親友として。
私は人気の無い場所で足を止めた。
「巫代ちゃん……」
星摩さんもバツが悪そうに足を止めた。
「え、えっとね? ちょっとだけかなめんに噓ついちゃってね?」
弁明するように必死に言葉を絞り出している。
「そ、それで! かなめんてば仕方ないって言うんだよ? 酷くない?」
焦っているせいか脈絡もぐちゃぐちゃ。
ですが、大丈夫です。全部、聞いていたので。
「大丈夫ですよ。星摩さん」
私は彼芽さんがそういう人だと知っています。
彼芽さんは決して私を蔑ろにしている訳じゃない。
ただ、優しすぎるだけなんです。
「大丈夫じゃないよ! 何も大丈夫じゃない!」
「大丈夫ですから」
「じゃあ何でそんな顔をするの⁉」
そんな顔? どんな顔ですか。
私は笑っているはずです。それを飲み込んだはずです。
「私は呪いなんです」
「呪い……?」
「彼芽さんは、私の我儘を聞いてくれているんです」
もう誰かの悲しみを見たくない彼を。
誰かを苦しませたくない彼を、ここに縛り付けている。
「私は、彼芽さんが生きているだけで嬉しいんです」
心の底からそう思う。
彼の呼吸を感じること。心音を聞くこと。
それだけで充足感があった。
「それで十分なんです」
これ以上の我儘は許されない。
「嘘つかないでよ!」
「嘘じゃないです」
「嘘だよ! あたしも曲がりなりにも恋をしたもん!」
それがどれだけ悲惨な末路だったとしても。
彼女が真剣に恋していたことを私は知っている。
「好きな気持ちが収まることなんてないの!」
「それでも十分なんです!」
これ以上を望んだ時、私は私を許せなくなる。
もっともっと、と溢れ出る願望を押し殺す。
彼芽さんはもう十分頑張った。今はもう休んでいいんです。
「だからもう、彼芽さんを責めないでください」
星摩さんの気持ちは嬉しい。
あんなことがあっても、私たちを応援してくれている。
「……ごめんね巫代ちゃん。巫代ちゃんのことは大好き」
「星摩さん……」
「それでもあたしは、崖君を許せないよ」
ここだけは譲れないと言い張る。
確固たる友情が込められたその言葉。
私が何を言っても無駄だと、理解してしまった。




