ペルセフォネ④
そんな声の余韻。
それが消えぬ内に、ぐしゃりと倒れ伏せる男たち。
その死体に足を載せ、夕日は更に言葉を響かせた。
「乱射モード」
声と共に、闇に包まれる拳銃
そして、数秒後。
拳銃は引き金を引くだけで無限に魔弾を放つ、"魔銃"へとその姿を変える。
拳銃の見た目は変わらない。
だが、その性能は人知を越えた闇の力の賜物。
悲鳴をあげ、逃げ惑う人々。
先程まで夕日とペルセフォネを"痛い"と称していた者たちも目の前の現実に"死"を実感する。
しかし、中には未だ。
「すげぇ、映画みたいだな」
「フィクションだろ、これ」
「ドッキリ? どっかにカメラあるの?」
そう声を発し、スマートフォンをとりだし写真撮りや動画撮影をはじめてしまう始末。
それに向け、夕日は銃口を向ける。
そしてカメラ目線でにっこりと笑いーー
「しんじゃえ」
と呟き、躊躇なくその引き金を引いた。
刹那。
必中の魔弾が"人間"に対し、その牙を剥く。
「いッ、いやぁ!!」
「し、しにたくない!!」
「俺たちがなにをしーーッ」
ぐちゃっ。
的確に頭へと命中していく魔弾。
次々と倒れ伏せ、人々は血溜まりに伏していく。
その光景を、夕日は嗤う。
引き金を引き続けながら、幸せそうに嗤う。
「しね。しね。人間はみんな、しんじゃえ」
憎悪に満ちた声。
それを響かせ、夕日は人々の命を狩り続ける。
その様はまるで。
罠に嵌まった大量の獲物。それに対し、嬉々としてトドメをさし愉悦に酔う狩人のようでもあった。
血飛沫と悲鳴。
そして、如月 夕日の嗤い声。
その3つの音を心地よく聞きながら、ペルセフォネは己の漆黒の剣を空へと掲げる。
そしてーー
「魔王少女。私は死と絶望を司る者」
そう声を響かせ、闇に染まった瞳を天へと向けた。
そのペルセフォネの声。
それに応えるかのように、空に暗雲がたち込めていく。
紫色の稲妻を伴う闇色の禍々しい雲の塊。
それは、ペルセフォネが顕現した時に現れたソレと全く同じだった。
圧倒的な闇の胎動。
それを感じ、「流石、ペルちゃん」と声を漏らす夕日。
そして引き金を引きながら、夕日は空を見る。
同時にペルセフォネは意思を表明した。
その唇をつりあげ、情けも容赦もなく。
「降り注げ、死雨」
迸る紫の稲光。
吹き抜ける、突風。
そして夕日の瞳に宿るのは、ペルセフォネに対する羨望の感情だった。
ぽつりと。雨粒は降り注ぐ。
それは、濡れた"人間"に死を与える闇の雨。
引き金から指を離し、夕日は「あめあめ降れ降れかあさんが♪」と唄い、足元に転がる傘を拾い上げる。
それは錯乱した人々が落としていったものだった。
そんな夕日に、ペルセフォネは声をかける。
「如月 夕日」
「なーに?」
「お前は濡れても死なない」
「んーわかってるけど。夕日、濡れるのはきらいなの」
そう返し、傘を広げる夕日。
「ペルちゃんも入る? 濡れちゃうよ」
「必要ない」
「風邪。ひいちゃうよ」
「そんなもの。関係ない」
一切笑わず。
ペルセフォネは降り注ぐ雨にその身を濡らしていく。
その姿を一瞥し、夕日もまた傘を閉じて応じる。
そして自らも、笑顔でその身を雨に濡らしていった。
如月 夕日とペルセフォネ。
それは、紛がうことなき悪。
そして二人は、人類に対する最凶の存在としてこの世界に君臨しようとしていた。




