び、化学兵器の使用許可を」
「甘い。核を投下すべきだ」
「どちらにしても甚大な被害は免れない。後のことを考え、責任の所在ははっきりとさせておくべきだ」
「責任の所在? そんなもの、如月 夕日と化け物をどうにかした後で考えれば良い話だろう」
「しかし。この映像を見る限りーー」
如月 夕日の笑顔。
それをスクリーンで見送り、皆一様に不安におとされていた。
既に総理含め各権力者たちは地下フィルターへと避難。
核兵器の衝撃にすら耐えうるその場所で、対策を議論もとい実行に移そうとしていた。
「既に彼の国は条約に基づき軍事支援を表明。総理の許可で軍を展開する用意があると仰っております」
「……」
「総理。ご決断を」
「……っ」
「総理」
結論を求める面々。
それに国のトップは、決断を下そうとしていた。
生物兵器。化学兵器。そして、核兵器。
その全てが、都心へとトドメを刺すことになりかねない絶望の選択肢。
「生存者は?」
「生存者? あのような状況でまだそんなことを」
「少ない犠牲で多くの命が救われるのです。あの魔女共を世界の意思で葬った時には総理。貴方は、なんの躊躇いもなく同意したではありませんか。彼の国の。彼の大統領の意思を尊重すると仰って」
詰め寄る、強硬派。
そして案の定。
場は荒れる。
「だからといって。国民を見捨てろと?」
「恥を知れ。恥を」
「なに? それでは他に手はあるのか?」
「現代兵器が通じないのであれば核兵器さえも通じないおそれもある。わかっているのか?」
「やってみなければーーッ」
それに終止符を打ったのはーー
「あらゆる手段をもって、対処せよ。これより先。全ての軍事行動は事後承認とする」
そんな総理の決意に満ちた言葉だった。




