ペルセフォネ③
声を響かせ、ペルセフォネは前に向き直る。
そして、最後に置き言葉を残す。
「人類の殲滅。そこに甘ったるい幻想など抱くな、如月 夕日。奴等に、復讐対象である人間共に。付け入る隙をつくるだけだ」
その言葉。
それに、夕日はこくりと頷く。
闇を揺らし、「いくぞ、まだこの世界は人で溢れている」、そう声を発し、再び歩を進めるペルセフォネ。
夕日はそんなペルセフォネに並んで歩く。
そんな二人の周囲。
そこには、二人の感情を現す漆黒の闇だけが広がっていた。
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「雨雲接近につき、突然の雨にご注意ください」
スマートフォン画面に映る、そんな文字。
それを見つめ、心配そうに窓から曇りゆく空を見つめる一人の女性。
女性が居る場所は職場のオフィス。
そしてその窓際に位置するデスクの椅子に女性は座っていた。
"洗濯物入れ忘れちゃったな、大丈夫かな"
そう内心で呟き、しかし業務中なので心配しかできない。
スマートフォンをデスクに置き、仕事に戻る女性。
「はぁ」
前に向き直ってため息をこぼし、女性はパソコンの画面を見つめる。
そして、同時に鳴る電話。
女性は慌てて、それを取ろうとした。
その瞬間、パソコンのデスクトップにノイズが走りーー
外では、人に死を与える闇色の雨粒。
それがぽつりぽつりと降り注ごうとしていた。
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その十分前。
人のたくさん居る場所。
そこに、如月 夕日とペルセフォネはその姿を現す。
道行く人々はそんな夕日とペルセフォネに意識さえ向けない。
中にはひそひそと。
「なにあれコスプレ?」
「痛い娘よね」
「親の顔を見てみたいわ」
「ぷぷぷ。おもちゃの銃なんてもっちゃって」
そんな声をわざとらしく響かせ、夕日とペルセフォネを小バカにする人々もいた。
しかし、夕日もペルセフォネも気にも止めない。
いや、これから"殲滅する対象"に興味すらもっていない様子だった。
「んーまだ、こんなにたくさん」
困ったように頬をかく、夕日。
その仕草は年端もいかない少女そのもの。
だがその心は、頗る冷徹だった。
手に握る拳銃。
その銃口をあげ、適当に狙いを定める夕日。
女性。男性。そして。老人、子ども。
「うーん……選り取りみどりすぎて。夕日、迷っちゃう」
「……」
そんな夕日の側。
そこでペルセフォネは、躊躇いなくその腰から剣を抜く。
そしてーー
「迷う意味などない。全て、殲滅すればいいだけの話なのだからな」
そう声を発し、ペルセフォネはゴミを見るような眼差しで人々を見渡す。
それに倣う、夕日。
「そうだね。じゃっ、乱射モードにーー」
切り換えよっか。
そう言い切る前に、二人の前を遮る数人の若い男たち。
その見た目は、見るからに真面目ではない。
「ねぇ、お二人さん」
「今日、学校はお休みなの?」
「おもちゃの銃とおもちゃの剣。更に、可愛らしいコスプレなんてしちゃってさ」
「どう? これからお兄さんたちといいことしない?」
にこりと笑う、夕日。
対照的に、表情を無にするペルセフォネ。
「笑顔もかわいいね、君」
「そう?」
「そっちの無愛想な君も、好みだよ」
「……」
強引に二人の腕を掴み、引っ張ろうとする男たち。
だが、その瞬間。
軽く振り払われる、漆黒の剣。
響く、乾いた銃声。
飛び散る、鮮血。
「えっ?」
と呆気にとられる、残った男。
その男にかけられたのは、夕日の短くも慈悲なき二文字の単語とペルセフォネの嫌悪に満ちた言葉だった。
「しね」
「目障りだ、人間」




